[スポンサーリンク]

化学一般

食品添加物はなぜ嫌われるのか: 食品情報を「正しく」読み解くリテラシー

[スポンサーリンク]

[amazonjs asin=”4759816836″ locale=”JP” title=”食品添加物はなぜ嫌われるのか: 食品情報を「正しく」読み解くリテラシー (DOJN選書)”]

概要

巷にあふれる食をめぐるさまざまな情報. 〇〇は身体によいらしい,ダイエットには△△を摂るとよい, ×× には発がん性がある……. 信頼に足る情報はどう見極めたらよいのか. さらに,グローバル化が進展する世界で,食の安全をめぐる問題も,自国だけの問題に留まらなくなっている. 「すべての人に適切な情報を」届けるべく,世界の食品安全情報をサーベイし発信し続ける著者が, 近年話題になったさまざまな問題を取り上げ,印象やイメージに惑わされることなく,科学的知見に基づいて適切に判断するためのポイントをわかりやすく解説する.(引用:化学同人書籍紹介より)

対象者

  • 食品の化学に興味がある学生や化学者全般
  • 食品関係の仕事に携わる関係者
  • 健康のために食べ物に気を付けている努力家

細かい基準や成分について専門的な用語や化合物名、構造式を用いて解説されていますが、巻末には用語説明のページもあり、また用語がわからなくても理解でできるような文章になっているため科学を専門とする人だけでなく、多くの人、特に食品に関連する仕事に従事している人に読んで欲しい書籍です。

目次

  • 第1章 終わらない食品添加物論争
    • 食品添加物の安全性を測る
    • 食品添加物をめぐる国際事情
    • 食品添加物だから……
    • ベビーフードで考える食品添加物の有効性
  • 第2章 気にすべきはどちらか――減塩と超加工食品
    • 世界の減塩対策
    • 超加工食品とは何か
  • 第3章 オーガニックの罠
    • オーガニック卵汚染事件
    • 「オーガニック卵」というもの
    • オーガニックとの付き合い方
    • コラム・ 妊婦や乳幼児が気をつけるべき食品
  • 第4章 新しい北欧食に学ぶ
    • 北欧食と和食(注目を集める北欧食/七カ国研究/北欧食と和食の学術研究)
    • NNDの落とし穴(食べ物に含まれる毒/危険な毒キノコ)
    • コラム・ ライチが引き起こした死亡事例
  • 第5章 国際基準との軋轢
    • EUへの鰹節の輸出問題
    • 検査の意味は?
  • 第6章 食品表示と食品偽装
    • 日本では表示義務のないカフェイン
    • 食の「安心」を脅かす食品偽装
    • コラム・ 命に関わる偽装
  • 第7章 プロバイオティクスの栄枯盛衰
    • プロバイオティクスの健康強調表示
    • 期待が高まるマイクロバイオーム研究
    • トクホとプロバイオティクス
    • コラム・ 誇大宣伝を避けるために
  • 第8章 食品安全はみんなの仕事――すべての人に適切な情報を
    • 世界食品安全デー/食品の安全をめぐる誤解/正しい情報を届けるために

内容

食品に含まれる化合物についてはいろいろな本が出版されていて、科学的に正しくない主張がなされている書籍が注目を浴びることも珍しくありません。本書の著者は国立医薬品食品衛生研究所にて安全情報部長をされている畝山智香子氏で、東北大学大学院薬学研究科を修了されていて専門は薬理学、生化学で薬学博士号も取得されています。過去には。ダイオキシンや放射性物質など過去、問題になった物質がどれほど食品に含まれているのか、そしてどれほど摂取しているかについて研究を行ってきました。このように科学的なバックグラウンドを持ちながら、国の研究所という最前線で食品の安全を守る仕事に従事されている方が筆者であり、科学的に合理的な論理展開がなされている本です。さらに、日本だけでなく各国の食品安全にも精通しているようで、制度の違いによる各国に安全基準の違いなどについても本書では論ぜられています。

第1章では、食品添加物についての定義や歴史が主の話題であり、過去に騒動となった添加物の事象に触れながら、その時のメディアの主張が本当に正しかったのかを検証しています。逆に天然由来の成分でも使い方を間違えると健康被害を及ぼしている例を取り上げ、天然由来の成分が常に健康に良くて、人工的に作られた成分は健康被害をもたらす、海外品は基準が甘く危険であるという、多くの人の主張について反論をしています。第2章から第4章では、ナチュラルにこだわった食品が、こだわったが故に別の問題が起きてしまった例について触れられています。ナチュラル=健康のリスクが減るということを優先しすぎた結果別のリスクが出てきてしまったことがよくわかる例になっています。第5章では、海外の規制が問題になった例を紹介しています。食品の規制には、何がどれくらい含まれているとアウトなのか、範囲と上限値が決まっています。一つの問題は常にフェアな範囲であるとは限らないことで、常用の使用では問題ないにもかかわらずルールとしての上限値に引っかかり悪者にされてしまったかつお節を取り上げています。もう一つの問題は、上限を少し超えたからといって直ちに問題が起きるわけではないことであり、厳格すぎる対応によって別の問題が起きた香港の例を取り上げています。第6章では食品の表示についての話題で、ラベルの情報の正確さが重要であることを訴えています。もちろん産地偽装によって高い利益を得ている悪徳業者は許せませんが、偽装によって死に至る場合があることについての内容が個人的に印象に残っています。第7章では、プロバイオティクスが本当に体に良いのかについて検証しています。ナチュラルとは別の視点で、乳酸菌=お腹に良いという常識が広まっていますが、悪影響を及ぼす場合もあることが驚きでした。そして第8章では化学的に正しい情報の提供とその理解が促進されることの必要性を強調した内容で締められています。

科学的な知識があっても食品添加物が含まれていないとうたっている商品をスーパーでつい手に取ってしまいますが、その選択には別のリスクがあることを改めて思い知る内容になっています。食品に限らず、生活していくうえで選択肢のリスクの予測を行い、総合的に判断してリスクの低い方を選択する場面は多々あります。特に昨今のコロナウィルスの拡大で、コロナウィルスに感染するリスクをとるか、別のリスクをとるかの判断を迫られるときが多々あります。この本を通して、何となく多くの人が選んでいる選択には隠れたリスクがあることを改めて感じさせられました。

関連書籍

[amazonjs asin=”4759813284″ locale=”JP” title=”ほんとうの「食の安全」を考える―ゼロリスクという幻想(DOJIN選書28)”]

関連リンク

Avatar photo

Zeolinite

投稿者の記事一覧

ただの会社員です。某企業で化学製品の商品開発に携わっています。社内でのデータサイエンスの普及とDX促進が個人的な野望です。

関連記事

  1. Dead Ends And Detours: Direct Wa…
  2. 2016年8月の注目化学書籍
  3. 【書籍】イシューからはじめよ~知的生産のシンプルな本質~
  4. Cleavage of Carbon-Carbon Single…
  5. 有機化学命名法
  6. 化学探偵Mr.キュリー7
  7. ドラマチック有機合成化学: 感動の瞬間100
  8. 最新 創薬化学 ~探索研究から開発まで~

注目情報

ピックアップ記事

  1. リガンド指向性化学を用いたGABAA受容体の新規創薬探索法の開発
  2. 「不斉化学」の研究でイタリア化学会主催の国際賞を受賞-東理大硤合教授-
  3. 「抗炎症」と「抗酸化」組み合わせ脱毛抑制効果を増強
  4. 藤沢の野鳥変死、胃から農薬成分検出
  5. 生体組織を人工ラベル化する「AGOX Chemistry」
  6. 化学の祭典!国際化学オリンピック ”53rd IChO 2021 Japan” 開幕!
  7. GlycoProfile アジド糖
  8. 伊藤嘉彦京都大名誉教授死去
  9. 理論的手法を用いた結晶内における三重項エネルギーの流れの観測
  10. 2024 CAS Future Leaders Program 参加者インタビュー ~世界中の同世代の化学者たちとかけがえのない繋がりを作りたいと思いませんか?~

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2020年7月
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031  

注目情報

最新記事

圧力は「設定値」だけで決まらない【プロセス化学者のつぶやき】

前回まで1. 設定温度と系内の実温度のお話2. 温度値をどう判断するか3. 反応操作をし…

査読に AI を使われた体験談

生成 AI の普及は加速しており、調べもの、英文校閲など研究者の皆さんも活用していることと思います。…

フィーゼルマン チオフェン合成/Fiesselmann Thiophene Synthesis

概要フィーゼルマン チオフェン合成(Fiesselmann Thiophene Synthesi…

“とび跳ねる水滴”に潜む物理 〜接触時間とエネルギー源で読む撥水・防氷のテク〜

熱したフライパンに落ちた水滴が、玉になってコロコロと走り回り、冷えた面では、結露水が合体した瞬間に跳…

AI時代に研究者がすでに持っている力・これから伸ばしたい力

論文要約や文献検索など、研究現場でもAI活用が日常化する一方、「自分の仕事の先行き」に漠然とした不安…

miHub®を活用した探索的データ解析の実践

開催概要研究開発においてデータ活用が進む中、機械学習モデルの構築や予測解析に…

“ある特効薬”のはなし ~本田宗一郎氏の回想から

Tshozoです。最近実家に戻っては色々と廃棄するなどの店じまいを少しずつ進めているのですが、中…

高分子鎖を束ねた新しい共重合体「束状共重合体」が誕生

第715回のスポットライトリサーチは、東京大学大学院 工学系研究科(植村研究室)に所属されていた亀谷…

2026年「有機溶媒危機」へのアンサー。北大発・メカノクロスが挑む、溶媒に依存しない新たな合成法 = “メカノケミカル有機合成”の社会実装

株式会社メカノクロスは、メカノケミカル有機合成技術の社会実装に挑む北海道大学発の…

“壊れないよう” に作ってきた半導体ポリマーを、あえて “壊れるよう” に作る化学

半導体ポリマーは長いあいだ、「いかに壊れにくく、長持ちさせるか」といったような安定性を競って進歩して…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP