[スポンサーリンク]

ケムステしごと

国内初のナノボディ®製剤オゾラリズマブ

[スポンサーリンク]

 

ナノゾラ®皮下注30mgシリンジ(一般名:オゾラリズマブ(遺伝子組換え))は、Ablynx社が初期開発したナノボディ®製剤の新規TNF阻害薬であり、関節リウマチを適応症として2022年9月に承認された国内初のナノボディ®製剤です。
また、ナノゾラ®皮下注30mgオートインジェクターはシリンジ製剤「ナノゾラ®皮下注30mgシリンジ」と同じ薬剤があらかじめ1回量充填されたオートインジェクター製剤で2023年7月に承認されました。本剤は、関節リウマチ患者さんの使いやすさに配慮したデバイスであり、ボタンレスで本体を皮膚に押し当てるだけで薬剤が注入され、さらに、注射後は針カバーがロックされることで針刺し事故を防止します。

オゾラリズマブ(OZR)は2つのヒト抗TNFαナノボディ®分子と1つの抗ヒト血清アルブミン(HSA)ナノボディ®分子を9アミノ酸からなる2本のグリシン-セリンリンカー(GSリンカー)で連結したmultivalent(多価の)構造を持つヒト化融合蛋白質(低分子抗体)です。本剤はFc領域を持たないという構造的特徴から、既存のIgG 抗体とは異なる薬理学的性質を示します。OZRの分子量は38,434.32Daで一般的なIgG抗体の約1/4の分子量です1,2。OZRは2つのドメインでTNFαに結合しうる構造特徴を有しており、また、膜結合型と分泌型の両方のTNFαに結合し、その生理活性を抑制します。OZRのナノボディ®分子はラマ由来でありますが、ヒト免疫グロブリンのVHと高い相同性を有するようにヒト化されており免疫原性の低減を図っております。OZRは抗HSAナノボディ®分子により血清アルブミンにも結合し、血漿中半減期の延長による月一回の投与を可能としました。本剤のマウスサロゲート抗体では、血清アルブミンに結合することでマウスコラーゲン誘発関節炎モデルにおける炎症組織への集積性が示されております3

参考文献
1. Ishiwatari-Ogata, C. et al., Front Immunol. 13, 853008 (2022)
2. Kyuuma, M. et al., Front Immunol. 14, 1149874 (2023)
3. Coppieters, K. et al., Arthritis & Rheumatism. 54, 1856 (2006)

オゾラリズマブの構造的特徴

2014年に製造販売承認を取得した、選択的SGLT2阻害剤、2型糖尿病治療薬 ルセフィ®錠 2.5㎎、5㎎製剤に加え、2022年2月に服薬アドヒアランス向上を目指し、SGLT2阻害剤として世界で初めてODフィルムの製造販売承認を取得しました。ODフィルム剤は、水が手元になくても唾液で服用できる、薄いアルミ包装品のため携帯しやすいなどの特徴があります。
ルセフィ®ODフィルムの開発は容易なものではありませんでした。ODフィルム剤とするためには、薄く均一なフィルムに成形する必要があり、かつフィルム剤の強度の確保も必要となります。そのため、フィルム剤の製造に必要な液を調製する際には原薬分散方法や溶媒組成等に様々な工夫がなされています。また、ルセフィ®ODフィルムでは滑らかな舌触りと口腔内での速やかな崩壊・溶解、経時的に変色がなくかつ良好な安定性を示す製剤を目指しました。ODフィルム剤は非常に薄く、錠剤と比べて使用できる添加剤の量が限られていたこともあり数多くの試行錯誤が必要となりましたが、一般的に使用される添加剤同士のこれまでにない組み合わせを見出すことで目標を達成する製剤化が可能となりました。ルセフィ®ODフィルムと錠剤の生物学的同等性を健康成人にて試験したところ、AUCが判定基準に適合することが確認されました。
本製剤は、錠剤が飲みにくい患者や、水分制限が必要な患者に利用されています。また災害時などの水が飲めない環境での服用も期待されます。

ルセフィODフィルム

関連リンク

webmaster

投稿者の記事一覧

Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

関連記事

  1. マイクロ空間内に均一な原子層を形成させる新技術
  2. 反応機構を書いてみよう!~電子の矢印講座・その1~
  3. 2002年ノーベル化学賞『生体高分子の画期的分析手法の開発』
  4. 天然物の構造改訂:30年間信じられていた立体配置が逆だった
  5. こんな装置見たことない!化学エンジニアリングの発明品
  6. メチオニン選択的なタンパク質修飾反応
  7. おっさんマウスが小学生マウスを襲う?待ったの決め手はフェロモンに…
  8. マタタビの有効成分のはなし【更新】

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. エーザイ 抗がん剤「ハラヴェンR」日米欧で承認取得 
  2. クラレ 新たに水溶性「ミントバール」
  3. 向山縮合試薬 Mukaiyama Condensation Reagent
  4. 小スケール反応での注意点 失敗しないための処方箋
  5. (+)-フロンドシンBの超短工程合成
  6. 芳香族トリフラートからアリールラジカルを生成する
  7. ロナルド・ブレズロウ賞・受賞者一覧
  8. 光で狙った細胞を選択的に死滅させる新技術の開発に成功~副作用のない光がん治療法を目指して~
  9. ステファン・カスケル Stefan Kaskel
  10. 橘 熊野 Yuya Tachibana

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2024年4月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930  

注目情報

最新記事

【著者に聞いてみた!】なぜ川中一輝はNH2基を有する超原子価ヨウ素試薬を世界で初めて作れたのか!?

世界初のNH2基含有超原子価ヨウ素試薬開発の裏側を探った原著論文Amino-λ3-iodan…

千葉 俊介 Shunsuke Chiba

千葉俊介 (ちばしゅんすけ、1978年05月19日–)は日本の有機化学者である。シンガポール南洋理⼯…

Ti触媒、結合切って繋げて二刀流!!アルコールの脱ラセミ化反応

LMCTを介したTi触媒によるアルコールの光駆動型脱ラセミ化反応が報告された。単一不斉配位子を用いた…

シモン反応 Simon reaction

シモン反応 (Simon reaction) は、覚醒剤の簡易的検出に用いられる…

Marcusの逆転領域で一石二鳥

3+誘導体はMarcusの逆転領域において励起状態から基底状態へ遷移することが実証された。さらに本錯…

5/15(水)Zoom開催 【旭化成 人事担当者が語る!】2026年卒 化学系学生向け就活スタート講座

化学系の就職活動を支援する『化学系学生のための就活』からのご案内です。化学業界・研究職でのキャリ…

フローマイクロリアクターを活用した多置換アルケンの効率的な合成

第610回のスポットライトリサーチは、京都大学大学院理学研究科(依光研究室)に在籍されていた江 迤源…

マリンス有機化学(上)-学び手の視点から-

概要親しみやすい会話形式を用いた現代的な教育スタイルで有機化学の重要概念を学べる標準教科書.…

【大正製薬】キャリア採用情報(正社員)

<求める人物像>・自ら考えて行動できる・高い専門性を身につけている・…

国内初のナノボディ®製剤オゾラリズマブ

ナノゾラ®皮下注30mgシリンジ(一般名:オゾラリズマブ(遺伝子組換え))は、A…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP