[スポンサーリンク]

化学書籍レビュー

Pythonで気軽に化学・化学工学

[スポンサーリンク]

hodaです。以前も機械学習関連の書籍をご紹介しましたが、今回も機械学習の書籍について書いていきたいと思います。

今回、著者の明治大学 金子弘昌 准教授からコメントをいただきました。金子先生、ありがとうございます!

著者の金子弘昌です。本書は、私の化学・化学工学の分野における研究や学生に対する教育の経験を生かして、データ解析や機械学習の初学者やプログラミング未経験者でも、データ解析や機械学習をする上で必要な知識や Python プログラミングの技術を効果的に身につけていただくことを想定して執筆いたしました。Python やソフトウェアの使い方およびデータ解析・機械学習を効率的に学ぶためのサンプルプログラムも同封しております。本書を通して、データの前処理・データの可視化・クラスタリング・回帰分析・クラス分類・モデルの解析や逆解析・実験計画法が皆さまの手でできるようになり、データを最大限に活用して皆さまの研究・開発・設計・運転を促進することを期待しております。

概要

化学・化学工学分野に特化したデータ解析・機械学習の入門書

みなさんは研究室やお手元にデータをお持ちではないですか? データ解析・機械学習を応用して,蓄積してきたデータを最大限に活用することで,これまでとは違った角度から研究や開発を加速させることができます.
本書では,化学・化学工学の分野特有の話題やノウハウにスポットをあてて,Pythonを使ったデータ解析・機械学習を丁寧に解説します.サンプルプログラムを使って実際に手を動かしながら学習できるので,プログラミングをやったことがない方も気軽に取り組むことができます.
これからデータ解析・機械学習を活用していきたいと考えている研究者や技術者,学生におすすめの1冊です.

(引用元:丸善出版HP

対象者

・機械学習初学者

・実際に手を動かして機械学習に取り組んでみたい人

・機械学習を基本的なところから一通り学んでみたい人、特に化学系

構成

機械学習に必要な環境の構築から機械学習の概要、予測する前のデータ処理、化学構造情報をPython上で扱うための方法などまでが180ページ・全12章に詰まっています。

1~2章ではプログラミングの環境構築や慣れることに重点が置かれています。
Anacondaという必要なソフトウェアをインストールする方法や、Jupyter Notebook上でプログラミングするためにJupyter Notebookの使い方や起動、終了方法など、プログラミングの環境を構築についての説明があります(1章)。機械学習においてよく使われる言語であり、今回の書籍でも用いるPythonの基礎についても初学者向けの説明が多くされています(2章)。

3~7章はデータセットの処理方法についてです。
Jupyter Notebook上でのデータセットの読み込み、データセットの中身を確認する方法、処理したデータセットを保存する方法について説明されています(3章)。そして行列形式によるデータセットの表現やヒストグラムによるデータの分布の確認などデータセットのサンプルの比較、そしてデータセットの特徴量間の比較などを通してデータセットの特徴をつかむ方法が記載されています(4章)。特徴量のスケールの統一化、ばらつきの小さい特徴量の削除、類似した特徴量の組における一方の特徴量の削除といったデータセットの前処理の説明もあります(5章)。データの可視化に便利な方法として主成分分析(PCA)とt-distributed Stochastic Neighbor Embedding (t-SNE)の紹介(6章)、データセットを類似するサンプルごとにグループ化するクラスタリングのうち、階層的クラスタリングについて詳しく学びます(7章)。

8~10章には適切なモデルを構築して物性値などを予測する方法があります。
モデルy=f (x) を構築して、新たなサンプルのyを推定するのに必要な方法が記載されています。K-NNなどを用いてクラス分類と回帰分析を行い、モデルの評価方法や適切なモデルを効率よく構築する方法が説明されています(8章)。モデルの推定結果の信頼性を考えるために、目的変数の推定に用いる最終的なモデルやモデルの適用範囲、One-Class Support Vector Machine (OCSVM)について記載されています(9章)。仮想サンプルの生成と予測および候補の選択を通してモデルを用いてy からx を推定する手法についても学びます(10章)。

また、目標達成に向けて実験条件・製造条件を提案するための実験計画法、応答曲面法、適応的実験計画法が紹介されています(11章)。

最後はRDKit のインストールから、化学構造の表現方法・数値化、化合物群の扱い、化学構造のデータセットを扱うときの注意点など機械学習において化学構造を扱うための説明があります(12章)。

サンプルコードもダウンロードして入手することが可能です。

正誤表

明治大学・金子研のホームページに正誤表がありました。

感想

本書籍の著者である金子先生は本書籍の前に『化学のためのPythonによるデータ解析・機械学習入門』も書かれていますが、本書籍の方がより入門の書籍だと感じました。

環境構築のAnacondaのインストールからコードを動かすためのJupyter Notebookの使い方も詳しく記載されており、特に書籍冒頭部分は機械学習初めての方も取り組みやすくなっているのではないでしょうか。

本書籍は、特に機械学習を始めたばかりの人に重点をおいて説明がされていると感じました。
その一方で、実際にPCの中でどのような計算・処理が行われているか数式を用いて説明されている部分も少なくなく、初学者以外も勉強になる部分が多いと思います。発展と書かれている部分も書籍内にあるので、読んでみるなり飛ばしてみるなり、各自のレベルに合わせて使いやすいようになっています。どのような計算が行われているのか数式を用いながら説明されている部分も多いので、詳しく知ることができると思います。

