[スポンサーリンク]

化学者のつぶやき

タンパク質の定量法―ビシンコニン酸法 Protein Quantification – Bicinconic Acid Assay

[スポンサーリンク]

原理

ビシンコニン酸(BCA)法(Bicinconic Acid  Assary)はLowry法をさらに改良した比色法であり、タンパク質濃度定量に用いられる。

Lowry法におけるFolin試薬のかわりにビシンコニン酸 (BCA)を添加する。Cu2+がタンパク質によって還元されて生じるCu+がBCAと複合体を形成して赤紫色に発色する。この562nmの吸光度を測定し、検量線を用いることによって定量する。

長所

  • 測定範囲は0.001-2 mg/mL、感度が高い
  • 広い範囲で直線性を示す
  • 操作が簡便
  • Lowry法よりも界面活性剤の影響を受けにくい

短所

  • キレート剤やチオール還元剤などで妨害される

プロトコル

BCAアッセイキットは各社から市販されているが、下記のレシピにて試薬は調製可能である。

BCA試薬の調製法

A液
ビシンコニン酸ナトリウム(10 g)、Na2CO3(20 g)、酒石酸ナトリウム(1.6 g)、NaOH(4 g)、NaHCO3(9.5 g)をMQ水に溶解し、1 Lにメスアップする。その後、10N NaOH水溶液によってpHを11.25に合わせる。室温にて数ヶ月保存可能。

B液
Cu2SO4-5H2O(4 g)MQ水に溶解し、全量100 mLとする。室温にて数ヶ月保存可能。

プロトコル
  1. 50容量のA液と、1容量のB液を混合する(用時調製)
  2. サンプル(100 μL)に対し、1.の混合液を1mL加え、ボルテックス攪拌する
  3. 37℃で30分静置する
  4. 562 nmの吸光度を測定する。
  5. BSAを標準試料として希釈系列と検量線を作成し、それをもとに濃度を定量する。

関連動画

 

参考文献

  1. ”総タンパク質の定量法” 鈴木祥夫、ぶんせき 2018, 1, 2. [PDF]
  2. “[6] Quantification of protein” Stoscheck, C. M. Met. Enzymol. 1990, 182, 50. doi:10.1016/0076-6879(90)82008-P
  3. “Measurement of protein using bicinchoninic acid” Smith, P. K. et al. Anal. Biochem. 1985, 150, 76. doi:10.1016/0003-2697(85)90442-7

関連書籍

Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Fourth Edition (3-Volume Set)

Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Fourth Edition (3-Volume Set)

Green, Michael R., Sambrook, Joseph
¥44,500(as of 12/14 13:16)
Amazon product information

外部リンク

Avatar photo

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. 日本農芸化学会創立100周年記念展に行ってみた
  2. 学振申請書を磨き上げるポイント ~自己評価欄 編(前編)~
  3. Cu(I) の構造制御による π 逆供与の調節【低圧室温水素貯蔵…
  4. 部分酸化状態を有する純有機中性分子結晶の開発に初めて成功
  5. 非専門家でもデザインはできる!「ノンデザイナーズ・デザインブック…
  6. C-H結合活性化を経るラクトンの不斉合成
  7. ペプチド縮合を加速する生体模倣型有機触媒
  8. マテリアルズ・インフォマティクス解体新書:ビジネスリーダーのため…

注目情報

ピックアップ記事

  1. Practical Functional Group Synthesis
  2. 第98回日本化学会春季年会 付設展示会ケムステキャンペーン Part III
  3. 超塩基に匹敵する強塩基性をもつチタン酸バリウム酸窒化物の合成
  4. 天然バナジウム化合物アマバジンの奇妙な冒険
  5. Hazardous Laboratory Chemicals Disposal Guide
  6. アメリカの大学院で受ける授業
  7. 好奇心の使い方 Whitesides教授のエッセイより
  8. 知られざる法科学技術の世界
  9. 化学に関係ある国旗を集めてみた
  10. ジョン・アンソニー・ポープル Sir John Anthony Pople

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2022年11月
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
282930  

注目情報

最新記事

7th Compound Challengeが開催されます!【エントリー〆切:2026年03月02日】 集え、”腕に覚えあり”の合成化学者!!

メルク株式会社より全世界の合成化学者と競い合うイベント、7th Compound Challenge…

乙卯研究所【急募】 有機合成化学分野(研究テーマは自由)の研究員募集

乙卯研究所とは乙卯研究所は、1915年の設立以来、広く薬学の研究を行うことを主要事業とし、その研…

大森 建 Ken OHMORI

大森 建(おおもり けん, 1969年 02月 12日–)は、日本の有機合成化学者。東京科学大学(I…

西川俊夫 Toshio NISHIKAWA

西川俊夫(にしかわ としお、1962年6月1日-)は、日本の有機化学者である。名古屋大学大学院生命農…

市川聡 Satoshi ICHIKAWA

市川 聡(Satoshi Ichikawa, 1971年9月28日-)は、日本の有機化学者・創薬化学…

非侵襲で使えるpH計で水溶液中のpHを測ってみた!

今回は、知っているようで知らない、なんとなく分かっているようで実は測定が難しい pH計(pHセンサー…

有馬温泉で鉄イオン水溶液について学んできた【化学者が行く温泉巡りの旅】

有馬温泉の金泉は、塩化物濃度と鉄濃度が日本の温泉の中で最も高い温泉で、黄褐色を呈する温泉です。この記…

HPLCをPATツールに変換!オンラインHPLCシステム:DirectInject-LC

これまでの自動サンプリング技術多くの製薬・化学メーカーはその生産性向上のため、有…

MEDCHEM NEWS 34-4 号「新しいモダリティとして注目を浴びる分解創薬」

日本薬学会 医薬化学部会の部会誌 MEDCHEM NEWS より、新たにオープン…

圧力に依存して還元反応が進行!~シクロファン構造を活用した新機能~

第686回のスポットライトリサーチは、北海道大学大学院理学研究院化学部門 有機化学第一研究室(鈴木孝…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP