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スポットライトリサーチ

可視光応答性光触媒を用いる高反応性アルキンの生成

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第238回のスポットライトリサーチは、金沢大学 新学術創生研究機構・三代憲司 助教にお願いしました。

光化学の活用は、ケミカルバイオロジー分野への応用観点から長く注目を集めています。分子設計によってその発展的活用をもたらすことは、合成化学者の力なくしては為しえません。本成果は独自の切り口で光応答性分子を設計し、応用性の高い反応性アルキンの露出系を開発したという成果です。Organic Letters誌に報告され、プレスリリースとしても公開されています。

“Phototriggered Active Alkyne Generation from Cyclopropenones with Visible Light-Responsive Photocatalysts”
Mishiro, K.; Kimura, T.; Furuyama, T.; Kunishima, M. Org. Lett. 2019, 21, 4101. doi:10.1021/acs.orglett.9b01280

メンター・共同研究者である國嶋崇隆 教授から、人物評を下記のとおり頂いています。若手PIとして金沢を盛り上げていく、今後ますますのご活躍が期待される一人です。

三代君は、異分野融合研究を推進する機関として金沢大学に近年設置された新学術創成研究機構に、テニュアトラック助教として2016年に着任しました。以来、独自の光化学反応開発を中心とした基礎研究を行うと共に、専門である有機化学の知識・技術を活かし、薬学系を中心とする様々な分野の研究者と連携して、疾患のメカニズム解明・診断・治療を志向した生理活性物質開発及び分析技術開発に取り組んでいます。異分野融合研究というのは言うは易く行うは難しというところがあり、苦労している部分もありますが、様々な研究者と垣根無く交流できる現在の環境を活かし、これまでにない着眼点に基づいた研究成果を挙げてくれることを願っています。

Q1. 今回プレスリリースとなったのはどんな研究ですか?簡単にご説明ください。

シクロプロペノンは光励起により一酸化炭素とアルキンを生成する性質をもち、Popik等によって光駆動型のHuisgen環化反応への利用が報告されてきました[1]。私達は最近、アミノシクロプロペノンの光分解により高反応性のイナミンを系中で生成させ、脱水縮合等の化学反応に利用する手法を開発しました[2]。本反応は光のON/OFFで完全に進行の制御が可能で、将来的に生化学研究や材料化学研究に利用したいと考えています。以前に報告した手法では紫外光を用いる必要があり、紫外光に不安定な化合物が共存する系には不向きという課題がありました。今回の研究では可視光応答性光触媒を用いることで、本来可視光に安定なアミノシクロプロペノンからの可視光条件でのイナミン生成、系中で生じたイナミンを利用する脱水縮合反応を達成しました。また、同様の条件にてシクロオクチンを系中で生成させ、Huisgen環化反応を行うことにも成功しました。これらは光触媒を用いてシクロプロペノンからアルキンを生成させる化学反応として初の例になります。今回開発した可視光/光触媒を用いる反応系では、紫外光条件では分解してしまう化合物共存下においても、望まない分解を起こすことなく目的のアルキンを生成させることができました。

Q2. 本研究テーマについて、自分なりに工夫したところ、思い入れがあるところを教えてください。

将来的に本反応を生化学研究や材料化学研究等幅広い分野に応用したいと考えていたため、どのような実験室でも実行できるシンプルな反応条件の設定を目指しました。アミノシクロプロペノンを用いる反応では、簡単に手に入る試薬を試験管中で混ぜて家庭用の電球で照らすだけという、誰にでもできる非常にシンプルな反応条件にできたのはよかったです。学生の木村君が実験を行う立場から建設的な意見を出してくれることで、簡便で再現性の高い条件を確立することができました。

Q3. 研究テーマの難しかったところはどこですか?またそれをどのように乗り越えましたか?

普通であれば望みの反応を行うのに最適な基質構造、触媒、光源の探索が最も難しい部分だと思いますが、以前の研究で用いたアミノシクロプロペノン、安価に購入できるチオキサントン、光源として家庭用の電球を初期検討に用いた結果、いきなり目的としていたイナミンの生成が確認できたことから、早期に目的達成の目途をつけることができました。その後様々な触媒をスクリーニングしましたが、結果的に殆どの触媒は本反応系に不適であったことから、初期検討で最適に近い条件を試せたのは幸運だったと思います。光触媒を使う反応に馴染みが無く、結果の考察、及びその考察を裏付ける実験の設計では若干苦労しましたが、光化学を専門とする古山渓行先生にご協力頂くことで円滑に研究遂行、論文化を行うことができました。
水系溶媒中での反応、酸化還元に弱い基質共存下での反応等、この論文の条件では困難なことがまだたくさんあるので、それらを乗り越えるべく現在検討中です。

Q4. 将来は化学とどう関わっていきたいですか?

私は現在、分野間融合研究推進を目指して設立された機関で研究を行っており、化学と異なる分野の研究者と関わる機会が多くあります。その中で、化学は比較的幅広い分野との協力が可能であることを改めて実感すると同時に、本当にいい共同研究を行うためには、自分と組んだ場合の明確なメリットとなる、自分が一番うまくできるといえる「看板商品」をもつ必要があると感じています。今はまだまだ途上ですが、自分の看板をつくり、磨き上げつつ、異分野の研究者とどのような展開が行えるかを探り、共同研究を楽しんで展開していけるのが理想です。

Q5. 最後に、読者の皆さんにメッセージをお願いします。

現在私が展開している光化学反応開発に関するテーマは、コロンビア大学Tristan Lambert先生(現コーネル大学教授)のもとでシクロプロペニウム骨格を持つ分子触媒開発を行う中で、現職に応募する際、これまでの経験を活かしつつ自身のバックグラウンドである薬学に貢献し得るテーマとして考案したものです。Lambert先生には本テーマの構想にあたり大変有意義なディスカッションを行って頂きました。この場を借りてお礼申し上げます。学生の皆さんも、自分の置かれている環境で学び、体験したことは確実に将来の礎になるので、積極的に様々な経験を積んで自身の強みとしてほしいです。

最後に、学部生-博士課程にかけて研究の楽しさを教えて頂き、有機化学の知識、技術を徹底的に仕込んで頂いた京都大学化学研究所 川端猛夫先生、本研究を行う機会を与えて頂き、研究推進、研究費獲得、学生教育等多岐にわたり多大なるご助言を頂いた、テニュアトラックのメンターである金沢大学薬学系 国嶋崇隆先生、実験を中心になって行ってくれた国嶋研の木村武史君、電気化学的測定、光反応の実施及び考察についてご協力頂いた金沢大学理工系 古山渓行先生に厚くお礼を申し上げます。

参考文献

  1. (a) A. A. Poloukhtine, N. E. Mbua, M. A. Wolfert, G-J. Boons, V. V. Popik J. Am. Chem. Soc. 2009, 131, 15769-15776. (b) S. V. Orski, A. A. Poloukhtine, S. Arumugam, L. Mao, V. V. Popik, J. Locklin, J. Am. Chem. Soc. 2010, 132, 11024-11026.
  2. (a) K. Mishiro, Y. Yushima, M. Kunishima Org. Lett. 2017, 19, 4912-4915. (b) K. Mishiro, Y. Yushima, M. Kunishima J. Org. Chem. 2018, 83, 13595-13603.

研究者の略歴

名前:三代 憲司
所属:金沢大学新学術創成研究機構・創薬分子プローブ研究ユニット・テニュアトラック助教
研究テーマ:有機化学,光化学,創薬化学
略歴:2008年3月京都大学薬学部総合薬学科卒(指導教員:川端猛夫教授)
2013年3月京都大学薬学研究科博士課程修了(指導教員:川端猛夫教授)
2013年8月-2016年1月コロンビア大学化学科 Tristan Lambertグループ博士研究員
2016年1月-現職

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博士(薬学)。Chem-Station副代表。現在国立大学教員として勤務中。専門は有機合成化学、主に触媒開発研究。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

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