[スポンサーリンク]

一般的な話題

“マイクロプラスチック”が海をただよう その1

カモメの胃袋から出てきたプラスチック類(一羽から、ではありませんが) 引用 → 

 趣味で色々調べてるうちにどうしても書いておきたいことが出てきました。

Tshozoです。数年前に起きたオリンパス社不祥事を扱った「解任」(マイケル・ウッドフォード氏 著)、面白いですよ→  。企業だけでなく大学など、組織に属される方なら是非お読みください。いろんなところで似た事例が絶賛進行中なのが気にかかりますが。

昔から色々な公害問題を調べている筆者ですが、オーストラリア シドニー近郊でも静かに進行中ということが明らかになった「ある案件」につきひとつ記事を書いてみます。

その案件というのはこちら → 。 「オーストラリア近郊に、マイクロプラスチックが高濃度で存在する」というものです。以前からTVをはじめ色々なメディアに採り上げられているので何をいまさら、という気はしますが公害問題の歴史と絡めて採り上げているものはあまり無い気がしましたので今回書いてみることにしました。どうかお付き合いください。

 

はじめに

プラスチックとは何か? 一般的な定義としては「石油類から人工的に合成された高分子量体」と言えます。さっぱりわかんないっすね。要は石油をゴニョゴニョして作られた便利な固形材料ってことdeath。最近では石油以外に植物類からも合成されるバイオプラスチックなどもありますから、今回のはなしにはそれも含めることにしましょう。

こういうもんです 引用 → 

背景

生産されたプラスチック類は人間生活の中での役目を終えた後、一部は焼却され、一部は再利用されて循環しますが、その一部はいずれのサイクルにも乗らず、「ゴミ」として残留します。さらにその一部は海洋へ漕ぎ出しますが、これらはMarine LitterまたはOcean Debrisと呼ばれ、いわゆる海洋ゴミとされています。

PW_01.png人間生活内のプラスチックのウロウロ具合概念図
こちら引用して作者が改編 → 

ことばの定義

さらに、上記の中でマイクロプラスチックとは何か。国際規格のような明確な定義はなさそうなのですが、文献類を漁った結果、「形状に関わらず直径が約5~10mm以下、0.1mm以上のプラスチック」のもようです。ここで「形状に関わらず」と書いたのは、球状やら糸状やら針状やら、様々な形状が存在するためです。

PW_02.pngマイクロプラスチックの例 引用 → 
数字はそれぞれのおよその直径 : a:赤ファイバー70um, b:青粒子, c: 青ファイバー100um
d:白フィルム1.5cm, e:乳白色粒子0.4mm, f:乳白色粒子
原論文:Frederik Noren “Small plastic particles in Coastal Swedish waters”, KIMO Sweden, 2007″

発生源

そりゃ、人間活動です。まず、「プラスチック」の海洋で見つかる廃棄物の頻度はこちら →  の資料で取り上げられており、「包装類」がトップランクになっています。

これに対しマイクロプラスチックの場合には大きく2つの分類、即ち①原料そのまま(化粧品に含まれる研磨剤やプラスチックの原料形態であるペレット粒)と、②劣化後プラスチック(大きなプラスチックから劣化によって剥がれた針状の細かい破片など)になります。後者には実は生分解性プラスチックも含まれます。生分解性プラスチックといえどもその劣化速度は遅く、どうしてもこういった微小片が存在してしまうわけで。上の図でいうと①にはe,f、②にはa,b,c,dが該当します。下は②の例ですね。

 PW_09.png

洗顔料に含まれる「スクラブ(研磨剤)」としてのマイクロプラスチック 引用 → 

PW_05_re.pngポリプロピレン、ポリエチレンの耐光(候)性試験後の表面状態 引用(一部追記) → 
こういうクラックから剥がれ落ちた微小破片も「マイクロプラスチック」となりうる

 またこのマイクロプラスチック、総量がどのくらい海洋中(世界中)に存在するのか、正確な試算が出来ていないようなのです。現在は欧州やイギリス、オーストラリアなどの沿岸部の国が積極的な活動を開始しており、実状がようやく把握できているようですが世界中の国家でそうしたデータを取って集計して実存在量を推定することを考えると、凄まじい労力と費用が必要になります。おそらく海洋研究者間ではそうした動きはあるのかもしれませんが(欧州・豪州にはありました →    など)、今回は国際的な枠組みを見つけるには至りませんでした。

 

悪影響の詳細-その1

まず下記の写真をご覧ください。感情に訴えかけるつもりはないのですが、色々と悲惨です。これはまずマクロプラスチックのケース。カメがクラゲと間違えてポリ袋を飲み込み、腹に詰まって衰弱死するケースがあることは皆様もご存知だと思います。

PW_06.png“Entanglement=「絡み付き」 / Ingestion=「飲み込み」”という意味です
こちらより引用 → 

 そしてこっちがマイクロプラスチックのケース。ミジンコの中に生分解性プラスチックの破片があった、という話をどっかのニュースで聞いたことがあるのですが、魚の寄生虫の腹ん中にも存在するというのは驚きです。

PW_07.png魚の胃袋を解体して出てきたプラスチック類が写真左下に見える
右側はニシンの腹の中に居る線虫の、さらにその中に存在したマイクロプラスチックの例
こちらより一部改編して引用(同上) → 

 ニワトリが食べる砂と同じように、喰ってウンコになって出てくるとか、食べ物を潰すのに使うとかなら別にいいのですが、どうもそうではなさそうなのです。 まず、一気に食うと腹の管が詰まる→閉塞→死亡。ポリスチレンの小破片とか、そういうのが固まって海中に分散してたら魚は間違って喰いそうですよね。

で、一気に食わなくても微小な寄生虫とかが食う→腹に詰まる→死亡。その他、まだ確実ではないですが、光合成機能が低下する(Hindered algal photosynthesis)とか、浮腫ができる(Granulocytoma formation)とかの悪影響も懸念されているようです。

長くなりそうなので今回はここまで。実は悪影響はこうした物理的なものだけではないのです。

 

参考文献

元記事 ”Tiny plastic dwellers have big impact on our oceans” → 

“Algalita Marine Research Institute” → ●
UNEP報告書 2011年度 ”Plastic debris in the ocean” → 
Maria Gorycka “ENVIRONMENTAL RISKS OF MICROPLASTICS” → 
“Unrecognised Pollutant Risks to the Great Barrier Reef” →
“” → 
“Macroplastics, microplastics and environmental impacts” Amsterdam University → 
“Concentrations of PCBs in beached plastic pellets” Teuten et al. (2009) → 
“Microplastics in Facial Exfoliating Cleansers” Michelle Chang (2013)→ 

The following two tabs change content below.
Tshozo

Tshozo

メーカ開発経験者(電気)。54歳。コンピュータを電算機と呼ぶ程度の老人。クラウジウスの論文から化学の世界に入る。ショーペンハウアーが嫌い。

関連記事

  1. 採用面接で 「今年の日本化学会では発表をしますか?」と聞けば
  2. 論文執筆で気をつけたいこと20(1)
  3. SciFinder Future Leaders in Chem…
  4. インターネットを活用した英語の勉強法
  5. まっすぐなペプチドがつまらないなら「さあ輪になって踊ろ!」
  6. 【読者特典】第92回日本化学会付設展示会を楽しもう!PartII…
  7. 色の変わる分子〜クロミック分子〜
  8. 神経細胞の伸長方向を光で操る

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. リチャード・ゼア Richard N. Zare
  2. 2007年度ノーベル化学賞を予想!(4)
  3. ボーチ還元的アミノ化反応 Borch Reductive Amination
  4. Eリリーの4-6月期は19%減益、通期見通し上方修正
  5. 【書籍】イシューからはじめよ~知的生産のシンプルな本質~
  6. ローカル環境でPDFを作成する(Windows版)
  7. オキシ-コープ転位 Oxy-Cope Rearrangement
  8. キレーション療法ってなに?
  9. 自由研究にいかが?1:ルミノール反応実験キット
  10. 細見・櫻井アリル化反応 Hosomi-Sakurai Allylation

関連商品

注目情報

注目情報

最新記事

三種類の分子が自発的に整列した構造をもつ超分子共重合ポリマーの開発

第123回のスポットライトリサーチは、テキサス大学オースティン校博士研究員(Jonathan L. …

超分子化学と機能性材料に関する国際シンポジウム2018

「超分子化学と機能性材料に関する国際シンポジウム2018」CEMS International Sy…

アメリカで Ph. D. を取る –研究室に訪問するの巻–

この連載は、米国の大学院で Ph.D. を取得することを目指す学生が日記感覚で近況を記録するためのも…

光触媒ラジカルカスケードが実現する網羅的天然物合成

四川大学のYong Qinらは、可視光レドックス触媒によって促進される窒素ラジカルカスケード反応によ…

有機反応を俯瞰する ー縮合反応

今回は、高校化学でも登場する有機反応であるエステル合成反応を中心に、その反応が起こるメカニズムを解説…

ご長寿化学者の記録を調べてみた

先日、G. Stork教授の論文に関するポストがありました。御年95歳という研究者でありながら、学術…

Chem-Station Twitter

PAGE TOP