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海外化学者インタビュー

第114回―「水生システムにおける化学反応と環境化学」Kristopher McNeill教授

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第114回の海外化学者インタビューは、クリストファー・マクネイル教授です。ミネソタ大学化学科に所属し、水生システムの環境化学を研究しています(訳注:現在はスイス連邦工科大学チューリッヒ校に所属)。それではインタビューをどうぞ。

Q. あなたが化学者になった理由は?

高校の時に片思いしてた子がいて、化学の実験中に白衣が似合うって言われたからです。冗談だったらよかったんですが。それ以前は、宇宙旅行をはじめとしたあらゆる科学的なものに、強くしかし漠とした興味を持っていました。

Q. もし化学者でなかったら、何になりたいですか?またその理由は?

音楽を聴いたり、グラフィックデザインをしたりするのが好きですが、悲しいことにそれ以外はあまり得意ではありません。もしかしたら、気取ったウェブサイトを持つ音楽ブロガーになって、広告収入で生活しているかもしれませんね。ミュージシャンにインタビューすれば、ブログに彼らのインタビューを掲載できます。うーん、大部分はあなた(訳注:Reactionsの編者)の仕事みたいに聞こえますね。

Q. 現在取り組んでいることは何ですか?そしてそれをどう展開させたいですか?

私の研究グループでは、水生システムで起こる化学反応に焦点を当てています。現在は、表層水における廃水由来の医薬品の運命(ビル・アーノルド教授と)、河口域における天然有機化合物の分解に太陽光がどのように関与しているか(ジム・コットナー教授と)、塩素系溶剤で汚染された地下水の金属ベースの反応を用いた浄化、カーボンナノチューブの環境化学(クリス・クレイマー教授と)、太陽光を媒介とした病原性ウイルスや細菌の不活性化(カーラ・ネルソン教授、アリ・ベーム教授、タマー・コーン教授と)などのプロジェクトを行っています。ご覧のように、私たちは他の研究グループとの共同研究が好きです。環境科学のほとんどの問題は、1つの研究グループや1つの研究分野が取り組むには大きすぎます。また、異なる専門知識を持った人たちとの交流はとても楽しいものです。

最近興味を持ったプロジェクトを紹介します。それは、抗菌ハンドソープの有効成分であるトリクロサンに関するものです。アメリカとカナダでは、抗菌製品を使用すると、1日に1人あたり3ミリグラムのトリクロサンが排水溝に流されてしまいます。つまり、100万人が利用する廃水処理場では、毎年約1トン(1000kg)のトリクロサンが処理場に運ばれてきます。約10%は親化合物または塩素化誘導体としてプラントを通過します。ビル・アーノルド教授と私は長年にわたり、廃水中のトリクロサンと塩素化トリクロサン誘導体が太陽光にさらされるとどうなるかを研究してきました。私たちが注目してきたのは、塩素化ダイオキシンという厄介な反応生成物です。私たちが最近取り組んでいるのは、トリクロサンが水生環境への塩素化ダイオキシンの重大な(あるいは取るに足りない)発生源となっている範囲を特定することです。この作業は現在進行中ですので、何かわかったかどうか、確認していってください。

Q.あなたがもし歴史上の人物と夕食を共にすることができたら誰と?またその理由は?

レイチェル・カーソンです。彼女は間違いなく、現代の環境運動と私の研究分野である環境化学を立ち上げた最重要人物です。『沈黙の春』にも強く表れているとおり、ほとんどの人は彼女の鳥への興味を思い浮かべるでしょう。しかし彼女が本当に好んでいるのは水生システムであり、私と同じです。彼女はあまり会話が得意ではなかったので、夕食の場には適さないかもしれません。私なら、お弁当を持って海岸沿いのハイキングをアレンジしようと思います。

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Q. あなたが最後に研究室で実験を行ったのはいつですか?また、その内容は?

昨年の夏、何人かの大学院生の助けを借りて、フルフリルアルコールの消失を追跡することで、ろ過の有無による、スペリオル湖水中の一重項酸素の定常濃度差を測定しようと試みました。違いは見られませんでした。さらに興味深いのは、この実験が美しく晴れた日に、スペリオル湖の真ん中でのR/Vブルーヘロン号トップデッキで行われたことです。フィールドワークは、科学の仕事で手を汚す数少ない機会の一つです。仕込みから精製まで含めて私自身が合成した最後の分子は、おそらく大学院生の時のビス(トリメチルホスフィン)ジルコノセンだったと思います。

Q.もしあなたが砂漠の島に取り残されたら、どんな本や音楽が必要ですか?1つだけ答えてください。

何度も何度も聴きたくなるアルバムといえば、Radioheadの『OK Computer』が思い浮かびます。聴きたくて聴くときも、カジュアルに聴くときも、起きているときも、寝ているときも、走っているときも、島でのカクテルパーティーの気分を盛り上げるときにも適しています。

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本はBorgesの『Labyrinth』を持っていきます。彼の短編コレクションであり、あまりにも濃密で果てしなく面白いので、本当にそれを理解するには、むしろ無人島に追放されなくてはならないかもしれません。

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Q.「Reactions」でインタビューしてほしい化学者と、その理由を教えてください。

オリバー・サックスはいつも面白いことを言います。彼は化学者ではありませんが、化学者の魂を持っていることは間違いありません。私はキャロライン・ベルトッツィとの会話をいつも楽しんできましたが、彼女の音楽や文学の好みを知らないことに今気付きました。

 

原文:Reactions –  Kristopher McNeill

※このインタビューは2009年5月1日に公開されました。

 

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cosine

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博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

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