ここからは私の個人的印象に残ったポイントを書いていきたいと思います。
サンプルコードにはJupyter Notebookにおけるショートカットキーが紹介されています。ショートカットキーはこれまで特に学ぶことがなかったのでとても勉強になりました。8章での適切なモデルを効率よく構築する方法についての部分が特にわかりやすいと思いました。

おすすめはサンプルコードを動かしながら、本書を読み進めていくことです。本書の中にもコードに対する説明がありますが、サンプルコードにおいてもその都度説明されているので、実際にコードを実行することによって理解が深まると思います。

さらにサンプルコードには練習問題もあって、しかも答え付きです!筆者もサンプルコードを動かして、練習問題にも挑戦してみました。各コードに対する解説が詳しいため、自分の持っているデータセットでも大変使いやすいと思います。

関連書籍

化学のための Pythonによるデータ解析・機械学習入門(ケムステでの書籍レビュー)

Pythonで学ぶ実験計画法入門 ベイズ最適化によるデータ解析(ケムステでの書籍レビュー)

関連リンク

明治大学データ化学工学研究室(金子研)による本書の紹介

企業研究者のためのMI入門①:MI導入目的の明確化と使う言語の選定が最初のポイント!

企業研究者のためのMI入門②:Pythonを学ぶ上でのポイントとおすすめの参考書ご紹介

ゼロから学ぶ機械学習【化学徒の機械学習】

果たして作ったモデルはどのくらいよいのだろうか【化学徒の機械学習】

本書の画像は丸善出版HPから引用しました。

hoda

投稿者の記事一覧

学部生です。ケモインフォマティクス→触媒

関連記事

  1. ここまで進んだ次世代医薬品―ちょっと未来の薬の科学
  2. 元素のふるさと図鑑
  3. Lead Optimization for Medicinal …
  4. 化学物質はなぜ嫌われるのか
  5. 化学のブレークスルー【有機化学編】
  6. ドラマチック有機合成化学: 感動の瞬間100
  7. Rではじめるケモ・マテリアルズ・インフォマティクスープログラミン…
  8. 医薬品の合成戦略ー医薬品中間体から原薬まで

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. 国際化学オリンピックのお手伝いをしよう!
  2. グレッグ・ウィンター Gregory P. Winter
  3. マイクロ波によるケミカルリサイクル 〜PlaWave®︎の開発動向と事業展望〜
  4. 有機合成化学協会誌2018年5月号:天然物化学特集号
  5. イチゴ生育に燃料電池
  6. 剛直な環状ペプチドを与える「オキサゾールグラフト法」
  7. 第37回反応と合成の進歩シンポジウムに参加してきました。
  8. 二段励起型可視光レドックス触媒を用いる還元反応
  9. Comprehensive Organic Transformations: A Guide to Functional Group Preparations
  10. 毎年恒例のマニアックなスケジュール帳:元素手帳2023

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2021年10月
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031

注目情報

最新記事

塩基が肝!シクロヘキセンのcis-1,3-カルボホウ素化反応

ニッケル触媒を用いたシクロヘキセンの位置および立体選択的なカルボホウ素化反応が開発された。用いる塩基…

中国へ行ってきました 西安・上海・北京編①

2015年(もう8年前ですね)、中国に講演旅行に行った際に記事を書きました(実は途中で断念し最後まで…

アゾ重合開始剤の特徴と選び方

ラジカル重合はビニルモノマーなどの重合に用いられる方法で、開始反応、成長反応、停止反応を素反応とする…

先端事例から深掘りする、マテリアルズ・インフォマティクスと計算科学の融合

開催日:2023/12/20 申込みはこちら■開催概要近年、少子高齢化、働き手の不足の影…

最新の電子顕微鏡法によりポリエチレン分子鎖の向きを可視化することに成功

第583回のスポットライトリサーチは、東北大学大学院 工学研究科 応用化学専攻 陣内研究室の狩野見 …

\脱炭素・サーキュラーエコノミーの実現/  マイクロ波を用いたケミカルリサイクル・金属製錬プロセスのご紹介

※本セミナーは、技術者および事業担当者向けです。脱炭素化と省エネに貢献するモノづくり技術の一つと…

【書籍】女性が科学の扉を開くとき:偏見と差別に対峙した六〇年 NSF(米国国立科学財団)長官を務めた科学者が語る

概要米国の女性科学者たちは科学界のジェンダーギャップにどのように向き合い,変えてきたのか ……

【太陽ホールディングス】新卒採用情報(2025卒)

■■求める人物像■■「大きな志と好奇心を持ちまだ見ぬ価値造像のために前進できる人…

細胞代謝学術セミナー全3回 主催:同仁化学研究所

細胞代謝研究をテーマに第一線でご活躍されている先生方をお招きし、同仁化学研究所主催の学術セミナーを全…

マテリアルズ・インフォマティクスにおける回帰手法の基礎

開催日:2023/12/06 申込みはこちら■開催概要マテリアルズ・インフォマティクスを…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP