[スポンサーリンク]

E

エヴァンスアルドール反応 Evans Aldol Reaction

[スポンサーリンク]

概要

オキサゾリジノン不斉補助基をもつ求核剤をアルデヒドに反応させ、不斉アルドール反応を行う手法。フェニルアラニン、バリン、エフェドリン由来の不斉補助基を用いる手法がもっともポピュラー。当量のキラル源を必要とし、補助基の脱着過程が必要になる。しかしながら非常に信頼性が高く、通常はメリットの方が遙かに大きい。

特にボロントリフラートを用いる”Evans-syn”の手法は、選択性発現の例外がほとんど無く、炭素-炭素結合をほぼ完璧な立体選択性にて形成できる。大量合成も可能なため、天然物合成、特に鎖状・マクロライド系化合物の不斉合成研究には、ほぼ定石扱いとして用いられる。

オキサゾリジノン補助基はアルドール反応以外にも、共役付加反応Diels-Alder反応などの不斉化にも有用である。

基本文献

  • Evans, D. A.; Vogel, E.; Nelson, J. V. J. Am. Chem. Soc. 1979, 101, 6120. DOI: 10.1021/ja00514a045
  • Evans, D. A.; Bartroli, J.; Shih, T. L. J. Am. Chem. Soc. 1981, 103, 2127. DOI: 10.1021/ja00398a058
  • Mechanistic studies: Evans, D. A.; Nelson, J. V.; Vogel, E.; Taber, T. R. J. Am. Chem. Soc. 1981, 103, 3099. DOI: 10.1021/ja00401a031
<review>
  • Evans, D. A.; Takacs, J. M.; McGee, L. R.; Ennis, M. D.; Mathre, D. J.; Bartroli, J. Pure Appl. Chem. 1981, 53, 1109. doi:10.1351/pac198153061109
  • Evans, D. A.; Gage, J. R. Org. Synth. 1990, 68, 83. DOI: 10.15227/orgsyn.068.0083
  • Evans, D. A. Aldrichimica Acta 1982, 15, 23. [website]
  • Kim, B. M. et al. Comp. Org. Syn. 1991, 2, 239.
  • Heravi, M. M.; Zadsirjan, V. Tetrahedron: Asymmetry 2013, 24, 1149. doi:10.1016/j.tetasy.2013.08.011
<oxidazolidinone chiral auxiliary in organic synthesis>
  • Gnas, Y.; Glorius, F. Synthesis 2006, 1899. DOI: 10.1055/s-2006-942399
  • Heravi, M. M.; Zadsirjan, V.; Farajpour, B. RSC Adv. 2016, 6, 30498. DOi:10.1039/C6RA00653A
  • Davies, S. G.; Fletcher, A. M.; Roberts, P. M.; Thomson, J. E. Org. Biomol. Chem. 2019, 17, 1322. DOI:10.1039/C8OB02819B

反応機構

ボロントリフラート(ルイス酸)によって活性化されたイミドα位プロトンが、アミン塩基によって引き抜かれ、Z体のボロンエノラートが生成する。これとアルデヒドが6員環遷移状態をとって反応し、syn体の生成物(Evans-syn)を与える。

キラル補助基はカルボニル基同士の双極子反発を避けるため、図の[ ]内に示す方向を向いた状態で反応すると考えられている。(参考:J. Am. Chem. Soc. 1975, 97, 5811; J. Am. Chem. Soc. 1981, 103, 3099)

反応例

Stereodivergentな手法への展開

ルイス酸・キラル補助基の組み合わせを変更することで、考え得る全ての立体化学を持つEvansアルドール体が合成可能なことが報告されている[1-4]。この立体選択性は、取り得る六員環遷移状態の形状の相違で説明される。すなわち、補助基の種類およびルイス酸キレート能の違いによって、補助基の立体配座、遷移状態の環状/線形性が異なってくる。


アセテート型ドナーでは立体選択性が発現しないため、α位に硫黄を持つドナーを反応させ、後ほど脱硫するという迂回法が用いられる。[5]

キラル補助基の変換

様々な官能基に容易に変換可能。特にWeinrebアミドへと変換する条件は有用性が高い。加水分解においてLiOHを用いるとオキサゾリジノンの開環が併発してしまうため、LiOOHの使用が推奨される[6]。

全合成への応用

鎖状化合物の骨格構築+立体制御を行う目的には、現在でも定番的に使われる。数はその応用例[7]である。ハイライトした不斉点と炭素-炭素結合は、Evansアルドール法にて構築されている。


ノバルティスのプロセス化学研究チームは、抗腫瘍活性天然物DiscodermolideをEvansアルドール反応を鍵工程とした化学合成によって60グラムもの量を合成し、臨床試験に供給した[8]。25kgスケールでも反応は実施可能である。

関連動画

参考文献

  1. Walker, M. A.; Heathcock, C. H. J. Org. Chem. 1991, 56, 5747. DOI: 10.1021/jo00020a006
  2. (a) Crimmins, M. T.; King, B. W.; Tabet, A. E. J. Am. Chem. Soc. 1997, 119, 7883. doi:10.1021/ja9716721 (b) Crimmins, M. T.; Chaudhary, K. Org. Lett. 2000, 2, 775. doi:10.1021/ol9913901 (c) Crimmins, M. T.; King, B. W.; Tabet, E. A.; Chaudhary, K. J. Org. Chem. 2001, 66, 894. doi: 10.1021/jo001387r
  3. Evans, D. A.; Tedrow, J. S.; Shaw, J. T.; Downey, C. W. J. Am. Chem. Soc. 2002, 124, 392. doi: 10.1021/ja0119548
  4. Evans, D. A.; Downey, W. C.; Shaw, J. T.; Tedrow, J. S. Org. Lett. 2002, 4, 1127. DOI: 10.1021/ol025553o
  5. Evans, D. A.; Bartroli, J.; Shih, T. L. J. Am. Chem. Soc. 1981, 103, 2127. DOI: 10.1021/ja00398a058
  6. Evans, D. A.; Britton, T. C.; Ellman, J. A. Tetrahedron Lett. 1987, 28, 6141. doi:10.1016/S0040-4039(00)61830-0
  7. Heravi, M. M.; Zadsirjan, V. Tetrahedron: Asymmetry 2013, 24, 1149. doi:10.1016/j.tetasy.2013.08.011
  8. Mickel, S. J. et al. Org. Process Res. Dev. 2004, 8, 92, 101, 107, 113 and 122.

関連反応

関連書籍

[amazonjs asin=”3527307141″ locale=”JP” title=”Modern Aldol Reactions, 2 Volume Set”][amazonjs asin=”B07MK5SKFN” locale=”JP” title=”Modern Methods in Stereoselective Aldol Reactions (English Edition)”]

外部リンク

関連記事

  1. カラッシュ・ソスノフスキ-酸化 Kharasch-Sosnovs…
  2. クラプコ脱炭酸 Krapcho Decarboxylation
  3. ハウザー・クラウス環形成反応 Hauser-Kraus Annu…
  4. フィッシャー オキサゾール合成 Fischer Oxazole …
  5. フロインターベルク・シェーンベルク チオフェノール合成 Freu…
  6. バックワルド・ハートウィグ クロスカップリング Buchwald…
  7. ミズロウ・エヴァンス転位 Mislow-Evans Rearra…
  8. 硤合不斉自己触媒反応 Soai Asymmetric Autoc…

注目情報

ピックアップ記事

  1. 化学者がMidjourneyで遊んでみた
  2. 第68回「表面・界面の科学からバイオセラミックスの未来に輝きを」多賀谷 基博 准教授
  3. TEMPOよりも高活性なアルコール酸化触媒
  4. フリーデル・クラフツ アシル化 Friedel-Crafts Acylation
  5. 第99回日本化学会年会 付設展示会ケムステキャンペーン Part III
  6. Greene’s Protective Groups in Organic Synthesis 5th Edition
  7. 韮山反射炉
  8. ジョン・ハートウィグ John F. Hartwig
  9. ハイブリッド触媒系で複雑なシリルエノールエーテルをつくる!
  10. 公募開始!2020 CAS Future Leaders プログラム(2020年1月26日締切)

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2009年6月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930  

注目情報

最新記事

第61回Vシンポ「中分子バイオ医薬品分析の基礎と動向 ~LCからLC/MSまで、研究現場あるあるとその対処~」を開催します!

こんにちは、Macyです。第61回Vシンポのご案内をさせていただきます。今回は、Agilen…

水分はどこにあるのか【プロセス化学者のつぶやき】

前回まで1. 設定温度と系内の実温度のお話2. 温度値をどう判断するか3. 反応操作をし…

「MI×データ科学」コース 〜LLM・自動実験・計算・画像とベイズ最適化ハンズオン〜

1 開講期間2026年5月26日(火)、29日(金) 計2日間2 コースのねらい、特色近…

材料の数理モデリング – マルチスケール材料シミュレーション –

材料の数理モデリング概要材料科学分野におけるシミュレーションを「マルチスケール」で理解するた…

第59回天然物化学談話会@宮崎(7/8~10)

ごあいさつ天然物化学談話会は、全国の天然物化学および有機合成化学を研究する大学生…

トッド・ハイスター Todd K. Hyster

トッド・カート・ハイスター(Todd Kurt Hyster、1985年10月10日–)はアメリカ出…

“最難関アリル化”を劇的に加速する固定化触媒の開発

第 703回のスポットライトリサーチは、横浜国立大学大学院 理工学府 博士課程前期で…

「ニューモダリティと有機合成化学」 第5回公開講演会

従来の低分子、抗体だけでなく、核酸、ペプチド、あるいはその複合体(例えばADC(抗体薬物複合体))、…

溶融する半導体配位高分子の開発に成功!~MOFの成形加工性の向上に期待~

第702回のスポットライトリサーチは、関西学院大学理学部(田中研究室)にて助教をされていた秋吉亮平 …

ミン・ユー・ガイ Ming-Yu Ngai

魏明宇(Ming-Yu Ngai、1981年X月XX日–)は米国の有機化学者である。米国パデュー大学…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP