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化学者のつぶやき

分子間相互作用で「π–π スタッキング」を考える【芳香環の相互作用を見直す: 後編】

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芳香環が平行に近接するときの分子間相互作用は、静電相互作用、分散力、脱溶媒和、誘起作用、交換反発という一般的な非結合性相互作用から説明されます。
この記事では前回に引き続き J. Am. Chem. Soc. 誌に Perspective として 投稿された上述の Iverson らの意見1について紹介しつつ、分子間相互作用について学部一般化学および物理化学の教科書的知識からおさらいしようと思います。

前回までのあらすじ

前回の記事: 「π–π スタッキング」という言葉が生む誤解【芳香環の相互作用を見直す: 前編】

前回の記事では、中性で閉殻の芳香環の結晶構造では、芳香環が中央揃えに積み重なるような場合は実は珍しく、π 電子間に特別な引力が存在する描写はほぼ成立しないことをお話しました。実際に有利な芳香環の配置パターンは、ずれ積層や T 字型であり、その物理的な起源は静電相互作用 (electrostatic force)、分散力 (dispersion force)、脱溶媒和 (desolvation)、誘起作用 (induction)、交換反発 exchange-repulsion) という一般的な非結合性相互作用で表せます。 Iverson らは、それらの頭文字をとって EDDIE と総称することを提案しています。それでは、それらの非結合性相互作用が、芳香環の相互作用でどのような役割を果たすのかを見ていきましょう。

静電相互作用 electrostatic interaction

これは正電荷と負電荷が引き合う相互作用で、クーロン力とも呼ばれる相互作用です。高校物理でも登場する概念であるため、こういった分子間相互作用が存在することは受け入れてもらえるでしょう。

中性の分子同士の静電相互作用について考えるには、分子を構成する原子の電気陰性度の差によって部分的な電荷の偏りが生じていることを思い出さなければなりません。無置換の炭化水素系芳香族 (ベンゼンなど) の場合、比較的電気陰性度の差が少ない炭素 C と水素 H だけで構成されていますが、それでも上下の π 電子雲に挟まれた原子骨格と特に水素原子はわずかに部分正電荷を帯びていると考えられています。したがって π 電子雲と対になる言葉として、芳香族の原子骨格部分は σ 骨格 (σ-framework) と呼ばれています2。σ 骨格の部分正電荷と π 電子雲の部分負電荷が弱く相互作用する描像は、T 字型構造やずれ積層型を説明するのに利用されてきました

上述のように σ 骨格の部分正電荷や置換基の部分電荷が静電相互作用を生むと考えられはしますが、以下に述べる分散力や交換反発の作用によっても T 字構造やずれ積層構造が計算によって再現されています。したがって、静電相互作用の寄与は小さいという見方が強まっています。

一方、置換基を持つ芳香環の配列においては、置換基そのものの部分電荷と偏った電荷を持つ別分子の芳香環同士の静電相互作用が存在し、その相互作用と分散力によって、ずれ積層構造を特に作りやすくしているという解釈がなされています。逆に言えば、π 電子の電荷の偏りによる静電相互作用が原因ではないのです。この事実も π–π 相互作用という言葉が妥当ではない理由の1つとして挙げられています。

分散力 dispersion force

ロンドン力 London forceロンドン分散力 London dispersion force とも呼ばれる分散力は、電荷の偏りがない (無極性) の分子にも働く分子間力です。分散力の起源は、電子分布の瞬間的な揺らぎによって生じる一時的な弱い分極が、隣接する分子の電子分布にも影響して一時的な弱い分極を生じるものとして理解されています。これは、いわゆるファンデルワールス力の重要な寄与の一つです。

分散力は、真空状態で芳香族の分子間相互作用についてエネルギー分解分析したときの主要な寄与であると見積もられています。ただし溶媒を計算に含めたときには、分散力が分子配列を決定する寄与の程度は議論が分かれています。

