[スポンサーリンク]

海外化学者インタビュー

第152回―「PETイメージングに活用可能な高速標識法」Philip Miller講師

[スポンサーリンク]

第152回の海外化学者インタビューは、フィリップ・ミラー講師です。インペリアル・カレッジ・ロンドン化学科に所属し、陽電子放出断層撮影法(PETイメージング)分野における放射性同位体元素の応用を指向した高速化学の開発に取り組んでいます。それではインタビューをどうぞ。

Q. あなたが化学者になった理由は?

幼い頃から科学に興味を持っていましたが、化学に興味を持ち始めたのは高校生になってからでした。そんな私の興味に火をつけたのは火事でした!科学クラスの先生は、とんでもないデモンストレーションを沢山見せてくれました。アルカリ金属の反応やネズミの解剖など、面白く実践的なことを。彼が行ってくれたリン単体の反応性デモは、特に忘れられないものです。リンの塊を主棒から切り離す際に、リンを実験台から落としてしまいました、炎上して小火になってしまい、彼もクラスのみんなもびっくりました。幸いにも怪我人は出ませんでしたが、その後、彼の姿をあまり見ることができなくなったのは本当に残念でした。

Q. もし化学者でなかったら、何になりたいですか?またその理由は?

自分のことを、ちょっとしたアーティストだといつも思っていました。アートは他にない方法で心に届いて、人々にインスピレーションを与えることができます。

Q. 現在取り組んでいることは何ですか?そしてそれをどう展開させたいですか?

現在は炭素11の放射化学分野で、新しくとてもエキサイティングな化学に取り組んでいます。炭素11は陽電子を放出する同位体で、PETイメージング用の放射性トレーサー分子を作るのに使われます。この分野の課題は、炭素11の半減期の短さ(わずか20分!)にほぼ集約されており、非常に巧妙かつ迅速な反応化学を行わなくてはなりません。この1年間で取り組んだのは、炭素11放射性標識の新手法を開発することでした。これによって標識プロセスが格段に容易になり、PETイメージング用の新たな炭素11トレーサーが数々生まれることを期待しています。最終的には、アルツハイマー病やパーキンソン病などに対する新たな疾病治療法の発見と開発にインパクトを与えることができればと思っています。

Q.あなたがもし、歴史上の人物と夕食を共にすることができたら誰と?またその理由は?

ウィンストン・チャーチルです。ロンドン中心部のパーラメント・スクエアにある彼の堂々たる銅像の前を毎日のように自転車で通り過ぎるのですが、成功確率が非常に低いと思われた時代に、正しきことのために立ち上がって、歴史の流れを良い方向に変えた人がいることに感銘を受けています。また彼は、ちょっとしたやんちゃ者で、お酒が好きだったとも聞いています!

Q. あなたが最後に研究室で実験を行ったのはいつですか?また、その内容は?

最近は、有機ビスマス試薬に対してパラジウム触媒によるカルボニル化(一酸化炭素の挿入)をいくつか行い、アルキルビスマスと一酸化炭素および求核剤をカップリングできるかどうか試しています。これは数日前のことですが、これらの反応結果はすぐにお知らせできるでしょう!

Q.もしあなたが砂漠の島に取り残されたら、どんな本や音楽が必要ですか?1つだけ答えてください。

本はジョセフ・ヘラーの『Catch-22』にします。ちょうど読み終えたばかりですが、また読みたいと思っているところです。

[amazonjs asin=”4151200835″ locale=”JP” title=”キャッチ=22〔新版〕(上) (ハヤカワepi文庫 ヘ)”]

音楽はU2の『Achtung Baby』にします。自分が初めて得たアルバムで、久しぶりに聴きたくなりました。

[amazonjs asin=”B005ISK77U” locale=”JP” title=”アクトン・ベイビー~デラックス・エディション”]

Q.「Reactions」でインタビューしてほしい化学者と、その理由を教えてください。

クイーンズ大学ベルファスト校化学科のA・P・.デ=シルバ教授です。幸運にも、ベルファスト校の学部生時代に彼の講義を受けることが出来たのですが、彼は非常に熱心で、刺激的であり、親しみやすい先生だと感じていました。

 

原文:Reactions – Philip Miller

※このインタビューは2011年4月22日に公開されました。

関連動画

Avatar photo

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. 第七回 生命を化学する-非ワトソン・クリックの世界を覗く! ー杉…
  2. 第69回―「炭素蒸気に存在する化学種の研究」Harold Kro…
  3. 第55回「タンパク質を有機化学で操る」中村 浩之 教授
  4. 第71回―「化学のリーディングジャーナルを編集する」Stephe…
  5. 第77回―「エネルギーと生物学に役立つ無機ナノ材料の創成」Cat…
  6. 第44回―「N-ヘテロ環状カルベン錯体を用いる均一系触媒開発」S…
  7. 第51回―「超分子化学で生物学と材料科学の境界を切り拓く」Car…
  8. 第173回―「新たな蛍光色素が実現する生細胞イメージングと治療法…

注目情報

ピックアップ記事

  1. 免疫の生化学 (1) 2018年ノーベル医学賞解説
  2. スルホニルアミノ酸を含むペプチドフォルダマーの創製
  3. 広大すぎる宇宙の謎を解き明かす 14歳からの宇宙物理学
  4. 第58回「新しい分子が世界を変える力を信じて」山田容子 教授
  5. マイクロ波を用いた革新的製造プロセスと電材領域への事業展開 (ナノ粒子合成、フィルム表面処理/乾燥/接着/剥離、ポリマー乾燥/焼成など)
  6. ケック ラジカルアリル化反応 Keck Radicallic Allylation
  7. 複雑な化合物を効率よく生成 名大チーム開発
  8. 「発明の対価」8億円求め提訴=塩野義製薬に元社員-大阪地裁
  9. 2010年日本化学会各賞発表-学会賞-
  10. 鍛冶屋はなぜ「鉄を熱いうちに」打つのか?

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2021年5月
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31  

注目情報

最新記事

有機合成化学協会誌2024年9月号:ホウ素媒介アグリコン転移反応・有機電解合成・ヘキサヒドロインダン骨格・MHAT/RPC機構・CDC反応

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2024年9月号がオンライン公開されています。…

初歩から学ぶ無機化学

概要本書は,高等学校で学ぶ化学の一歩先を扱っています。読者の皆様には,工学部や理学部,医学部…

理研の研究者が考える“実験ロボット”の未来とは?

bergです。昨今、人工知能(AI)が社会を賑わせており、関連のトピックスを耳にしない日はないといっ…

【9月開催】 【第二期 マツモトファインケミカル技術セミナー開催】有機金属化合物 オルガチックスを用いたゾルゲル法とプロセス制御ノウハウ①

セミナー概要当社ではチタン、ジルコニウム、アルミニウム、ケイ素等の有機金属化合物を“オルガチック…

2024年度 第24回グリーン・サステイナブル ケミストリー賞 候補業績 募集のご案内

公益社団法人 新化学技術推進協会 グリーン・サステイナブル ケミストリー ネットワーク会議(略称: …

ペロブスカイト太陽電池開発におけるマテリアルズ・インフォマティクスの活用

開催日時 2024.09.11 15:00-16:00 申込みはこちら開催概要持続可能な…

第18回 Student Grant Award 募集のご案内

公益社団法人 新化学技術推進協会 グリーン・サステイナブルケミストリーネットワーク会議(略称:JAC…

杉安和憲 SUGIYASU Kazunori

杉安和憲(SUGIYASU Kazunori, 1977年10月4日〜)は、超分…

化学コミュニケーション賞2024、候補者募集中!

化学コミュニケーション賞は、日本化学連合が2011年に設立した賞です。「化学・化学技術」に対する社会…

相良剛光 SAGARA Yoshimitsu

相良剛光(Yoshimitsu Sagara, 1981年-)は、光機能性超分子…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP