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投票!2016年ノーベル化学賞は誰の手に??

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いよいよノーベル賞のシーズンがやって参りました!

化学賞は日本時間 10月5日(水) 18時45分に発表となります。「有機化学4~5年周期説」を信じて前年度は有機化学と予想していましたが、見事に大ハズレ!少し肩すかしを食らった感じでしたが、素晴らしい業績に与えられたことは間違い有りません(「DNA修復機構の解明」が受賞)。

恒例のケムステ予想企画、今年も実施します!お気軽ノーベル化学賞予想!この化学者に違いない!全くわかんないけどこの化学者っぽい!と特設サイトで予想を投票してください!

題して

投票!2016年ノーベル化学賞は誰の手に!?

(※参加にはFacebookアカウントが必要です) 

[追記] 2016年ノーベル化学賞は「分子マシンの設計と合成に」!過去にド本命ではあるが、基礎研究だから。と選ばれなかった内容が巡り巡って戻ってきたようです。分野は有機化学となりました。今年もなんと正解者ゼロ!来年に持ち越しますので来年もお楽しみに!(2016年10月5日21:31)

参加の仕方

下記の受賞予想と人物を参考にしながら、Facebookのアンケートページ(Facebookにログインする必要があります)を訪れ、自分が予想するノーベル賞化学者に1票いれてください。

見事的中された方には、抽選で6名様にAmazonギフト券10,000円分をプレゼントしちゃいます!前年度は的中者なしでしたので、副賞は今年にキャリーオーバー!当選者2倍です!

化学者をすべて掲載しているわけではないので自分が予想する化学者がリストに居ない!という場合には、追加申請をコメント欄にしてください。追加しておきます。もちろん予想の理由を述べても良いですよ。

投票は発表当日30分前まで!ぜひぜひご参加ください。

投票はこちら! (ケムステFacebookファンページ内)

※一度投票すると現在の結果が常に表示されるようになります。

以下投票の参考となるように、いくつかの資料と予想を記載します。

受賞分野の周期表 (1972-2015)

nobel_prediction_2016_3

※その他:環境化学(1995)

昨年も掲載しました受賞分野一覧表。ノーベル賞には分野の人口比を反映しての周期現象があると言われています。昨年の対象は生化学分野で、一方の医学生理学賞が天然物化学出自の医薬品でした。すこしバランスを取ったのか?とも考えられるため、今年もまだまだ有機化学の受賞が期待できます(2001年:不斉触媒、2005年、オレフィンメタセシス、2010年:クロスカップリング)。

また常に受賞確率の高い分野として、構造生物学分野があります。何気にここ数年授与されていません。周期的観点でも確率高く考えてよいでしょう(2006: クロマチンモデルの提唱、2009: リボソームの構造解析、2012:Gタンパク受容体の構造解析 )。

1.圧倒的に有機化学、生化学分野からの受賞が多い
2. 有機化学は4〜5年に一度のペースで受賞している
3. 生化学は過去10年のうち5回受賞している
4. 分析化学や理論化学からは授賞間隔が長い
5. 物理化学、無機化学は少ない

 登竜門賞の受賞者

ノーベル賞の対象となる学者には、その前に有名国際賞を授賞されることがよくあります。その受賞者をチェックしておけば、可能性の高い化学者が絞れるかも!?化学賞と親和性の高いものは以下の通りです。

とりわけ有機化学に限るなら、隔年授与されるロジャー・アダムス賞(アメリカ化学会における有機化学の最高賞)も見逃すことが出来ません。全受賞者39人中10人もがノーベル化学賞を受賞しています。今年は中部大・山本尚教授が受賞しており、野依良治教授(2001年ノーベル化学賞)に続く日本人2人目の快挙です。外堀は埋まりつつあるのかも知れません。

他メディアの予想:2016年版(※随時追加予定)

① トムソン・ロイター社 (引用栄誉賞)

「各分野の論文引用数が上位0.1%である」という客観的データをもとに、現在注目を集める分野を育てた化学者を選び出しています。毎年ノーベル賞受賞発表の直前に授与されており、受賞予想企画の一面もあるとされています。過去の受賞者からもノーベル賞受賞者が多く出ていますので、参照価値は高いでしょう。

今年は以下の3分野が選ばれています。かなり医薬・生理学賞に近い選出にみえます。一方で、毎年ノーベル化学賞受賞候補者として注目されているStuart L. Schreiberは 「成長因子ラパマイシン標的蛋白質(TOR)と哺乳類ラパマイシン標的蛋白質(mTOR)の発見」として、医学・生理学賞で引用栄誉賞を受賞しています。

がん治療における高分子薬物の血管透過性・滞留性亢進(EPR)効果の発見:Hiro Maeda (前田 浩)、Yasuhiro Matsumura (松村 保広)
マウスおよびヒト細胞におけるゲノム編集手法CRISPR-cas9の適用:George M. Church(ジョージ・チャーチ)、Feng Zhang(フェン・チャン)
母体血漿内の無細胞胎児DNAの検出による革新的な非侵襲胎児健診の確立:Dennis Yuk-ming Lo (盧 煜明)

②ブログ「Everyday Scientist」

毎年継続的に各賞の受賞予測を立てています。医学・生理学賞ではT細胞受容体に関する研究、物理学賞では今年の話題を攫った重力波検出の成果を上げています。

リチウムイオン二次電池の開発: John B. Goodenough (ジョン・グッドイナフ)、M, Stanley Whittingham (スタンリー・ウィッティンガム)、Akira Yoshino (吉野 彰)

③日本科学未来館ブログ

こちらも専任の科学コミュニケーターが毎年受賞予測を立てています。解説も詳しく、読むだけで勉強になる貴重な日本語情報源です。

自己組織化分子システムの創出と応用:Makoto Fujita(藤田 誠)
光触媒(酸化チタン)の開発:Akira Fujishima(藤嶋 昭)
ドラッグデリバリーシステムへの貢献と組織工学の提唱:Robert S. Langer (ロバート・ランガー)

日刊工業新聞ニュースイッチ(2016/9/27追記)

工業化学メディアと言うこともあって、産業界の基礎研究→実用化という目線から予想、というよりはコメントをしています。

カーボンナノチューブの発見:Sumio Iijima (飯島 澄男)
ネオジム磁石の開発:Masato Sagawa (佐川眞人)
リチウムイオン電池の開発:Akira Yoshino (吉野 彰)
光触媒の開発:Akira Fujishima(藤嶋 昭)

朝日新聞デジタル(2016/9/27追記)

朝日新聞は独自の取材と「有機化学5年周期説」に基づいているのでしょうか、「日本のお家芸」有機合成化学を全力で推しているようです。

有機合成化学分野への貢献:Teruaki Mukaiyama(向山光昭)、Masakatsu Shibasaki(柴崎正勝)、Hisashi Yamamoto(山本尚)、Shinji Murai(村井眞二)
リチウムイオン電池の開発:John B. Goodenough (ジョン・グッドイナフ)、Akira Yoshino (吉野 彰)、Koichi Mizushima(水島公一)
光触媒反応の発見:Akira Fujishima(藤嶋 昭)

ブログ「Curious Wavefunction」(2016/9/28追記)

王道的なものを予想して外れれば、翌年も受賞確率があるので予想は年々しやすくなっている!(ただし正しい予想をするのはむずかしい)と冗談交じり?の書き出し。前年度は生化学領域に出たので今年はいくぶん薄いだろうとの見方から下記のとおり予想をしています。あまり日本人はフォローしてない印象ですが・・・。他にも医学生理学賞、物理学賞の候補も挙げている充実記事です。

生物無機化学への貢献:Harry B. Gray (ハリー・グレイ)、Stephen J. Lippard (ステフェン・リパード)
化学遺伝学の樹立: Stuart L. Schreiber (スチュアート・シュライバー)、Peter G. Schultz (ピーター・シュルツ)
ドラッグデリバリーシステムの開発:Robert S. Langer (ロバート・ランガー)
リチウムイオン電池の開発: John B. Goodenough (ジョン・グッドイナフ)、M, Stanley Whittingham (スタンリー・ウィッティンガム)
シャペロンの発見:Arthur L. Horwich (アーサー・ホロウィック)、Franz-Ulrich Hartl (フランツ=ウルリッヒ・ハートル)
原子移動ラジカル重合法の開発:Krzysztof Matyjaszewski(クリストフ・マテャシェフスキー)
クリックケミストリーの開拓:K. Barry Sharpless (バリー・シャープレス)
多糖合成法への貢献:Chi-Huey Wong (翁啓恵)
自動DNA合成法への貢献:Marvin H. Caruthers(マーヴィン・カルサーズ)、 Leroy Hood (リロイ・フッド)

⑦NHK「ことしは誰に!まるわかりノーベル賞」(2016/10/2追記)

過去のノーベル賞受賞者に注目分野をインタビューし、デスクが有力候補を解説するという企画。独自の予想を立てている訳ではありませんが、流石にクオリティの高い丁寧なつくりの記事で、一読の価値があります。化学賞は根岸英一教授がインタビューに答えています。

⑧C&EN「Who will win the 2016 Nobel Prize In Chemistry?」(2016/10/2追記)

アメリカ化学会C&ENでは、UCLA化学科教授・Nature Chemistry編集長らを集めて予想討論を行っています。またTwitter上のハッシュタグ#ChemNobelでも意見を募集してとりあげています。パネリスト達が挙げていたのは以下の候補者たち。これだけの見識ある方々から見ても、やはり数を絞りきることは難しいのだなと思わされます。

生物無機化学・電子移動化学への貢献: Harry B. Gray (ハリー・グレイ)
ゲノム編集技術CRISPR/Cas9の開発: Jennifer A. Doudna(ジェニファー・ダウドナ)、Emmanuel Charpentier(エマニュエル・シャルパンティエ)、Feng Zhang(フェン・チャン)
クリックケミストリーに有効な化学反応の開発:K. Barry Sharpless (バリー・シャープレス)、M.G.Finn (M.G.フィン)、Varely V. Fokin (ヴァレリー・フォキン)、Rolf Huisgen(ロルフ・ヒュスゲン), Carolyn R. Bertozzi(キャロライン・ベルトッツィ)、Morten Meldal(モーテン・メルダル)
分子機械の開発:Ben L. Feringa(ベン・フェリンガ)、J. Fraser Stoddart (フレーザー・ストッダート)、David Leigh(デヴィッド・レイ)
酵素メカニズムの解明:JoAnne Stubbe(ジョアン・スタビー)
ドラッグデリバリーシステムの開発:Robert S. Langer (ロバート・ランガー)
リチウムイオン二次電池の開発: John B. Goodenough (ジョン・グッドイナフ)、M, Stanley Whittingham (スタンリー・ウィッティンガム)、Akira Yoshino (吉野 彰)
リビングラジカル重合法の開発:Krzysztof Matyjaszewski(クリストフ・マテャシェフスキー)、Ezio Rizzardo(エチオ・リザード)、David Solomon(デヴィッド・ソロモン)
自動DNA合成法の開発:Marvin H. Caruthers(マーヴィン・カルサーズ)、 Leroy Hood (リロイ・フッド)
電気化学に関する広汎な基礎研究:Allen J. Bard (アレン・バード)
ナノカーボン化学への貢献:Sumio Iijima (飯島 澄男)、Mildred Dresselhaus (ミルドレッド・ドレッセルハウス)

ケムステ版化学賞候補者リスト:2016年版

いつもの通り、各媒体の情報を総合した上で、分野別にリストアップしています。分量が多くなりすぎましたので、今年は別ページにまとめました。→ こちら

アンケートページで投票可能とした化学者は、昨年授与された人、既にお亡くなりになった人、少し早いかなと独断で思った人、ちょっと難しいかなと思った人を抜いたうえで、トムソン・ロイターの予想を加えています。(皆さんなりの候補者と見解があれば、Facebook投票ページもしくはTwitter(@chemstationへのメッセージで是非教えてください!)

 

ケムステ予想!今年のノーベル化学賞はこれだ!

色々議論はありましたが、今年はこれまでと全く違った観点からノーベル化学賞候補者を2つ予想しました。もし当たったら、山口代表が予想根拠の種明かしをするらしいので、楽しみにお待ち下さい(当たらなかったら粛々と受け止めるそうです)。

糖鎖生物学および化学糖鎖生物学の提唱: Raymond A. Dwek(レイモンド・ドウェク)・Carolyn R. Bertozzi (キャロライン・ベルトッツィ)

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糖はすでに数回ノーベル賞の対象となっていますが、糖鎖が様々な生命活動に関わっていることがわかったのは最近のこと。これを研究する学問分野である糖鎖生物学(Glycobiology)1という言葉を提唱したオックスフォード大のDwekと、化学的に糖鎖の役割を解明する学問領域、化学糖鎖生物学(Chemical Glycobiology)2を提唱したBertozziを今回ノーベル化学賞候補として選びました。Bertozziは生体共役反応の第一人者としても有名ですが、それを駆使した糖鎖生物学への発展に対する貢献として選出しています。

  1. Rademacher, T.W.; Parekh, R. D.; Dwek,  R. A. Annu. Rev. Biochem.  1988, 57, 785. DOI: 10.1146/annurev.bi.57.070188.004033
  2. Bertozzi, C. R. Science 2001, 291, 2357.  DOI: 10.1126/science.1059820

 

光合成に関わる巨大タンパク質の構造決定: Nathan Nelson(ナサン・ネルソン)・沈建仁神谷信夫

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最も長く研究されている分野のひとつである光合成。すでにノーベル賞も関連分野で10回ほど与えられており、なかでも1988年にノーベル化学賞を受けたJohann DeisenhoferRobert HuberHartmut Michelらによる光合成反応中心の三次元構造解明は印象的です。しかしながら、反応中心複合体のみの構造決定に過ぎず、膜タンパク・様々なサブユニットから構成される巨大タンパク質複合体の決定は行われていませんでした。Nelsonらは2003年に陸上植物の光化学系Ⅰの結晶構造を明らかとしました1。一方、沈・神谷らは光化学系Ⅱ複合体の構造を明らかとし2、2011年のサイエンス誌でこの年の「科学上の10大発見」に選ばれ、朝日賞も共同受賞しています。巨大タンパク質の構造決定手法は光合成機構の解明への貢献もさることながら、膜タンパク質の構造解析手法の究極形としても注目されています。

  1. Ben-Shem, A.; Frolow. F; Nelson, N. Nature, 2003, 426, 630. DOI: 10.1038/nature02200
  2. Umena, Y.; Kawakami, K.; Shen, J.-R.; Kamiya, N. Nature, 2011, 473, 55 DOI: 10.1038/nature09913

 

皆さんの予想はいかがでしょうか?

それでは日本時間 10月5日18時45分を楽しみに待ちましょう!

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cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

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