脱溶媒和 desolvation

脱溶媒和効果は、疎水性分子が水に囲まれているときに、水分子が複数の無極性分子を一緒に囲むことで溶媒和に参加する不安定な水分子の数を抑える効果です。疎水効果 hydrophobic effects とも呼ばれます。

疎水性分子が水に溶けるときには、水分子同士が溶質分子の周りに水素結合のネットワークによる籠 (かご) のような構造 (solvent cage) を作ります。もし溶質となる分子が比較的小さい場合は、そのような水素結合の籠は比較的安定に維持できます。

しかし溶質分子が大きすぎる場合には安定な水素結合のネットワークを形成できません。くわえて、大きな疎水性分子が水に接触していると、水本来の水素結合のネットワークも遮断されてしまいます。その結果、疎水性表面と水の接触面を減らすために、疎水性分子が凝集することがあります3。このような効果によって芳香環が凝集した場合、その凝集構造は芳香環に備わっている引力によって引き起こされたとは言い難い、と筆者の Iverson は主張しています。

脱溶媒和の効果は、エネルギー分解分析では通常考慮されません。しかし、今回の Iverson らの Perspective において、この効果は芳香環が凝集して積層構造を作る重要な駆動力であることを説かれています。その理由は、Iversonらが長年研究してきたDAN–NDI系(電子供与性ジアルコキシナフタレンと電子受容性ナフタレンジイミドの会合)において、CDCl₃中よりもD₂O中の方が会合定数が3桁も大きいと見出されているからです。溶媒によって芳香族会合体の会合定数が変化する事実は、その会合が芳香環に備わっている引力というよりは、水分子の水素結合ネットワーク形成の都合によって芳香環が凝集しているという見方を強めます。

誘起作用 induction

Iverson らの分類に基づくと、この効果は誘起分極化 polarization電荷移動 charge transfer にさらに細かく分けられます。

誘起分極化 polarization は、一般的に言うと、ある化学種 (Aとする) の存在によって、近接の別分子 (B とする) の電子分布がその分子Bの分子軌道内で応答して安定化する現象です。例えば、カチオンが存在するときに近くの分子がカチオン側に電子を引き寄せることで部分的な負電荷を作り安定化している状況を思い浮かべるとわかりやすいと思います。上述の太字で示した誘起分極化の定義のうち「その分子 B の分子軌道内で (電子分布が) 変化する」という条件は、次に述べる電荷移動と区別するための条件です。中性の分子間ではこのような誘起分極化は弱いですが、カチオン−π 間やアニオン−π 間ではいくらかの寄与があると考えられています4

電荷移動 charge transfer は、軌道相互作用によってある分子の電子が別の分子の空軌道へ供与される効果です。前述した誘起分極化 polarization との違いは、誘起分極化の場合は、電荷分布の偏りが一方の分子 B の分子軌道のみで起こっているのに対して(ただしその偏りは別の分子 A が存在することによって起きている) 、電荷移動の場合は、電子がある分子 A から別の分子 B に電子が移動しています。典型的な例は遷移金属の錯形成においては、π逆供与で金属の d 電子が配位子の空軌道へ供与される相互作用などがあります。電荷移動が起こると、非結合性の分子間相互作用というよりは、もはや化学結合が形成しているといってよいかもしれません。

Iverson らは、π–π スタッキングの文脈において 「π軌道の重ね合わせによる軌道相互作用が誇張されている」と警鐘を鳴らしています。例えば単純なベンゼンの二量体を考えたときには、完全な中央積層構造をとったときには HOMO–LUMO の重ね合わせによる軌道相互作用は打ち消し合って弱められており、電荷移動の寄与はほぼ無視できます。

本記事の筆者による補足
誘起分極化 polarization と電荷移動 charge transfer が、EDDIE の枠組みの Induction にあたるのですが、ここの適切な日本語の訳語は少し困りました。この記事では一応直訳である「誘起」を使用しています。ただし「誘起効果」と言ってしまうと置換基効果における σ 結合を介した電荷分布の分極と言葉が被ってしまいます。「分子間相互作用の誘起効果」みたいに言えばいいのかもしれませんが、長くて気に入りません。

そもそも誘起分極化と電荷移動はエネルギー分解分析 (EDA) においては別カテゴリーに分類される相互作用なので、それらを同じ分類に当てはめるのは本記事の著者的には違和感があります。

とはいうものの EDDIE の枠組みの中の induction に対して、電荷再分配とかそんな物理的状況と訳語を当てはめた場合は、polarization も charge transfer も同じ枠に入れることはできます。なので、Iverson らが提案する EDDIE のなかでの Induction は電荷再分配みたいことを指すに捉えておくとよいかもしれないです。

交換反発 exchange-repulsion

この作用はパウリ反発 Pauli repulsion とも呼ばれます。2 つ以上の電子が同じ量子状態をとることができないというパウリの排他律から要請される反発作用です。名前からも想像できる通り、交換反発は反発の寄与です。したがって、交換反発が構造へもたらす影響は、交換反発をなるべく小さくするような並びに分子が配列される、ということです。芳香族分子がずれ積層構造をとる理由は、中央積層における π 電子同士の反発を避けるためという見方もあります5

π 電子特有の相互作用を仮定しなくても説明できる

以上が、今回提唱された EDDIE の各要素についての教科書的な説明です。EDDIE という呼び方は新しく提案されたものですがそれぞれの寄与は以前から知られている概念です。そして、EDDIE のどの成分に関しても、π 電子特有の力を考慮しなくてよいことを筆者らは、繰り返し主張しています。

さらに筆者らは中央積層型に配列する芳香族するような一部の例に関しても、EDDIE の枠組みで説明できると強調しています。逆に言えば中央積層型の配列であったとしても、π 軌道間の重ね合わせによる軌道相互作用は (基底状態では) ほぼ存在しないということです。例えば電子供与性基を持つ芳香環と電子求引基を持つ芳香環は中央積層構造を取ることがあり、ドナー–アクセプター会合体donor–acceptor complex のように呼ばれる場合があります。そのような場合にも 2 つの誤った解釈がされていることに関して、筆者らは注意喚起しています。それらの誤解とは、そのような “ドナー–アクセプター錯体において (1) 芳香環の π 電子の偏りが生む部分電荷から生じる静電相互作用が存在する、あるいは (2) π軌道の重ね合わせによって安定化している、という解釈です。これらの解釈は間違いで、現在正しいと認められている解釈は、置換基自身の部分電荷と芳香環の偏った電子分布が生む部分電荷による静電相互作用置換基同士の部分電荷の静電相互作用の寄与が大きい、という説です。

π–πスタックという呼び方が適切なとき

前回の記事でも述べたように、芳香環が積層している構造自体を表すのに π–π スタックは有用であろうと Iverson らは述べています。これは前回記事では、構造的用法と呼んだものでした。

一方、相互作用的な意味の π–π スタックに関しては、π軌道の重ね合わせによる軌道相互作用は通常無視できるという主張でした。ただし、筆者らは一部の例においてはそのような寄与も存在する場合があることを紹介しています。例えばドナー–アクセプター会合体の電荷移動光吸収です。そのような光吸収は、ドナー分子の HOMO からアクセプター分子のLUMO へ電子が光遷移しているため、電荷移動があると言えます。また、ある種の芳香族分子は、固体の充填配列が光学特性などの物理的性質に影響を与えることが知られています6。そのよう充填配列に依存する光学特性を持つ芳香族分子の会合体はJ会合体や H会合体と言われています。しかし、ドナー–アクセプター会合体やJ会合体、 H会合体のいずれの場合も、軌道の相互作用はあくまでも励起状態の議論であり、基底状態の配列に関しては EDDIE の枠組みで説明できるというのが Iverson らの立場です。

最後にπ– πスタックと呼ぶのがふさわしいであろう例として、電荷移動塩 charge-transfer salt を紹介しています。それは例えがテトラチオフルバレン (tetrathiofulvalene; TTF)とテトラシアノキノジメタン (tetracyanoquinodimethane; TCNQ) の1:1の化合物です。この例では、ドナーのTTF と アクセプターのTCNQ のHOMO–LUMO ギャップが 0.8 eV と非常に小さく、かなりの電荷移動が見込まれています7。そしてその TCNQ/TTF は金属性の伝導性を示し、基底状態でもかなりの π 軌道間の軌道相互作用があると考えられています。

ちなみにIverson は「この例 (TTF/TCNQ) では中央積層型構造によって基底状態での軌道の重なりが最大化しており、かなりの電荷移動が起きている (原文 “Here, a face-centered stacking geometry maximizes the significant ground-state orbital mixing and the resulting charge-transfer phenomenon.” (ページ番号15336, 16行目)」のように述べています。しかし、私が TTF/TCNQ の結晶構造を見たところ8、TCNQ と TTF が交互に重なり合っているわけではなく、TCNQ同士あるいは TTF 同士がそれぞれ積層しており、しかもずれ積層型でした (下図)。

この結晶構造だけを見ると、Iverson らの上の供述の解釈の仕方には困ります。電子移動はテトラチオフルバレン TTF からテトラシアノキノジメタン TCNQ の異なる分子種間で起こっているので、言い換えると電子の移動は層の上下ではなくて、左右で起こっているように考えられます。ひょっとするとこの TTF/TCNQの例でも π 軌道の重なりによる軌道相互作用は起きていないのではないか、と私は疑問に思ってしまいました。ひょっとすると、溶液中では TTF/TCNQ が中央で重なり合うような会合体を作る可能性もあるのかもしれませんが、私の調べた限りでは TTF と TCNQ が中央で重なり合う構造や模式図を示す論文は、真空中での DFT 計算で合ったり根拠がない例 (上のような TTF と TCNQ がそれぞれ層を作っている結晶構造を報告する論文を引用しておきながら、本来とは異なる TTF と TCNQ が重なり合う模式図を示した文献調査が不十分な論文) しか見られませんでした。

と、ここまで書きかけて考え直すと、もしテトラチオフルバレンTTF とテトラシアノキノジメタン TCNQ で電荷移動が起きているならば、TTF はラジカルカチオン的で。TCNQ はラジカルアニオン的であると解釈できます。それらの π 系がラジカル的であるなら、TTF 同士の積層や TCNQ 同士の積層で軌道相互作用による安定化が生まれることもあり得そうに思いました。

ぐたぐだと TTF と TCNQ の相互作用の起源について述べましたが、もしTTF/TCNQの例でも π 軌道の重なりによる軌道相互作用は起きていないとしても、そのことはこの Perspective の主張である「閉殻で基底状態でのπ軌道の積層による重なりの相互作用は小さい」という見方を強めるだけなので、そこに関しては深堀しないことにしておきます。

Iverson らの提案のまとめ

著者 Iverson らは、π–π スタックやそれに関連する議論をするときに次の提案をしています。

構造の話をするときは「face-centered stacked (中央積層)」「parallel-displaced (ずれ積層)edge-to-face, T-shaped (T字型)」のように構造の言葉を使う

分子間相互作用の話するときは「EDDIEにより安定化されており、本系では分散と脱溶媒和が支配的」のように成分を明示する

このような書き分けによって、読み手は相互作用の物理的起源を理解しやすくなります。さらに書き手にとっても、「いまどの寄与の話をしているのか」を意識する習慣がつくため、分子設計に関する解像度が上がります。「π–π スタック」という曖昧な言葉で済ませずに、EDDIE の考え方で分子間相互作用を整理する価値はありそうです。

本ケムステ記事の著者による雑感

というわけで、Iverson らの主張を中心にしながら芳香族の非結合性分子間相互作用を見てきました。以降は、Iverson らの主張ではなく、その論文を読んだ一人の研究者としての意見です。

まず「π–π スタック構造がπ軌道の重ね合わせによって生じるものではない」という主張自体は、かなり古くから繰り返し議論されていたようです。なのでその事実を知ってる人にとっては、「まだ言ってるのか」という感想を持つ人もいるかもしれません。とはいえ、今も π–π interactions といった言葉が文献で広く使われているという事実は、「分子間の π 軌道が重なることで相互作用できる」という誤解が依然として生まれ続けていることを象徴していることでしょう。

今回の論文が話題になった理由は、おそらく EDDIE という名称を提案したことにあると思います。そして論文のグラフィカルアブストラクトもネットミームを利用しており、SNS で拡散されやすい要素を持っていたことも、この論文の話題性に一役買っていたかもしれません (実際のグラフィカルアブストラクトはこちらから)。ただし、一時的な “バズり” で終わらせない程度には、論文そのものの文献調査や議論からも学びを得ることができ、読みごたえがある論文です。「バズらせることは、あくまでも人々により知ってもらうための手段である」と考えるとネットミームを利用したグラフィカルアブストラクトの効果も、筆者らの思惑通りの結果だったのではないかと思います。

EDDIE という言葉がどれくらい普及するかは数年経ってみないとわかりません。多分 π–π スタックという言葉が完全に消失することはないと思いますが、いくらかの研究者は EDDIE を好んで使いそうな気がします。EDDIE が分子間相互作用の各成分の頭文字をとってできた単語であるため、EDDIE という言葉を使うたびに各成分について思い出す習慣ができどの寄与が重要であるかを強制的に考えさせれるという点では、EDDIE という言葉は有用であると思います。

一方で、EDDIE はある程度の化学の知識を持っていないと使いこなせない言葉とも言えます。例えば生物学者がタンパク質の構造について述べたり、固体材料学者が有機分子の結晶構造について簡単に述べたいときには、「そんなに細かく分子間相互作用について議論したくない!」という意見もあるかもしれません。EDDIE という言葉を使ったら、エネルギー分解分析を利用して、どの寄与が重要かを評価しなければならないのでしょうか?さすがにそれは化学者以外には要求しすぎな気もします。

そもそも EDDIE という新しい用語を作らなくても「非結合性相互作用 noncovalent interactions」とか「非結合性分子間相互作用 noncovalent intermolecular interactions」と言うことができます。それが今回の記事で述べたようなロンドン分散力などの相互作用を示すいうことは、学部レベルの化学の訓練を受けた化学者ならば理解できるはずです。

「相互作用の物理的起源に考えるようになる」という利点もあれば、「厳密性を求めるあまりに多分野の科学者との言語的の障壁を生む」という問題点もありそうです。

EDDIE という用語が今後一般的になるかはさておき、今回のIverson らの Perspective は、研究者が分子間相互作用について理解するよい機会になったことは確かです。

次に読むべき論文は?

反芳香族分子の積層
Close Stacking of Antiaromatic Ni(II) Norcorrole Originating from a Four-Electron Multicentered Bonding Interaction
Kino, S.; Ukai, S.; Fukui, N.; Haruki, R.; Kumai, R.; Wang, Q.; Horike, S.; Phung, Q. M.; Sundholm, D.; Shinokubo, H. J. Am. Chem. Soc. 2024, 146 (13), 9311–9317. DOI: 10.1021/jacs.4c01142.

Iverson らの今回の Perspective では言及されていなかったのですが、反芳香族分子であるノルコロールは比較的小さい層間距離で積層することが報告されています9,10。さらに計算化学により、層間での軌道相互作用が示唆されています。

エネルギー分解分析 EDA について
Probing Non-Covalent Interactions with a Second Generation Energy Decomposition Analysis Using Absolutely Localized Molecular Orbitals
Horn, P. R.; Mao, Y.; Head-Gordon, M. Phys. Chem. Chem. Phys. 2016, 18 (33), 23067–23079. DOI: 10.1039/C6CP03784D.

エネルギー分解分析を非結合性分子間相互作用に適用した例11。静電相互作用、分散力、誘起分極化、電荷移動などの計算化学的な扱い方を学びたい人向け。

関連記事

参考文献

  1. Xiao, Q.; Levine, M. S.; Iverson, B. L. Rethinking the Terms “π-Stacking” and “π–π Stacking” Again: A Proposal to Clarify the Language of Aromatic Interactions. J. Am. Chem. Soc. 2026, 148 (15), 15331–15340. https://doi.org/10.1021/jacs.6c03371.
  2. Hunter, C. A.; Sanders, J. K. M. The Nature of .Pi.-.Pi. Interactions. J. Am. Chem. Soc. 1990, 112 (14), 5525–5534. https://doi.org/10.1021/ja00170a016.
  3. Lum, K.; Chandler, D.; Weeks, J. D. Hydrophobicity at Small and Large Length Scales. J. Phys. Chem. B 1999, 103 (22), 4570–4577. https://doi.org/10.1021/jp984327m.
  4. Thirman, J.; Head-Gordon, M. Efficient Implementation of Energy Decomposition Analysis for Second-Order Møller–Plesset Perturbation Theory and Application to Anion−π Interactions. J. Phys. Chem. A 2017, 121 (3), 717–728. https://doi.org/10.1021/acs.jpca.6b11516.
  5. Henrichsmeyer, J.; Thelen, M.; Bröckel, M.; Fadel, M.; Behnle, S.; Sekkal‐Rahal, M.; Fink, R. F. Rationalizing Aggregate Structures with Orbital Contributions to the Exchange‐Repulsion Energy**. ChemPhysChem 2023, 24 (11), e202300097. https://doi.org/10.1002/cphc.202300097.
  6. Hestand, N. J.; Spano, F. C. Molecular Aggregate Photophysics beyond the Kasha Model: Novel Design Principles for Organic Materials. Acc. Chem. Res. 2017, 50 (2), 341–350. https://doi.org/10.1021/acs.accounts.6b00576.
  7. Beltrán, J. I.; Flores, F.; Martínez, J. I.; Ortega, J. Energy Level Alignment in Organic–Organic Heterojunctions: The TTF/TCNQ Interface. J. Phys. Chem. C 2013, 117 (8), 3888–3894. https://doi.org/10.1021/jp306079t.
  8. Kistenmacher, T. J.; Phillips, T. E.; Cowan, D. O. The Crystal Structure of the 1:1 Radical Cation–Radical Anion Salt of 2,2’-Bis-l,3-Dithiole (TTF) and 7,7,8,8-Tetracyanoquinodimethane (TCNQ). Acta Crystallogr. B 1974, 30 (3), 763–768. https://doi.org/10.1107/S0567740874003669.
  9. Kino, S.; Ukai, S.; Fukui, N.; Haruki, R.; Kumai, R.; Wang, Q.; Horike, S.; Phung, Q. M.; Sundholm, D.; Shinokubo, H. Close Stacking of Antiaromatic Ni(II) Norcorrole Originating from a Four-Electron Multicentered Bonding Interaction. J. Am. Chem. Soc. 2024, 146 (13), 9311–9317. https://doi.org/10.1021/jacs.4c01142.
  10. Nakajo, T.; Ukai, S.; Tanabe, T.; Hijikata, Y.; Iguchi, H.; Kusaka, S.; Negita, K.; Pirillo, J.; Seki, S.; Shinokubo, H.; Matsuda, R. Infinite Stacking of Antiaromatic Ni(II) Norcorroles Formed in a Porous Hydrogen-Bonded Organic Framework. J. Am. Chem. Soc. 2026, 148 (18), 18660–18668. https://doi.org/10.1021/jacs.5c19604.
  11. Horn, P. R.; Mao, Y.; Head-Gordon, M. Probing Non-Covalent Interactions with a Second Generation Energy Decomposition Analysis Using Absolutely Localized Molecular Orbitals. Phys. Chem. Chem. Phys. 2016, 18 (33), 23067–23079. https://doi.org/10.1039/C6CP03784D.
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PhD候補生として固体材料を研究しています。学部レベルの基礎知識の解説から、最先端の論文の解説まで幅広く頑張ります。高専出身。

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