[スポンサーリンク]

化学者のつぶやき

2007年度ノーベル化学賞を予想!(4)

[スポンサーリンク]

前回に引き続き、まだまだ続く「ノーベル化学賞がとれそうでとれないであろう、でももしかしたらとれるかもしれない化学者」!

Gabor A. Somorjai, Gerhard Ertl (表面化学)

Nobel Prize

なぜパラジウムや白金、様々なナノ粒子など不均一系触媒(heterogeneous catalysis)は固体にもかかわらず触媒として反応に関与するのか?金属や固体表面でどのように反応が進行するのか?――カリフォルニア大学バークレー校ソモライ教授とマックス・プランク財団フリッツ・ハーバー研究所長エルトゥル教授は、この謎を解決するために研究を行ってきました。

ソモライ教授はエチレンの水素化反応で、白金触媒表面にエチリジン化学種が生成することを発見し、その構造を決定しました[1」

一方でエルトゥル教授は化学吸着に伴って生じる金属結晶表面原子の再配列現象を明らかにしました。
Unknown

現在のナノテクノロジーの根底・基盤となっている基礎研究であり、ソモライ教授ウルフ賞プリーストリーメダルエルトゥル教授ウルフ賞日本国際賞など大きな国際賞を獲得しています。ナノテクノロジーの理論分野を確立せしめた両氏ならば、ノーベル化学賞受賞の可能性は高いのではないでしょうか?

[追記]  なんと2007年のノーベル化学賞をエルトゥル教授が単独受賞しました!

Ronald Breslow (生体模倣型化学)

Nobel Prize

化学界の超大物・コロンビア大学のブレズロウ教授。彼は、非ベンゼン芳香族化学の研究からはじまり、シクロプロペニウムカチオンの合成に成功しました。その後、研究テーマはバイオミメテックな反応を有機化学的な手法で実現させる方向へシフトし、酵素モデルの開発にも取り掛かりました。1957年にチアミン(ビタミンB1)におけるチアゾール部を用い、有機反応機構としてモデル化、その後シクロデキストリンを用いた酵素モデルの研究へと発展させました。

アメリカ化学会の元会長であり、プリーストリーメダル、ウルフ賞などの化学賞を総なめにしています。ノーベル化学賞受賞者ウッドワードのもとで博士を取得、さらには彼の研究室で博士を取得したカリフォルニア工科大学のグラブス教授も2005年にノーベル化学賞を受賞しています。化学研究の傑出度はもちろんのこと、化学者を引っ張っていく立場にもあり、ノーベル化学賞の受賞はありえないわけではありません。

Kenichi Honda, Akira Fujishima (光触媒)

Nobel Prize

脱臭、抗菌、防汚、大気浄化、浄水に有効であるとされ、建物の外壁、壁紙、空気清浄機から造花まで、いつのまにかいろいろな場面で見られるようになった光触媒―これを一言で説明すると「光が照射されることにより、それ自身は変化せずに化学反応を促進する物質」です。

光触媒の応用例

光触媒の応用例(出典:- 文部科学省 ナノテクノロジーネットワークセンター)

 

1967年、東京大学の本多健一助教授と大学院生であった藤嶋昭氏は、酸化チタンを用いてその原理を発見しました。彼らは、対電極に白金電極を使った閉鎖回路をつくり、酸化チタンにキセノン燈の光を照射してみました。すると驚いたことに、酸化チタンと白金の両電極からガスがぶくぶくと出てきたのです。早速、これらの気体を採取し、ガスクロマトグラフで調べたところ、酸化チタンからは酸素、白金からは水素が発生していました。水が光照射によって酸素と水素に分解されていたのです。

この現象は現在「本多・藤嶋効果」と名付けられ、以降この酸化チタンを用いた光触媒は様々な部分に工業化・応用されるようになりました。環境化学的な観点からもこの仕事のインパクトは大きく、両氏はノーベル化学賞候補者にも何度も挙げられています。

まだまだ続きます!

関連書籍

[amazonjs asin=”4582856063″ locale=”JP” title=”知っていそうで知らないノーベル賞の話 (平凡社新書)”][amazonjs asin=”4490108435″ locale=”JP” title=”ノーベル賞の事典”][amazonjs asin=”4121916336″ locale=”JP” title=”ノーベル賞の100年―自然科学三賞でたどる科学史 (中公新書)”]
Avatar photo

webmaster

投稿者の記事一覧

Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

関連記事

  1. 日本にあってアメリカにないガラス器具
  2. Ti触媒、結合切って繋げて二刀流!!アルコールの脱ラセミ化反応
  3. 研究者向けプロフィールサービス徹底比較!
  4. 室温以上で金属化する高伝導オリゴマー型有機伝導体を開発 ―電子機…
  5. SNS予想で盛り上がれ!2024年ノーベル化学賞は誰の手に?
  6. 有機機能性色素におけるマテリアルズ・インフォマティクスの活用とは…
  7. フロー合成と電解合成の最先端、 そしてデジタル有機合成への展開
  8. ムギネ酸は土から根に鉄分を運ぶ渡し舟

注目情報

ピックアップ記事

  1. (-)-Cyanthiwigin Fの全合成
  2. ノーベル賞受賞者と語り合おう!「第16回HOPEミーティング」参加者募集!
  3. 力をかけると塩酸が放出される高分子材料
  4. スティーブン・リパード Stephen J. Lippard
  5. ベックマン開裂 Beckmann Fragmentation
  6. 乾燥剤の脱水能は?
  7. トリニトロトルエン / Trinitrotoluene (TNT)
  8. 第25回 名古屋メダルセミナー The 25th Nagoya Medal of Organic Chemistry
  9. リチャード・ヘック Richard F. Heck
  10. 人工嗅覚センサを介した呼気センシングによる個人認証―化学情報による偽造できない生体認証技術実現へ期待―

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2007年9月
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930

注目情報

最新記事

有馬温泉で鉄イオン水溶液について学んできた【化学者が行く温泉巡りの旅】

有馬温泉の金泉は、塩化物濃度と鉄濃度が日本の温泉の中で最も高い温泉で、黄褐色を呈する温泉です。この記…

HPLCをPATツールに変換!オンラインHPLCシステム:DirectInject-LC

これまでの自動サンプリング技術多くの製薬・化学メーカーはその生産性向上のため、有…

MEDCHEM NEWS 34-4 号「新しいモダリティとして注目を浴びる分解創薬」

日本薬学会 医薬化学部会の部会誌 MEDCHEM NEWS より、新たにオープン…

圧力に依存して還元反応が進行!~シクロファン構造を活用した新機能~

第686回のスポットライトリサーチは、北海道大学大学院理学研究院化学部門 有機化学第一研究室(鈴木孝…

第58回Vシンポ「天然物フィロソフィ2」を開催します!

第58回ケムステVシンポジウムの開催告知をさせて頂きます!今回のVシンポは、コロナ蔓延の年202…

第76回「目指すは生涯現役!ロマンを追い求めて」櫛田 創 助教

第76回目の研究者インタビューは、第56回ケムステVシンポ「デバイスとともに進化する未来の化学」の講…

第75回「デジタル技術は化学研究を革新できるのか?」熊田佳菜子 主任研究員

第75回目の研究者インタビューは、第56回ケムステVシンポ「デバイスとともに進化する未来の化学」の講…

第74回「理想的な医薬品原薬の製造法を目指して」細谷 昌弘 サブグループ長

第74回目の研究者インタビューは、第56回ケムステVシンポ「デバイスとともに進化する未来の化学」の講…

第57回ケムステVシンポ「祝ノーベル化学賞!金属有機構造体–MOF」を開催します!

第57回ケムステVシンポは、北川 進 先生らの2025年ノーベル化学賞受賞を記念して…

櫛田 創 Soh Kushida

櫛田 創(くしだそう)は日本の化学者である。筑波大学 数理物質系 物質工学域・助教。専門は物理化学、…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP