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海外化学者インタビュー

第70回―「ペプチドの自己組織化現象を追究する」Aline Miller教授

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第70回の海外化学者インタビューは、アライン・ミラー教授です。イギリス・マンチェスター大学のマンチェスター学際バイオセンターに所属し、自然界がどのようにして自己組織化を利用して機能性ナノマテリアルを生成するのかを理解し、これを合成システムで模倣し活用しようとしています。それではインタビューをどうぞ。

Q. あなたが化学者になった理由は?

子どもの頃、化学実験セットを与えられ、自宅の温室で色の違う液体を混ぜたり、物を熱したり、時には火をつけたりを何時間もしていたのを覚えています(両親がとても怖かったです!)。この発熱反応に対する魅力は学生時代も続き、化学と物理学のどちらを選ぶかで難しい決断を迫られました。当時は女子学生が多かったので、化学を選んでしまいました。

Q. もし化学者でなかったら、何になりたいですか?またその理由は?

新しい場所を訪れたり、異なる文化を体験するのが大好きなので、旅行作家になりたいと強く思います。しかし、もし二酸化炭素排出量のことを考え、家族に会うことも考えたら、おろさく紅茶店を開くでしょう。そうすれば、焼くのが(食べるのも)大好きなケーキを売ることができます。

Q. 概して化学者はどのように世界に貢献する事ができますか?

汚染を減らし、環境を改善しようとする現在の取り組みに加えて、健康や生活の質、そして毎日の健康を改善する上で化学者は重要な役割を果たしていると思います。すべての人が利用可能なさらなる効果的治療法の創出だけでなく、材料特性の改良やパーソナルケア製品のような小さなものづくりも、これにあてはまると思います。

Q.あなたがもし歴史上の人物と夕食を共にすることができたら誰とまたその理由は?

そうですね、明らかなのはドロシー・ホジキンでしょう。彼女は科学にこれほどまでの貢献を果たしながらも、生徒たちを鼓舞し、家族を養っていたと思うのですが、どのようにしてそれを成し遂げたのでしょうか!とはいえ一人だけを選ばないといけないなら、レオナルド・ダ・ヴィンチにします。彼は科学、解剖学、工学を含む多くの分野における優れた思想家であり、先駆者でした。何が彼に影響を与え、何が彼を鼓舞していたかを知ることは、とても興味深いことだと思えます。また、自然からインスピレーションを得て高機能な材料・システムを生み出したのも、彼が最初だったと思います。

Dorothy Crowfoot Hodgkin (1910-1994)

Q. あなたが最後に研究室で実験を行ったのはいつですか?また、その内容は?

えっ?恥ずかしながら、ついさっきです!2年ほど前にフィンランドのヘルシンキで共同研究者たちとタンパク質ハイドロゲルの低温透過型電子顕微鏡観察を行いました。私の学生が一緒でした(そして、どうすればいいかも教えてくれました!)が、それが重要かはわかりません。一方で昨晩ピザ用の生地を作ったので、最後の実験は発酵といえるかもしれませんね。

Q.もしあなたが砂漠の島に取り残されたら、どんな本や音楽が必要ですか?1つだけ答えてください。

残念ながら、仕事と二人の幼い子供に挟まれ、読書をする時間があまりなく、暗くなったら寝るべきだと思っています(冬は最高ですが、夏の長夜はあまりよくありません!)。もし一つ選ばねばならないなら、J・K・ローリングの 「ハリー・ポッター」 の最終巻です。

私の趣味は幅広いのでCDを1枚選ぶのは難しいですが、自分のルーツに忠実に、スコットランドのバンド・Deacon Blueを選ぶべきでしょう。そうすれば、故郷へ帰る道を見つけるための情熱を彼らが吹き込んでくれるでしょうから!

原文:Reactions – Aline Miller

※このインタビューは2008年6月27日に公開されました。

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cosine

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博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

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