[スポンサーリンク]

一般的な話題

癸巳の年、世紀の大発見

[スポンサーリンク]

 

皆様、明けましておめでとうございます。2013年、今年の干支癸巳(みずのとみ、きし)ですね。(みずのと、き)は、陰陽五行説で水の陰であり、ここから日本では「みずのと」(水の弟)とも言うようです。(み、し)はご存知「へび」。蛇は穀倉を荒らす鼠を食べる有難い動物で、古来から畏怖と崇拝の対象です。長い体は長寿に通じ、脱皮することが再生や生命力を示すとされます。

干支は十干十二支で60年周期で同じ干支がやってきます。前回の癸巳、60年前は1953年となりますね。そして1953年といえば、科学史上に惨然と輝く世紀の大発見『DNAの分子構造』がワトソン、クリックにより発表された年であります。

癸巳の年の始まりにちなんで、ワトソンらの偉業を振り返ってみましょう。

「DNAの分子構造」の解明

ジェームズ・ワトソンとフランシス・クリックは、アデニン (A) 、チミン (T)、グアニン (G) 、シトシン (C)の四塩基とデオキシリボース(糖)とリン酸基の分子模型を使い、「DNAの分子構造は2本のDNA鎖がらせん状に連なった構造である」ことを解明しました。この発見は1953年4月25日に発行されたNature,171巻1356号にて発表されました。たった1ページちょっとの論文。

Watson, J.D. & Crick, F.H.C., “Molecular structure of Nucleic Acids: A Structure for Deoxyribose Nucleic Acid’, Nature, 171, 737-738 (1953).

この研究は後の分子生物学の研究をもたらしたことから、9年後の1962年にワトソン、クリックはモーリス・ウィルキンスとともにノーベル生理学・医学賞を受賞しています。

 

ワトソン著『2重らせん』

受賞の6年後1968年に、ワトソンは発見までのいきさつをナマナマしく記したドキュメント “The Double Helix” (二重らせん) を出版し、世界的なベストセラーとなりました。

彼は「大きな賞をとったら本を出す」と予め考え、日々の記録をとっていたそうです。なるほど、流石のリアリティー。まだ20代の若い研究者である彼の、野心、日々の苦悩、競争の焦り、発見の感動などなど、読んで熱くなります。

ここに記されたのは綺麗事ではなく、科学界にも名誉欲が渦巻いており、科学者達はライバルに先んじようとあの手この手で成功をつかみ取ろうという姿でした。

「ある考えを危険をおかして実行してみようともしない、鳴かず飛ばずの大学教授で終わるより、有名になった自分を想像したほうが、楽しいに決まっている」

ワトソンは、ボスに隠れて研究をする、データを盗み見る、未発表論文の内容を知ろうとするなど、姑息な手段をこれでもかと講じています。あまりに正直に記したことで、世紀の大発見であるDNAの分子構造は、実は剽窃事件とも捉えられ、賛否両論を巻き起こしました。

 

TED Talks

TED2005のオープニングを飾ったワトソンの講演を動画で見られます(字幕付きです、ご安心を)。生い立ち、DNA構造解明、そしてDNA研究の今後について語っています。ジョークまじりで会場は爆笑です。

TED Talks:ジェームズ・ワトソンが語る「DNA構造解明にいたるまで」

遺伝学者であるワトソンは、提案した分子構造を有機化学者に見せに行き、構造の誤りを指摘されます。その翌日、2時間足らずで一挙にDNA分子構造が解明されました。
成功の秘訣として「その場で自分が一番できる人間にならないこと」と語っています。つまり、各分野で自分より優れた人間を知っておき、相談できるようにしておくという事です。

ところでヘビ年のいま、DNA2重らせん構造を見ていると2匹のヘビが絡みあってるように見えてきちゃいました。当時DNA研究をやっている東洋人が居て、「今年はヘビ年だったなぁ」とかふと思ったらば、もう少し早く構造が解けたかも?なんてw

さてさて、今年の癸巳はどんな発見が待っているんでしょうか?今から楽しみですね。

 

関連書籍

 

関連記事

  1. 有機合成化学協会誌2023年1月号:[1,3]-アルコキシ転位・…
  2. 2残基ずつペプチド鎖を伸長できる超高速マイクロフロー合成法を開発…
  3. リンダウ会議に行ってきた①
  4. ウクライナ危機と創薬ビルディングブロック –エナミン社のケースよ…
  5. サイエンスアゴラの魅力を聞くー「生活環境化学の部屋」本間先生
  6. 開催間近!ケムステも出るサイエンスアゴラ2013
  7. あなたの天秤、正確ですか?
  8. 留学せずに英語をマスターできるかやってみた(7年目)(留学後編)…

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. 女子の強い味方、美味しいチョコレート作りを助ける化合物が見出される
  2. 第115回―「分子機械と天然物の化学合成」Ross Kelly教授
  3. 有機化学1000本ノック【命名法編】【立体化学編】
  4. 三菱化学グループも石化製品を値上げ、原油高で価格転嫁
  5. ヤモリの足のはなし ~吸盤ではない~
  6. 理系女性の人生設計ガイド 自分を生かす仕事と生き方
  7. 第9回 野依フォーラム若手育成塾
  8. 複雑な化合物を効率よく生成 名大チーム開発
  9. メタンハイドレートの化学 ~その2~
  10. 化学者が麻薬を合成する?:Breaking Bad

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2013年1月
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
28293031  

注目情報

最新記事

5/15(水)Zoom開催 【旭化成 人事担当者が語る!】2026年卒 化学系学生向け就活スタート講座

化学系の就職活動を支援する『化学系学生のための就活』からのご案内です。化学業界・研究職でのキャリ…

フローマイクロリアクターを活用した多置換アルケンの効率的な合成

第610回のスポットライトリサーチは、京都大学大学院理学研究科(依光研究室)に在籍されていた江 迤源…

マリンス有機化学(上)-学び手の視点から-

概要親しみやすい会話形式を用いた現代的な教育スタイルで有機化学の重要概念を学べる標準教科書.…

【大正製薬】キャリア採用情報(正社員)

<求める人物像>・自ら考えて行動できる・高い専門性を身につけている・…

国内初のナノボディ®製剤オゾラリズマブ

ナノゾラ®皮下注30mgシリンジ(一般名:オゾラリズマブ(遺伝子組換え))は、A…

大正製薬ってどんな会社?

大正製薬は病気の予防から治療まで、皆さまの健康に寄り添う事業を展開しています。こ…

一致団結ケトンでアレン合成!1,3-エンインのヒドロアルキル化

ケトンと1,3-エンインのヒドロアルキル化反応が開発された。独自の配位子とパラジウム/ホウ素/アミン…

ベテラン研究者 vs マテリアルズ・インフォマティクス!?~ 研究者としてMIとの正しい向き合い方

開催日 2024/04/24 : 申込みはこちら■開催概要近年、少子高齢化、働き手の不足…

第11回 慶應有機化学若手シンポジウム

シンポジウム概要主催:慶應有機化学若手シンポジウム実行委員会共催:慶應義塾大…

薬学部ってどんなところ?

自己紹介Chemstationの新入りスタッフのねこたまと申します。現在は学部の4年生(薬学部)…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP