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医薬品

骨粗鬆症を通じてみる薬の工夫

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お久しぶりです。以前記事を挙げてから1年以上たってしまい、時間の進む速さに驚いています。まだまだ夏はまだまだ暑くてばてておりますが、薬学部生5年目の私は実務実習(薬局、病院)で必死に食らいついております。ちなみにですが、以前薬学部のことも書いたので興味のある方はぜひこちらもどうぞ

さて、薬局で実習させていただいいたと書きましたが、やはり患者さんの多くはお年を召された方が多いです。高齢者の健康の問題を考えた際、どうしても切り離せないのが骨の問題です。骨の話は骨粗鬆症や骨折といったように骨自身の問題だけでなく、そこからさらに転倒や運が悪ければ寝たきりなどにもつながります。それゆえに、QOL や介護といった話などのように複合的な問題でもあります。実際、実習でお世話になっている薬局と関わりのある患者さんが自宅で転倒され、入院していたといったこともあったと聞きました。

骨粗鬆症について

骨の問題は多岐に広がるとは言いつつも、骨関係の疾患といって最初に思いつくのはやはり骨粗鬆症でしょう。それゆえに、日本骨粗鬆症学会の治療ガイドライン (2015年版)[1]を見てみると、序文には

わが国においては,人口の急速な高齢化に伴い骨粗鬆症の患者が年々増加しつつあり,その数は現時点では 1300 万人と推測されている。骨粗鬆症では椎体、前腕骨、大腿骨近位部などの骨折が生じやすく,その 対策が医療のみならず社会的にも重要な課題となっている。

と書かれている通り、医療だけでなく、社会的にも重要な課題であると述べられています。つまり、本人だけでなく家族や医療従事者などの周囲の人にとっても極めて重要な課題であることは明らかです。

薬の話

突然ですが、療養中の皆様、お薬は忘れず飲まれていますでしょうか?

私は毎日夕食後にお薬を2種類飲んでいますが、忙しいときや疲れているときなどは正直忘れてしまいます。ですが、私の場合は正直に言ってしまうと私の場合飲み忘れても命に係わるようなものでもないため、支障はあまり大きくないと思います (だからと言って飲み忘れていいわけではないですが自戒として…)、

私のような場合ならまだいいのですが、命に直結する疾患の場合はもちろんそんなことは言っていられません。それゆえに、自身で薬の管理を正確に行うのが難しいケースの場合、一包化(複数の薬を1つの透明なパックのようなものにまとめて入れているやつです)で飲みやすくすること、患者さんの家に薬剤師が出向き服薬状況を見た上での在宅指導、また他の医療従事者や周囲の人との連携を介してアプローチするというような解決方法が考えられます。

骨粗鬆症の治療薬とその工夫

ただ、今話したのは、医療従事者や家族などの本人と直接関わる立場からの工夫ですが、服用する製品自体に工夫を施すといった解決法も存在しています。つまり、大げさな言い方になりますが、ある意味で工場やラボなどのものを作る側から、つまり患者さんとは直接関わりの持たない立場からの工夫ともいえます。おそらくこの記事を見ている方はこちらの方が多いと思いますのでその実例を今から紹介したいと思います。

治療薬とその機序

本題に入る前に前知識として、骨粗鬆症の治療薬について紹介したいと思います。骨粗鬆症の治療にはざっくり2つのタイプがあり、それぞれ異なる機序で骨にアプローチします。

1つ目が骨吸収を抑制するタイプです。こちらのタイプは骨吸収という名前からわかるように、骨からのカルシウムの吸収(骨を分解することにより、血中へカルシウムを移動させています)を抑制し、骨の密度を維持します。もう1つの方は骨の形成を促進し、骨の密度を上昇させる薬です。こちらはそのまま、骨を強くすると考えることができるため、わかりやすいと思います。後者に関しては、ロモソズマブ (-mab=モノクローナル抗体) やテリパラチド(副甲状腺ホルモン製剤)という薬がありますが、個別に機序を説明すると字数的に長くなってしまうため、解説は省略させていただきます。そのほかにビタミンKやビタミンD 様の作用を示し、 補助的な働きをする物も存在しています。
一方、前者の代表的なものに、ビスホスホネート製剤 (後で詳説します) やデノスマブがあります。デノスマブに関しては、モノクローナル抗体からなる注射剤です。これは、RANKという破骨細胞とその前駆細胞上に発現している受容体であり、デノスマブはこれと結合するRANKリガンド (RANKL) に結合します。つまり、RANK/RANKLからなる破骨細胞の活性化の経路を抑制し、破骨細胞による骨吸収を抑制することにより骨密度を維持します。また、デノスマブにはプラリア®というものとランマーク®という2つの製剤があります。前者は骨粗鬆症に対して、後者は多発性骨髄腫者や固形癌骨転移、骨巨細胞腫に対しての適応があります。ビスホスホネート製剤とデノスマブの使い分けについて簡単にまとめると、

・長期安定性・腎機能良好 → ビスホスホネートを選択
・腎不全・アドヒアランス不良・BP不耐 → デノスマブを選択
・デノスマブは中止リスク管理が必須

ということが挙げられます。

ビスホスホネート製剤の概要

続いて、本題のビスホスホネート製剤についてです。こちらは、有効成分が骨に付着し、破骨細胞がこの状態の骨を骨吸収することにより、アポトーシス(細胞死)を誘導します。詳しく言えば、骨代謝に関与するメバロン酸経路おいて、メバロン酸からファルネシルピロリン酸への合成を阻害し、これにより細胞内におけるシグナル伝達を阻害しアポトーシスを誘発するようです(正直生化学が苦手なのであんまりよくわかっていません)。構造的な特徴としては、ピロリン酸 (P–O–P) の酸素を炭素に置換した構造 (P–C–P結合) を持ち、これにより加水分解に強く、骨基質に安定に結合できるという点が挙げられます。

この薬には様々な系列の薬がありますが、今回は第二世代ビスホスホネート剤の代表とされるリセドロン酸(先発ではアクトネル®、ベネット®)とアレンドロン酸 (フォサマック®、ボナロン®) について紹介します。

リセドロン酸について

リセドロン酸(アクトネル®錠、ベネット®錠)に関しては、用量の規格について 2.5、17.5、75 mg があります。普通の薬の規格違いならあまり見ないような量の違いですが、それぞれ 2.5 mg を基準として、7倍、30倍となっています。要するにそれぞれ1日分、1週間分、1か月分の用量に相当します。ということは、しっかり飲める方は1日分を使用する、逆に飲み忘れが多い場合、正直服用が多いのが面倒だといった人などは1週間や1か月分を使用するといった使い分けができます。であれば、「期間が多い方だけでいいやん」というツッコミが飛んでくるかもしれませんが、副作用 (後述) も長期間出る可能性もあり、メリットだけではなく副作用などのデメリットを考慮して使用する必要があります。それでも服用回数を減らせるということは、例えば薬剤師が患者さんの家に訪問するタイミングで服用してもらうといったようなこともできるため、臨床上の利点は明らかだと思います。

アレンドロン酸について

アレンドロン酸(フォサマック®、ボナロン®)には 5 mg、 35 mg の錠剤の規格のほかに点滴用とゼリー状のものがあります。後の2つは後述する副作用の回避の面や錠剤を飲み込めない患者さんに対して使用できるというアドバンテージがあります。

ビスホスホネート剤の副作用

ではビスホスホネート製剤における副作用とは何かといえば、悪心や嘔吐、食堂炎などの消化管に対するものが第一に挙げられます。そのため、これを回避するためには成分の消化管への付着を防ぐ必要があります。また、ビスホスホネート製剤の消化管からの吸収率は約1~2%と低いという特徴もあります。ですので、スムーズかつ安全に吸収されるために朝起きてから食事前に(ミネラルウォーターや牛乳は×、Mg2+ や Ca2 +を多く含み、当該薬剤とキレートを形成することで吸収を阻害するため) で噛まずに服用すること、消化管に薬が残ってしまわないように服用後30分は横になってはいけないといったことが注意として存在しています。
特に横になってはいけないということに関しては考えれば当然ですが、初めて授業で聞いた時には「どういうこと??」となった記憶があります。このあたりに、開発時の薬理や毒性、動態研究者の多大なる工夫と苦労が垣間見えます。

また重篤な副作用として顎骨壊死があり、長期投与や高用量(がん患者での静注使用など)で稀に発生します。そのため、歯科処置前には中止の検討が行われることもあります。この辺りは、薬学部の試験や薬剤師国家試験で問われることが多く、薬学生は注意しておきたいポイントです。
(薬剤師国家試験での出題例)

最後に

近年、プロドラッグといったものだけでなく、ADC やペプチドなどの中分子といった様々なモダリティーが出現しており、これには有機化学や遺伝子技術、さらにはバイオインフォマティクスなどの情報学の技術も寄与しており、創薬研究の進歩とそれに伴うに社会からの期待を感じます。このサイトを見られる方はおそらく、臨床において薬を使う方よりも薬を作る側の人間が多いかと思われます。私も将来後者の方に関わりたいと考えていますが、実際に自分が関わったものやそれに近いものなどの技術面の話がどういった風に患者さんに現れて利益をもたらすのか、場合によれば治療効果と引き換えに何を失うのか、といったようなラボから離れた所にまではあまり視点が届きませんでした。そのため、実務実習は臨床現場でどういったことが求められているかということを実際に知れる貴重な機会であり、大切に活用していきたいです。また、もし私と同じような境遇の方がこの記事を見られていれば、そういったことも頭に置いておいてもらってもよいかもしれません。

参考文献

[1]予防と治療ガイドライン2015年版,日本骨粗鬆症学会

参考動画

関連書籍

ねこたま

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薬学生です。医薬化学ら辺に興味あります。

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