[スポンサーリンク]

化学者のつぶやき

スーパーなパーティクル ースーパーパーティクルー

[スポンサーリンク]

マーケットの凄いものがスーパーマーケット。

銭湯の凄いものがスーパー銭湯。

マリオの中で凄いマリオがスーパーマリオで、サイヤ人の凄いものがスーパーサイヤ人。

そんなものはみんなが知っていることだと想います。

では問題です凄いパーティクルってなんだとおもいますか?

 

答えはスーパーパーティクルです。(ででん!)

 

化学の用語で、スーパー(Super)もしくはスプラ(Supra)という接頭語は、1つ次元の上のものを指すことがあります。例えば分子はMoleculeですが、その分子が連なって、1つ大きな次元でその構造を見るとき、Supra-Molecule(スプラモレキュール、超分子)となります。

ここで問題です。ナノパーティクルが連なって、より大きな構造のパーティクルをつくるとき、それはどのような呼称になるとなるとおもいますか?

 

答えはスーパーパーティクルです。(ででん!)

 

今回紹介する研究は2012年にサイエンスに掲載された、ナノロッドによるスーパーパーティクルの論文です。

“Self-Assembled Colloidal Superparticles from Nanorods”

Tie Wang, Jiaqi Zhuang, Jared Lynch, Ou Chen, Zhongliang Wang, Xirui Wang, Derek LaMontagne, Huimeng Wu, Zhongwu Wang, Y. Charles Cao

Science 2012, 338, 358-363. DOI: 10.1126/science.1224221

筆者らは量子ドットであるCdSナノロッドをビルディングブロックに、様々なサイズ、形のスーパーパーティクルを作成することに成功しています。これらのスーパーパーティクルの実用に使える例として、筆者らは光の異方性のある蛍光体材料の作成に成功しています。

 

SuperPicture 1.png

原著論文より。スーパーパーティクルのTEM(電子顕微鏡)の写真。様々なサイズが自在に作れる。

とはいってもこの論文の白眉は、合成の実験結果と、エネルギー計算の見事な一致にあります。合成はビルディングブロックを貧溶媒中で分解させ、そのなかで結晶化させているのですが、この合成ルートは熱力学的に最も安定な構造を取ると仮定されています。そしてその結果、非常に細かい構造まで熱力学に従って安定な構造をとることが計算からも導かれていて、この仮定の正しさを結論づけています。

 

SuperPicture 2.png

スーパーパーティクルの構造と、そのとる構造のエネルギーの計算結果。相当細かい構造までエネルギー計算どおりになっていて、熱力学的に規定されていることが示唆されている。

 

まさに基礎的なサイエンスが世界を支配している部分が露呈しているのを目撃することのできる論文です。ナノパーティクルの研究はこういうのが電子顕微鏡で直接観察できるのが感動的です。体操でいうとスーパーE難度の着地がピタッと決まる感じ、水泳でいうと「超(スーパー)気持ちいい」(←古い)という感じですね。

関連リンク

やすたか

投稿者の記事一覧

米国で博士課程学生

関連記事

  1. 最強の文献管理ソフトはこれだ!
  2. イオンの出入りを制御するキャップ付き分子容器の開発
  3. 2013年就活体験記(1)
  4. 有機合成化学協会誌2025年6月号:カルボラン触媒・水中有機反応…
  5. プロ格闘ゲーマーが有機化学Youtuberをスポンサー!?
  6. ケムステV年末ライブ2021開催報告! 〜今年の分子 and 人…
  7. Gilbert Stork最後の?論文
  8. 【6月開催】第九回 マツモトファインケミカル技術セミナー 有機金…

注目情報

ピックアップ記事

  1. ジョアン・スタビー JoAnne Stubbe
  2. 製薬系企業研究者との懇談会(オンライン)
  3. 磯部 寛之 Hiroyuki Isobe
  4. 有機触媒によるトリフルオロボレート塩の不斉共役付加
  5. 市販の化合物からナノグラフェンライブラリを構築 〜新反応によりナノグラフェンの多様性指向型合成が可能に〜
  6. 均一系水素化 Homogeneous Hydrogenaton
  7. 第25回「ペプチドを化学ツールとして細胞を操りたい」 二木史朗 教授
  8. インタラクティブ物質科学・カデットプログラム第一回国際シンポジウム
  9. リンダウ会議に行ってきた③
  10. 核のごみを貴金属に 現代の錬金術、実験へ

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2013年2月
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728  

注目情報

最新記事

7th Compound Challengeが開催されます!【エントリー〆切:2026年03月02日】 集え、”腕に覚えあり”の合成化学者!!

メルク株式会社より全世界の合成化学者と競い合うイベント、7th Compound Challenge…

乙卯研究所【急募】 有機合成化学分野(研究テーマは自由)の研究員募集

乙卯研究所とは乙卯研究所は、1915年の設立以来、広く薬学の研究を行うことを主要事業とし、その研…

大森 建 Ken OHMORI

大森 建(おおもり けん, 1969年 02月 12日–)は、日本の有機合成化学者。東京科学大学(I…

西川俊夫 Toshio NISHIKAWA

西川俊夫(にしかわ としお、1962年6月1日-)は、日本の有機化学者である。名古屋大学大学院生命農…

市川聡 Satoshi ICHIKAWA

市川 聡(Satoshi Ichikawa, 1971年9月28日-)は、日本の有機化学者・創薬化学…

非侵襲で使えるpH計で水溶液中のpHを測ってみた!

今回は、知っているようで知らない、なんとなく分かっているようで実は測定が難しい pH計(pHセンサー…

有馬温泉で鉄イオン水溶液について学んできた【化学者が行く温泉巡りの旅】

有馬温泉の金泉は、塩化物濃度と鉄濃度が日本の温泉の中で最も高い温泉で、黄褐色を呈する温泉です。この記…

HPLCをPATツールに変換!オンラインHPLCシステム:DirectInject-LC

これまでの自動サンプリング技術多くの製薬・化学メーカーはその生産性向上のため、有…

MEDCHEM NEWS 34-4 号「新しいモダリティとして注目を浴びる分解創薬」

日本薬学会 医薬化学部会の部会誌 MEDCHEM NEWS より、新たにオープン…

圧力に依存して還元反応が進行!~シクロファン構造を活用した新機能~

第686回のスポットライトリサーチは、北海道大学大学院理学研究院化学部門 有機化学第一研究室(鈴木孝…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP