[スポンサーリンク]

化学者のつぶやき

高速エバポレーションシステムを使ってみた:バイオタージ「V-10 Touch」

[スポンサーリンク]

タイトルから何だそれ?と思った方々。正しいです。高速のエバポ?どういうこと?と思うことでしょう。

そう、まず全く知らない人に簡単に説明しますと、エバポレーション(evapolation)というのは減圧しながら溶液を留去すること。有機合成反応などを行った後に、粗生成物を有機溶媒で抽出・分離します。その有機溶媒を留去してあげる機械がエバポレーター。合成化学の研究室には必ずある代物です。正確にはポンプで減圧し回転しながしながら突沸を防ぎ、溶媒を留去するので正確にはロータリーエバポレーターといいます(これカタカナ英語です。)。個人的にはビュッヒのロータリーエバポレーターがスタイリッシュで好きです。研究室で導入しているのは東京理化のものですが。

ロータリーエバポレーター(出典:日本ビュッヒ)

 

生物系でしたら、遠心エバポレーターの方がメジャーでしょうか。それはよいとして、話を戻すと、高速エバポレーションシステムってなんでしょう。

簡単にいえば、高沸点溶媒、例えば水やジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)も超短時間で飛ばす(留去する)優れものマシンのことです。

というわけで今回の記事では、バイオタージ社から発売されている高速エバポレーションシステム「V-10 Touch」を紹介させて頂きたいと思います。

高速エバポレーションシステム「V-10 Touch」とは

最近フルモデルチェンジして、様相が新しくなったこの機械。昨年末、偶然デモするチャンスがありました。特に購入しようとする気持ちもなく、とにかく興味本位で(理由は後ほど)。見た目は以下のような感じです。結構ごついですが、下にあるバイアルは8 mLのバイアルなので、大体大きさがわかることでしょう。同社のフラッシュ自動合成装置Isoleraの一回り大きいぐらい。

動かし方はとっても簡単。同社の機械は「サルでもわかる」を売りにしている(と勝手に思っている)ので、あまり細かい機能はありません(あるかもしれない)。

基本的には下記画像のタッチパネルで留去したい溶媒の沸点(低い・普通・高い・とっても高い)を選び、スタートボタンを押すだけ。容器を減圧して、少しだけ熱をかけて気化させ、右側で冷却し、後の実演ビデオをみてもらえれば一目瞭然でしょう。

高速エバポレーションシステム「V-10 Touch」(出典:バイオタージを一部改変)

 

市販のバイアルを使って溶媒を留去することが可能です。基本的にはこれ単体で動きますが、高沸点溶媒の場合は、高真空ポンプもオプションでつけなければいけません。サンプルを連続で自動で留去できるオートサンプラーもオプションでつけることが可能です。

さて、では肝心は、溶媒がどのくらい「高速」で留去できるか?というところですが、以下の資料を見てください。実際に留去している時間はこれと同等・もしくはもう少し速い感じでした。NMPやDMSOなどの除去はロータリーエバポレーターではちょっとむずかしいのでスグレモノです。

濃縮時間比較表(出典:バイオタージ)

 

実際に「V-10 Touch」をつかってみた

データだけで話してもわかりにくいので、実際に高速エバポレーションシステム使ってみた様子をお話します。NMPやDMSOを留去してもよいのですが、見た目が地味なので、今回は綾鷹(お茶)を使いました。つまり溶媒は水になります。

にごりがある綾鷹をとばしてみる

 

以下の動画をみてください。実際にバイアルにいれ、セットです。左にあるのはオートサンプラーでバイアルを自動的に感知し、セットしてくれます。その後、土台が上昇し、密閉・回転・減圧といった流れです。ちょっと未来的でカッコイイので声をあげてしまいました。

数分後修了しました。きれいに水が留去されにごりのみが残っています。回転することで表面積をあげるため、全体的ににごりがついています。

にごりのみがのこった綾鷹(お茶)

 

まとめ

以上、高速エバポレーションシステムの体験レポートでした。率直な感想をいえば、「欲しい!」の一言です。高沸点溶媒に限らずなんでも自動で(突沸せずに)溶媒を減圧留去してくれるので、しばらくつかっていた学生もあればぜひ使いたいとのことでした。ただ、購入に至らない原因は2つ。

  1. 高価であること:お問い合わせしていただければわかると思いますが、かなり高価です。まだまだ買うものがあるのでちょっとむずかしいです。
  2. 場所をとること:コンパクトであることは確かですが、1人分のスペースを奪うことになります。スペースが限られていてこれから人数が爆増する当研究室にはちょっとむずかしいです。

と、いうことで当初の予定通りデモのみで終わりました。しかし、これらを解決できればとっても使える機器だと思います。例えば製薬会社などで時は金なり(研究者を雇用している)の場合は、逆に安いお買い物だと思います。HPLCで分取して自動で溶媒を減圧留去できたらすぐに化合物を提供できますね。DMSO溶液にしても簡単に飛ばせるのも売りだと思います。それ以外の代わった用途に使われている例もあります。詳しくはユーザーレポート(関連リンク参照)を御覧ください。

興味のある方はぜひデモをしてみてはいかがでしょうか?お問合わせは以下まで。

バイオタージ・ジャパン株式会社

本社: 〒136-0071 東京都江東区亀戸1-14-4, 6F  TEL 03-5627-3123 FAX 03-5627-3121

大阪: 〒532-0003 大阪市淀川区宮原5-1-28, 4F  TEL 06-6397-8180 FAX 06-6397-8170

URL: http://www.biotage.co.jp/  E-mail: Japan_info@biotage.com

 

関連リンク

関連動画

Biotage® V-10 Touch Evaporation System from Biotage on Vimeo.

Avatar photo

webmaster

投稿者の記事一覧

Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

関連記事

  1. 【動画】元素のうた―日本語バージョン
  2. 君には電子のワルツが見えるかな
  3. 2024年度 第24回グリーン・サステイナブル ケミストリー賞 …
  4. 2007年度ノーベル化学賞を予想!(4)
  5. がん代謝物との環化付加反応によるがん化学療法
  6. 天然バナジウム化合物アマバジンの奇妙な冒険
  7. 「脱芳香族的二重官能基修飾化反応の研究」ーイリノイ大学David…
  8. 有機合成研究者必携! 有機合成用反応剤プロトコル集

注目情報

ピックアップ記事

  1. 創薬における中分子
  2. 創発型研究のススメー日本化学会「化学と工業:論説」より
  3. スマホページをリニューアルしました
  4. ペンタシクロアナモキシ酸 pentacycloanamoxic acid
  5. ミヤコシンA (miyakosyne A)
  6. スコット・デンマーク Scott E. Denmark
  7. フラーレンの中には核反応を早くする不思議空間がある
  8. 鉄触媒を使い分けて二重結合の位置を自由に動かそう
  9. 2010年日本化学会各賞発表-進歩賞-
  10. ビス(アセトニトリル)パラジウム(II)ジクロリド : Dichlorobis(acetonitrile)palladium(II)

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2017年1月
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
3031  

注目情報

最新記事

有馬温泉で鉄イオン水溶液について学んできた【化学者が行く温泉巡りの旅】

有馬温泉の金泉は、塩化物濃度と鉄濃度が日本の温泉の中で最も高い温泉で、黄褐色を呈する温泉です。この記…

HPLCをPATツールに変換!オンラインHPLCシステム:DirectInject-LC

これまでの自動サンプリング技術多くの製薬・化学メーカーはその生産性向上のため、有…

MEDCHEM NEWS 34-4 号「新しいモダリティとして注目を浴びる分解創薬」

日本薬学会 医薬化学部会の部会誌 MEDCHEM NEWS より、新たにオープン…

圧力に依存して還元反応が進行!~シクロファン構造を活用した新機能~

第686回のスポットライトリサーチは、北海道大学大学院理学研究院化学部門 有機化学第一研究室(鈴木孝…

第58回Vシンポ「天然物フィロソフィ2」を開催します!

第58回ケムステVシンポジウムの開催告知をさせて頂きます!今回のVシンポは、コロナ蔓延の年202…

第76回「目指すは生涯現役!ロマンを追い求めて」櫛田 創 助教

第76回目の研究者インタビューは、第56回ケムステVシンポ「デバイスとともに進化する未来の化学」の講…

第75回「デジタル技術は化学研究を革新できるのか?」熊田佳菜子 主任研究員

第75回目の研究者インタビューは、第56回ケムステVシンポ「デバイスとともに進化する未来の化学」の講…

第74回「理想的な医薬品原薬の製造法を目指して」細谷 昌弘 サブグループ長

第74回目の研究者インタビューは、第56回ケムステVシンポ「デバイスとともに進化する未来の化学」の講…

第57回ケムステVシンポ「祝ノーベル化学賞!金属有機構造体–MOF」を開催します!

第57回ケムステVシンポは、北川 進 先生らの2025年ノーベル化学賞受賞を記念して…

櫛田 創 Soh Kushida

櫛田 創(くしだそう)は日本の化学者である。筑波大学 数理物質系 物質工学域・助教。専門は物理化学、…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP