第72回目の研究者インタビューです! 今回は第54回ケムステVシンポ「構造から機能へ:ケイ素系元素ブロック材料研究の最前線」の講演者の一人、鹿児島大学理工学研究科の金子 芳郎(かねこ よしろう)先生にお願いしました。
8月8日に開催されるVシンポでは、金子先生のお話もうかがえます。登録ページに直接飛びたい方は こちらの登録ページリンク にどうぞ!
それではインタビューをどうぞご覧ください!
Q. あなたが化学者になった理由は?
もともとはデザインに興味があり、高校時代は美術が好きでした。大学でもデザイン系(工業デザイン)に進みたかったのですが、受験の壁にぶつかり、化学の道を選ぶことに。大学で化学を学ぶうちに、分子レベルの構造を自在に操る合成化学が“ナノレベルのデザイン”のように思えて、強く惹かれるようになりました。有機・無機を問わず、構造が美しい化合物には今も心を奪われます。
Q. もし化学者でなかったら、何になりたいですか?またその理由は?
投資家ですね。もともと投資に興味があって、現在も投資信託(インデックス投資)や高配当株などを楽しみながら運用しています。もしそれを本格的に仕事にできたら、投資から得た不労所得で生活しながら、今も時折楽しんでいる登山やシュノーケリング、ラフティング、キャンプといったアウトドアライフを満喫しつつ、高校時代に憧れていたデザイン関係の趣味にもゆったり取り組んでみたい。そんな自由な生活に憧れます。
Q. 現在、どんな研究をしていますか?また、どのように展開していきたいですか?
シロキサン結合に着目し、構造制御されたポリシロキサンやオリゴシロキサン(ラダー型ポリマー、かご型・ヤヌス型オリゴマーなど)の合成、構造制御、機能発現、そして応用展開に取り組んでいます。シロキサン化合物を合成する反応は、有機反応に比べて“泥臭く”、思い通りにいかない部分も多いのですが、だからこそ挑戦しがいがあり、大きな魅力を感じています。近年は、構造制御されたシロキサン化合物の応用にも注力しており、CO₂分離膜、強力接着剤、防曇ハードコーティング、超高耐熱性の可溶性シロキサンポリマーなど、さまざまな可能性を模索しています。
Q.あなたがもし歴史上の人物と夕食を共にすることができたら誰と?またその理由は?
孫武(『孫子の兵法』の著者)ですね。研究の世界もある種の競争の場ですが、私はあまり競争を好む性格ではないので、「戦わずして勝つ」という思想には非常に共感しています。もし夕食を共にできるなら、『孫子の兵法』に書かれていることだけでなく、研究や教育、人間関係にも通じる考え方を、直接話を聞きながら学んでみたいと思います。
Q. あなたが最後に研究室で実験を行ったのはいつですか?また、その内容は?
正直、研究室で最後に実験を行ったのがいつだったか、思い出せないほど昔のことです…。最近は、学生やスタッフを後方から支える役回りが中心になっています。
そういえば、久しぶりに学生実験でキャピラリー引きのデモンストレーションをしてみたところ、思いのほかうまくいってしまい、ついドヤ顔に…。学生に「嬉しそうな顔してる」と言われて、ちょっと恥ずかしくなりました(笑)。
Q.もしあなたが砂漠の島に取り残されたら、どんな本や音楽が必要ですか?1つだけ答えてください。
砂漠の島という極限環境で“究極のアウトドア”を楽しむなら、『Dr. Stone』という科学冒険マンガ(全巻セットで!←「1つだけ」ルールに違反!?)を持って行きたいですね。読んでいるうちに、ガラス、火薬、石けん、電池、そしてコーラまで作れるようになるかも…。まあ、現実はそう甘くないでしょうけど。
Q.次にインタビューをして欲しい人を紹介してください。
ぜひご紹介したい先生が二人います。
まずお一人目は、早稲田大学の下嶋 敦先生。シロキサン材料研究のスペシャリストで、分子設計がとにかくスマート。材料そのものだけでなく、研究スタイルまで美しく、先生のアプローチにはいつも大きな刺激を受けています。
そしてお二人目は、京都工芸繊維大学の森末 光彦先生。ポルフィリンや超分子化学をご専門とされ、その知識の幅広さには毎回圧倒されます。にこやかな笑顔の裏から繰り出される鋭い(厳しい!?)ツッコミが印象的で、深い洞察力にも毎回うならされます。
お二人とも、無機高分子研究会でご一緒している同世代の先生で、森末先生は現・運営委員長、下嶋先生は前・運営委員長を務められました。ちなみに私は“前々・運営委員長”ということで、三代にわたるバトンリレーが実現すれば嬉しく思います。
研究もお人柄も魅力あふれるお二人ですので、きっと印象深いお話が聞けることと思います。































