[スポンサーリンク]

スポットライトリサーチ

電場を利用する効率的なアンモニア合成

[スポンサーリンク]

第107回のスポットライトリサーチ。今回は早稲田大学理工学術院 先進理工学部 応用化学科 関根研究室の一貫性博士課程5年・真鍋 亮さんにインタビューを行いました。

関根研究室では、エネルギー・資源・環境問題の解決に向け、オリジナル触媒の開発、及びそれを利用した反応開発に取り組んでいます。具体的な反応としては、水素・合成ガス製造、炭化水素転換を目指しています。

今回、真鍋さんは電場を用いたアンモニア合成の効率的な手法を見出し、その研究成果をChemical Science誌に報告しました。また、本研究成果はプレスリリースとしても取り上げられていましたので、今回スポットライトリサーチとして取り上げさせていただきました。

Electrocatalytic synthesis of ammonia by surface proton hopping

R. Manabe, H. Nakatsubo, A. Gondo, K. Murakami, S. Ogo, H. Tsuneki, M. Ikeda, A. Ishikawa, H. Nakai, Y. Sekine

Chem. Sci. 2017, Advance Article. DOI: 10.1039/C7SC00840F

筆頭著者の真鍋さんについて、関根先生からコメントをいただきました。

真鍋くんは、電場中での不均一触媒のin-situ/operando測定という難しい手法をゼロから開発し確立してくれました。この手法を活かして、これまでに報告のない表面プロトニクスによる触媒反応の促進効果を発見し、その応用を示してくれました。これは彼の情熱と努力の賜物と思います。

それでは、研究成果をご覧ください!

Q1. 今回の受賞対象となったのはどんな研究ですか?簡単にご説明ください。

Ruを半導体酸化物(SrZrO3)へ担持した触媒に電場を印加すると、200℃程度の低温でもアンモニア合成が進行することを見出し、電場印加中のアンモニア合成反応のメカニズムを実験と計算の両面から明らかにしました。また本系を9気圧程度に加圧すると、低温で世界最高レベルのアンモニア合成活性を実現する新規高効率な触媒プロセスであることを発表しました。 従来の熱触媒プロセスでは原料の窒素を触媒表面で解離するステップが大きな障壁となり、高温(500℃)・高圧(200気圧)を要するアンモニア合成反応ですが、電場を印加すると触媒表面でプロトン伝導が発現し、中間体N2H+を与える新たなメカニズムを介して窒素解離が低温で促進されている(下図)ことを報告しました。

Q2. 本研究テーマについて、自分なりに工夫したところ、思い入れがあるところを教えてください。

私は学部4年生の時から、電場印加中でメタン水蒸気改質を低温にて進行させる研究を行ってきました。メタン水蒸気改質は原料にメタンと水(CH4+H2O)を含み、検討を進めていくうちに、電場印加に伴って水を介したプロトン伝導が発現し、反応を促進することが分かりました。今回の検討はアンモニア合成反応であり、水の存在しないドライな条件(N2+H2)においても同様にプロトン伝導が発現し、反応を促進することを見出せました。水の有無に関わらず触媒層へ電場を印加することでプロトン伝導を発現させることができ、それが不均一触媒反応を促進しうるという現象に思い入れがあり、これを活かすことで自身の研究に厚みと広がりが出ました。

Q3. 研究テーマの難しかったところはどこですか?またそれをどのように乗り越えましたか?

電場を印加した触媒反応のメカニズムを解明するために、電場印加中の触媒キャラクタリゼーションの実施、すなわちin-situ測定が不可欠でした。しかしながら当時電場中でin-situ測定が可能な実験手法は極めて少なく、新たな試みが必要でした。そのような中で、関根教授にアドバイスをいただきながら、触媒表面を観測できるIR分光測定をin-situで実施するためのセル作製を行いました。セルの材質としてどのようなものが適当か、時には他研究室に訪問して教えていただきながら、またセルの作製業者の方と何度も連絡を取って最適なセルの形状を確認しながら開発を進めました。セル開発を進めてからスペクトルが再現良く測定可能になるまで半年弱を要しましたが、in-situ IR測定を初めて成功した時には達成感でいっぱいでした。

Q4. 将来は化学とどう関わっていきたいですか?

In-situ IR測定の方法論を確立していった経験から、今現在出来ないことでも、出来るように自分で変えていけばいいんだ!ということを学びました。このように現状に甘んじず、必要なこと・やりたい事を実施するために挑戦する行動力を発揮して、今後も化学という広い学問の中で新たな発見が出来ればと思っています。

Q5. 最後に、読者の皆さんにメッセージをお願いします。

本研究は関根研のアンモニア合成を検討するチームに加え、理論計算や加圧系の検討といった多方面の専門分野の方々との頻繁な議論を経て、大きな成果としてまとめることが出来ました。そのような中で、自身の核となる専門や得意領域を持つことで、一つの成果に貢献できることが分かりました。ですので、何か一つ自身の中で極め、武器にできると世界が広がっていくように思っています。

最後になりますが、日々指導をしていただいております関根教授、小河助教、理論計算を実施していただいた早稲田大学中井研究室の皆様、加圧系の検討をしていただいた日本触媒常木チームの皆様、関根研アンモニア合成班の皆様へ、この場をお借りして厚く御礼申し上げます。

関連リンク

研究者のご略歴

 

真鍋 亮 (マナベ リョウ)

所属: 早稲田大学 先進理工学研究科 先進理工学専攻(一貫制博士課程5年、D3相当) 触媒化学(関根)研究室

研究テーマ: 表面プロトニクスによる低温での触媒反応

経歴:
2009年3月 千葉県立千葉高等学校 卒業
2013年3月 早稲田大学 先進理工学部 応用化学科 卒業
2015年3月 早稲田大学大学院 先進理工学研究科 応用化学専攻 修了
2015年4月―現在 早稲田大学大学院 先進理工学研究科 先進理工学専攻 一貫制博士課程 在学中

Orthogonene

投稿者の記事一覧

有機合成を専門にするシカゴ大学化学科PhD3年生です。
趣味はスポーツ(器械体操・筋トレ・ランニング)と読書です。
ゆくゆくはアメリカで教授になって活躍するため、日々精進中です。

http://donggroup-sites.uchicago.edu/

関連記事

  1. Nitrogen Enriched Gasoline・・・って何…
  2. 非専門家でもデザインはできる!「ノンデザイナーズ・デザインブック…
  3. ラジカルonボロンでフロンのクロロをロックオン
  4. 金属錯体化学を使って神経伝達物質受容体を選択的に活性化する
  5. 研究者のためのCG作成術③(設定編)
  6. ワイリーからキャンペーンのご案内 – 化学会・薬学会…
  7. Reaxysレクチャー&第9回平田メモリアルレクチャー…
  8. 複雑な生化学反応の条件検討に最適! マイクロ流体技術を使った新手…

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. 危険ドラッグ:創薬化学の視点から
  2. 液中でも観察OK 原子間力顕微鏡: 京大グループ開発
  3. ホウ素ーホウ素三重結合を評価する
  4. 化学者のためのエレクトロニクス講座~フォトレジスト編
  5. 不安定な合成中間体がみえる?
  6. 笑う化学には福来たる
  7. Natureが査読無しの科学論文サイトを公開
  8. リンダウ会議に行ってきた②
  9. デーヴィス酸化 Davis Oxidation
  10. 2010年日本化学会各賞発表-学会賞-

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2017年7月
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31  

注目情報

注目情報

最新記事

Excelでできる材料開発のためのデータ解析[超入門]-統計の基礎や機械学習との違いを解説-

 申込みはこちら■開催概要近年、少子高齢化、働き手の不足の影響を受け、従来の経験と勘によ…

超原子価ヨウ素反応剤を用いたジアミド類の4-イミダゾリジノン誘導化

第468回のスポットライトリサーチは、岐阜薬科大学  合成薬品製造学研究室(伊藤研究室)に所属されて…

研究室でDIY!ELSD検出器を複数のLCシステムで使えるようにした話

先日のBiotage Selekt + ELSDの記事でちらっと紹介した、ELS…

第37回ケムステVシンポ「抗体修飾法の最前線 〜ADC製造の基盤技術〜」を開催します!

修論・卒論・博士論文で大忙しの2,3月ですが、皆さんいかがお過ごしでしょうか。まとめ作業とデスク…

有機合成化学協会誌2023年1月号:[1,3]-アルコキシ転位・クロロシラン・インシリコ技術・マイトトキシン・MOF

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2023年1月号がオンライン公開されました。す…

飲む痔の薬のはなし1 ブロメラインとビタミンE

Tshozoです。あれ(発端記事・その後の記事)からいろいろありました。一進一退とはいえ、咀…

深紫外光源の効率を高める新たな透明電極材料

第467回のスポットライトリサーチは、東京都立大学大学院 理学研究科 廣瀬研究室の長島 陽(ながしま…

化学メーカー発の半導体技術が受賞

積水化学工業株式会社の高機能プラスチックスカンパニー開発研究所エレクトロニクス材料開発センターが開発…

ラジカル種の反応性を精密に制御する-プベルリンCの世界初全合成

第466回のスポットライトリサーチは、東京大学大学院薬学系研究科 天然物合成化学教室 (井上研究室)…

Biotage Selekt+ELSD【実機レビュー】

最近では、有機合成研究室には1台以上はあるのではないかという自動フラッシュ精製装置ですが、その中でも…

Chem-Station Twitter

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP