[スポンサーリンク]

化学書籍レビュー

Dead Ends And Detours: Direct Ways To Successful Total Synthesis

[スポンサーリンク]

  • 内容

有機化学の貴重な情報を提供する文献は数多くあるが、そうした文献はほぼ例外なく、成功した反応をもとに書かれている。だが残念ながら、化学の道はそれほど簡単ではない。それどころか、試行錯誤は今でももっとも広く使われている手法のひとつといえる。したがって、失敗した合成の内容を知ることは役に立つはずだ。というのも、今後の成功にとって欠かせない重要な情報を与えてくれるからだ。

長らく出版が待たれていたM・A・シエラとM・C・デ・ラ・トーレによる本書は、まさにそうしたギャップを埋めるものだ。主要な全合成を題材に、じつにさまざまな問題を解説し、そうしたジレンマを抜け出す方法を提案している。本書で扱っている内容は、合成の開始時および終了時の問題、官能基の予測困難な反応性、立体特性に起因する問題など。

本書には、あらゆる化学者に役立つ情報が豊富につまっている。全合成の成功には欠かせない参考書だ。

  • 対象

全合成を学ぶ大学院生以上。

 

  • 評価・解説

題名の通り、天然物合成研究の行き止まり、回り道(Dead Ends)について書かれた本です。論文においては成功例がもっとも重要視されるため、こうしたうまくいかなかった事例はあまり書かれていないものです。しかし本書は、ダメだったルート、合成上困難だったポイントに焦点を当てています。全合成を進めるにあたって大変参考になる内容も少なくありません。オススメです。

 

  • 関連書籍

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. 一流ジャーナルから学ぶ科学英語論文の書き方
  2. 免疫(第6版): からだを護る不思議なしくみ
  3. 電気化学インピーダンス法 第3版: 原理・測定・解析
  4. 東大キャリア教室で1年生に伝えている大切なこと: 変化を生きる1…
  5. 最新 創薬化学 ~探索研究から開発まで~
  6. 有機合成のナビゲーター
  7. 動画でわかる! 「575化学実験」実践ガイド
  8. 誰も教えてくれなかった 実験ノートの書き方 (研究を成功させるた…

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. 280億円賠償評決 米メルク社治療薬副作用で死亡 テキサス州
  2. 光触媒で人工光合成!二酸化炭素を効率的に資源化できる新触媒の開発
  3. 電子や分子に応答する“サンドイッチ”分子からなるナノカプセルを開発
  4. 原子状炭素等価体を利用してα,β-不飽和アミドに一炭素挿入する新反応
  5. 生理活性物質? 生物活性物質?
  6. 固体なのに動くシャトリング分子
  7. 産業紙閲覧のすゝめ
  8. アメリカ大学院留学:博士候補生になるための関門 Candidacy
  9. アマドリ転位 Amadori Rearrangement
  10. 二水素錯体 Dihydrogen Complexes

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2008年3月
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31  

注目情報

最新記事

ベテラン研究者 vs マテリアルズ・インフォマティクス!?~ 研究者としてMIとの正しい向き合い方

開催日 2024/04/24 : 申込みはこちら■開催概要近年、少子高齢化、働き手の不足…

第11回 慶應有機化学若手シンポジウム

シンポジウム概要主催:慶應有機化学若手シンポジウム実行委員会共催:慶應義塾大…

薬学部ってどんなところ?

自己紹介Chemstationの新入りスタッフのねこたまと申します。現在は学部の4年生(薬学部)…

光と水で還元的環化反応をリノベーション

第609回のスポットライトリサーチは、北海道大学 大学院薬学研究院(精密合成化学研究室)の中村顕斗 …

ブーゲ-ランベルト-ベールの法則(Bouguer-Lambert-Beer’s law)

概要分子が溶けた溶液に光を通したとき,そこから出てくる光の強さは,入る前の強さと比べて小さくなる…

活性酸素種はどれでしょう? 〜三重項酸素と一重項酸素、そのほか〜

第109回薬剤師国家試験 (2024年実施) にて、以下のような問題が出題されま…

産総研がすごい!〜修士卒研究職の新育成制度を開始〜

2023年より全研究領域で修士卒研究職の採用を開始した産業技術総合研究所(以下 産総研)ですが、20…

有機合成化学協会誌2024年4月号:ミロガバリン・クロロププケアナニン・メロテルペノイド・サリチル酸誘導体・光励起ホウ素アート錯体

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2024年4月号がオンライン公開されています。…

日本薬学会第144年会 (横浜) に参加してきました

3月28日から31日にかけて開催された,日本薬学会第144年会 (横浜) に参加してきました.筆者自…

キシリトールのはなし

Tshozoです。 35年くらい前、ある食品メーカが「虫歯になりにくい糖分」を使ったお菓子を…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP