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スポットライトリサーチ

濃硫酸の1000倍強い超酸の中でも蛍光を保ち続ける”超酸耐性BODIPY”

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第705回のスポットライトリサーチは、北海道大学大学院総合化学院(反応有機化学研究室)博士後期課程2年の渡辺敬太 さんにお願いしました。

今回ご紹介するのはボロン‒ジピロメテン(BODIPY)に関する研究です。BODIPYは蛍光色素として広く使われていますが、強酸性条件下では分解して蛍光特性を失うという課題がありました。今回、そのような挑戦的課題を克服する「超酸耐性BODIPY」の合成を報告されました。本成果は、Nat. Commun. 誌 原著論文およびプレスリリースに公開されています。

“Superacid-resistant macrocyclic BODIPYs”
Watanabe, K.; Honda, G.; Terauchi, Y.; Mamiya, S.; Inaba, Y.; Nakajima, T.; Gong, J. P.; Yamaguchi, Y.; Kitagawa, Y.; Hasegawa, Y.; Ide, Y.; Gao, M.; Yoneda, T.; Inokuma, Y. Nat. Commun. 2026, 17, 2332. DOI: 10.1038/s41467-026-70499-9

それでは今回もインタビューをお楽しみください!

Q1. 今回プレスリリースとなったのはどんな研究ですか?簡単にご説明ください。

今回私たちの研究では、100%硫酸よりもさらに強い「超酸」の中でも壊れずに光り続ける、“超酸耐性BODIPY”色素を合成しました。BODIPYは蛍光色素として古くからさまざまな分野で利用されていますが、強酸性条件下ではホウ素部位が外れてしまい、蛍光特性を失うという弱点がありました。当研究室ではcalix[3]pyrroleという3つのピロールからなる大環状化合物がホウ素錯体にすることで高い酸耐性を得ることを報告していました(https://pubs.acs.org/doi/10.1021/jacs.1c06331)。今回、私たちは、トリピランという既知分子からホウ素錯化、閉環反応を経て3つのピロールからなる大環状構造の中にBODIPY骨格を組み込むことで新しいBODIPY色素の合成に成功しました。さまざまな強酸・超酸中で蛍光挙動確認したところ、従来の酸耐性BODIPYと比較しても圧倒的に高い酸耐性を持つことがわかりました。さらに、100%硫酸の1000倍以上強い酸性を持ち、単分子酸として最強クラスとされるフルオロ硫酸中でも、ホウ素部位を残したまま高い量子収率で蛍光を示すことを確認しました。また、これまでのBODIPYではできなかった強酸性樹脂の染色への応用も可能となりました。超酸中でも安定に発光できる色素はほとんど前例がなく、今後は極限環境でのセンシングや新しい機能性材料への応用も期待されています。

Q2. 本研究テーマについて、自分なりに工夫したところ、思い入れがあるところを教えてください。

芳香環を導入した類縁体の合成には思い入れがあります。特に、meso位に芳香環を導入した超酸耐性BODIPYの合成はリバイズ期間のうち1ヶ月で4種類行いました。構造同定もできていなかった状態から先生、後輩達と何度も議論を重ね、低収率ながらなんとか合成できました。合成後の大量の分光測定についても同テーマに取り組んでいた後輩達が本当に頑張ってくれました。

Q3. 研究テーマの難しかったところはどこですか?またそれをどのように乗り越えましたか?

強酸・超酸中でのスペクトル測定が大変でした。紫外可視吸収や蛍光スペクトルの測定をされたことがある方は多いと思います。普通は中性溶媒に試料を溶かして測定するのですが、今回私たちは中性溶媒はもちろんのこと液体の強酸・超酸を溶媒とした測定を行いました。腐食性のフッ化水素酸や超酸については大量にかつ薄めることなく使用するのが難しく、正直かなり怖かったです。中和・廃棄の際にはかなりの時間を要してしまったこととどうやっても跳ねてしまい白衣にはたくさん穴が開いてしまったのも大変でしたね。慣れてくるとかなり素早く測定と処理のサイクルが回せるようになり事故なく各種溶媒での測定ができました。

Q4. 将来は化学とどう関わっていきたいですか?

現在は有機化学を専門として研究を進めていますが、将来についてはまだ具体的なビジョンが明確に定まっているわけではありません。ただ、将来的には有機化学だけでなく、無機化学や計算化学など、複数の異分野にも関わりながら研究を進められるような化学者になりたいと考えています。そのためにも、まずは今取り組んでいる有機化学をしっかり究めたいと思っています。

Q5. 最後に、読者の皆さんにメッセージをお願いします。

今回のテーマに私が割り振られてから論文投稿に至るまで、およそ2年もの時間を要しました。その間には上手くいかないこともたくさんありましたが、先生方や研究室の学生など、多くの方々の支えや協力のおかげで無事に論文化することができました。

研究をしていると、どうしても思い通りにいかず苦しい時期もあると思います。ただ、周りを見渡してみると、意外と支えてくれる人や一緒に悩んでくれる人がいるのだと今回の研究を通して強く感じました。お互いに支え合いながら研究を続けていくことが大切なのかなと思います。

最後になりましたが日頃からご指導いただいている猪熊先生に心より感謝申し上げます。また、このような機会をいただきましたChem-Stationスタッフの方々にも厚く御礼申し上げます。ありがとうございました。

研究者の略歴


名前:渡辺 敬太 (わたなべ けいた)
所属:北海道大学大学院総合化学院
略歴:
2025年3月   北海道大学大学院総合化学院 修士課程修了
2025年4月– 北海道大学大学院総合化学院 博士課程

関連リンク

  1. 研究室ホームページ
  2. 原著論文
  3. プレスリリース1
  4. プレスリリース2

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大学院生です。ケモインフォマティクス→触媒

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