[スポンサーリンク]

化学者のつぶやき

スペクトルから化合物を検索「KnowItAll」

[スポンサーリンク]

有機化合物を取り扱っている研究者は日頃から、「スペクトルから化合物の構造を推測する」ことを行っていると思います。

学部で習った知識を研究室に所属後、大学院や実践の研究で洗練してようやく一人前にスペクトルが読めるようになりますね。つまり、スペクトルを読めるようになるためには、そこそこ時間がかかり、それなりに有機化合物を取り扱っていないといけないわけです。もちろん化合物のスペクトルを与えられても、いままで取り扱ったことのない構造ですと、少し戸惑うだけでなく、文献を調べ、構造を推測するには時間が借ります。

なんとかして、スペクトルから構造を読み解くことを自動化できないでしょうか。

残念ながら現在では自動化は困難ですが、

スペクトルにて検索し、類似するスペクトルを持つ化合物などの情報を取得できるデータベース

はあります。

それが今回紹介する「KnowItAll」です。

スペクトルを検索「KnowItAll」とは

この製品は以前紹介した無料のオンラインスペクトルデータベース「SpectraBese」を提供するバイオラッド(現在はワイリー社)の製品版です。

バイオラッド(現在はワイリー社)はスペクトルデータベースのパイオニアであり、 IR、Raman、NIR、NMR、MS、UV-Vis の高品質スペクトルデータを提供しています。その中でも、IRやラマンスペクトルが圧倒的に収録数が大きいということでそちらを紹介したいと思います(記事の流れからNMRを想定していた方すみません)。

主な特徴としては、以下の4点。
  1. 最大級のIR、Ramanスペクトルデータベースであること:スペクトルの解釈の際に、研究者が文献やネットなどで情報収集をおこなっていた作業時間を大幅に削減することが出来ます。
  2. 検索の際に重要となるスペクトル補正を支援する「最適化」機能があること:経験の差に左右されない検索結果を研究者に提供できます。
  3. 混合物の可能性までを一度に検索するIDエキスパートがあること:一度に解析し、一目で確認できるので、解析の方向性を見出す際に利用されています。
  4. 検索スピードが速いこと:スペクトルを解釈する際には一度の検索では分からないこともあり、検索アルゴリズムの変更や、ピークに着目した検索、混合物検索など複数回検索を行う状況もよくあります。その際、検索スピードが遅い場合(例えば検索に5分かかるなど)は、都度待ち時間が発生するので、研究者思考を中断するなど、解析作業低下を招きます。

それぞれ、少しだけ中身をみていきましょう。

1.最大級のIR、Ramanスペクトルデータベース

KnowItAllスペクトルライブラリーは、IRは26万件超、ラマンは、2万5千件以上のスペクトルを提供しているそうです。日々、測定と追加は続けているため、スペクトルデータは増えていきますが、常にKnowItAllソフトウェアがインターネッ ト経由でデータベースを自動更新しているとのことです。

1つ1つの化合物に対して、文献などで探していたスペクトルが一挙にデータベースになっているだけでも、作業時間の削減になりますね。もちろん化合物の構造から目的のIR/ラマンスペクトルを表示させることもできますし、読み込んだ各種スペクトルから収録されているスペクトルの類似性を割り出し、近い構造であるスペクトルを提案してくれます。

ラマンデータベースのイメージ(出典:バイオラッドジャパン(現在はワイリー社))

 

2. 検索の際に重要となるスペクトル補正を支援する「最適化」機能があること

ただ、手持ちのスペクトルからスペクトルを検索する際には、化学的な情報を考慮して検索しているわけではないです。数学的に検索するため、きちんと測定したデータでないとなかなかヒットしません。スペクトルや検索方法、装置の違いによっては、全く異なる構造が検索される可能性もあります。これでは全く使い物になりませんね。

その際に重要なことが、「最適化(補正)」になります。KnowItAllソフトウェアには以下の補正機能がついており、正確に照合することが可能であり、誰でも同じ様な検索結果がでるようになっているそうです。

  • Baseline correction
  • ATR correction
  •  X-axis shift
  •  Y-axis shift
  • Vertical clipping
  • Intensity distortion
  • Raman intensity distortion

例えば、以下のスペクトルデータを補正なしに検索すると、マッチ率が79.3%。実に50件以上の類似化合物が提供されます。それを補正をかけてあげることによって、マッチ率を98.3%まで向上させることが可能となりました。結果的に1件完全にマッチしたスペクトルと構造が提供されます

補正のイメージ(出典:バイオラッドジャパン(現在はワイリー社))

 

3.混合物の可能性までを一度に検索するIDエキスパート

もちろん試料が純品である保証はありません。おそらくこの製品のユーザーは、かなり混合物の試料のスペクトルを解析しなければならない人も多いことでしょう。

KnowItAll:IDエキスパートツール(出典:バイオラッドジャパン(現在はワイリー社))

 

そこで活躍するのが、IDエキスパートツール。スペクトル検索、混合物検索(2~5成分)、ピーク検索、官能基解析を一度で実施。 網羅的な検索結果を提供してくれます。

4.検索スピードが速いこと

最後にもっとも重要な点、「検索スピード」です。どんなに大量のデータを含んでいるデータベースであっても、検索に時間がかかるようでしたら余り使う気持ちになれません。

どのくらい速いのか?体験してみないとわからないと思いますが、かなり速いです。

フリートライアルをしてみよう

と、ここまで話して、興味をもった方はいると思いますが、百聞は一見にしかずなので、なんだかんだ言って試さないとわかりませんね。

以下の関連動画に示した動画も参考になりますが、実は、フリートライアルがありますのでぜひお試しあれ。ちなみに私はMacユーザーであり、このソフトWindowsのみなので、実際にWindowsPCをもって訪問していただき、しばらくお試しをさせていただきました。分野的にIRやラマンスペクトルはあまり測定しないので、どの程度正確か、使えるかの判断はできませんでしたが、かなり使い勝手はよさそうです。

KnowItAllのトライアル版はこちら

*申込日から2週間ご利用頂けます。*Windows版のみとなります。*ご利用にはインターネット環境が必要です。

最後に肝心なお値段。各製品にアカデミック向けのディスカウント価格はありますが、「個別にお問合せ」として頂けると助かるとのこと。

ちなみに、企業向け価格の約1ライセンス強の費用で、キャンパス内でユーザー数無制限でお使い頂ける教育機関向け製品 「KnowItAll U」というものもるそうです。

お問い合わせ先

ワイリー・パブリッシング・ジャパン株式会社
ワイリー サイエンス ソリューション製品担当
〒160-0023 東京都新宿区西新宿8-4-2 野村不動産西新宿ビル8階
sciencesolutions.jp@wiley.com

関連リンク

関連動画

関連記事

Avatar photo

webmaster

投稿者の記事一覧

Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

関連記事

  1. うっかりドーピングの化学 -禁止薬物と該当医薬品-
  2. E. J. Corey からの手紙
  3. 「理研シンポジウム 第三回冷却分子・精密分光シンポジウム」を聴講…
  4. 比色法の化学(前編)
  5. 人生、宇宙、命名の答え
  6. アゾベンゼンは光る!~新たな発光材料として期待~
  7. トリプトファン選択的なタンパク質修飾反応の開発
  8. ポンコツ博士の海外奮闘録 ケムステ異色連載記

注目情報

ピックアップ記事

  1. 光とともに変身する有機結晶?! ~紫外光照射で発光色変化しながら相転移する結晶の発見
  2. 有機合成化学協会誌2023年5月号:特集号「日本の誇るハロゲン資源: ハロゲンの反応と機能」
  3. ジイミド還元 Diimide Reduction
  4. 平尾一郎 Ichiro Hirao
  5. 239th ACS National Meeting に行ってきた
  6. 2005年11月分の気になる化学関連ニュース投票結果
  7. ジョアン・スタビー JoAnne Stubbe
  8. 「架橋ナノゲル」を応用したがんワクチンDDS
  9. 振動強結合によるイオン伝導度の限界打破に成功
  10. ミツバチに付くダニに効く化学物質の研究開発のはなし

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2019年12月
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
3031  

注目情報

最新記事

条件の「前後」も実験条件である【プロセス化学者のつぶやき】

前回まで1. 設定温度と系内の実温度のお話2. 温度値をどう判断するか3. 反応操作をし…

そのpH、“本当にその場所”の値ですか?ニードル式pHセンサーを使ってみた!

突然ですが、「培養の再現性がなんか悪い」「同じ条件のはずなのに結果がズレる」といった経験はあ…

「骨格編集」×「ナノカーボン合成」〜ナノカーボン合成の新戦略を実証〜

第719回のスポットライトリサーチは、名古屋大学大学院工学研究科(忍久保研究室)博士後期課程2年の平…

【書評】立体化学 はじめの一歩

立体化学は,分子の三次元構造を理解するための重要な分野であり,有機化学や…

水のシミュレーション入門 — 水分子を計算機の中でどう”描く”か —

身近なのに、計算機にとって手強い"水"。本記事では、点電荷モデルから機械学習まで、その"描き方"の進…

◆◇◆◇ 第36回フォーラム・イン・ドージン開催のご案内 ◆◇◆◇

同仁化学研究所が熊本から世界へ情報発信するフォーラム・イン・ドージンの開催ご案内です。今年は『な…

『力』による円偏光発光のon/off制御を単一分子レベルで実現

第718回のスポットライトリサーチは、東京科学大学 物質理工学院(相良研究室)博士後期課程2年の野中…

数日かかっていた反応機構解析を、わずか数分に!

機械学習ポテンシャルが変える計算化学の現在近年、DFT計算による反応機構解析は広く行われるよ…

海外ポスドクのオファーをもらう【アメリカで Ph.D. を取る: 進路編】

ポスドクとして海外に留学する場合、希望する研究室の教授に直接連絡を取り、面接などを通して適性を判断さ…

MDで観るトライボロジー 〜原子が擦れるその場をシミュレーション〜

軽くて強いのに摩耗に弱いチタン合金は、航空機や人工関節に広く使われています。原子が擦れ合うその場を分…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP