[スポンサーリンク]

化学一般

フィンランド理科教科書 化学編

[スポンサーリンク]

概要

OECDが3年ごとに行っている国際学力調査(Programme for International Student Assessment, PISA)で我が国よりも上位にランキングされることが多い教育先進国の一つフィンランドでシェアNo. 1と呼び声高いSanomo Pro社が出版する中学校「化学」教科書の日本語訳。フィンランドの教科書を和訳するという試みはこれが初めてのことで、その他にも「人体」、「進化」がシリーズで出版される。

 対象

中学生、理科教員を志望する学生、理科教員

 解説

本書は上述の通りフィンランドで用いられている教科書の邦訳である。2001年の書であるので内容は少し古い部分もあるかもしれないが、努めて一般的な話題を提供しているので特に違和感は無い。フィンランドでは我が国とは異なり教科書検定が存在しない。よって内容には出版社の独自性があるのではと推察される。他の教科書と比較ができないので確かなことは言えないが、内容はいたって平易である。特に、化学は何故重要なのか現実の生活にどう関わっているのかがこれでもかというくらい、いや全ての項で登場するので中学生に対して化学に対する興味を惹かせる内容となっている。我が国の教育では化学反応式や構造式、計算問題が盛りだくさんであるが、本書では化学反応式はほんの僅かにしか登場しない。一方で章末問題ではやや高度な設問もあり、十分に考えさせる内容も含んでいる。

そう言えばモルが出てこないなと思ったら、最終章でモルについての説明がある。「環境問題と化学」の章でモルというのは少し違和感が否めない。

表紙を開くと最初は化学のおおざっぱな年表である。そこにフィンランドの簡単な歴史も併記されていて、確かに我が国の歴史と化学の歴史を対比してみるのは面白い試みだと思わずノートに書いてみたくなった。教科書につきものの周期表は最終ページの扉にあった。元素記号と原子番号が書いてあり原子量は併記されていない事に気付く。しかし一方で電子配置が付記されていることに驚かされる。電子殻に関する記述はたった1ページにしかもさらりとあるだけだが、元素の性質の本質が電子配置であることを教員に説明させる意図がうかがえた。

監訳者の前書きによるとフィンランドでは教員養成に定評があるそうで、なるほど知識教育に偏ることなく「なぜ?」を通じて学問の楽しさ教える優れた教育スタイルを垣間見た気がする。我が国の教育方法が必ずしも劣っているとは思わないが、「面白さ」は負けたか。

 関連書籍

ペリプラノン

投稿者の記事一覧

有機合成化学が専門。主に天然物化学、ケミカルバイオロジーについて書いていきたいと思います。

関連記事

  1. セレンディピティ:思いがけない発見・発明のドラマ
  2. 元素手帳 2018
  3. Greene’s Protective Groups…
  4. 【書籍】『これから論文を書く若者のために』
  5. Side Reactions in Organic Synthe…
  6. ついにシリーズ10巻目!化学探偵Mr.キュリー10
  7. ウォーレン有機合成: 逆合成からのアプローチ
  8. ジョン・グッドイナフ John B. Goodenough

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. サントリー:重曹を使った新しい飲料「水分補給炭酸」発売
  2. 酒石酸/Tartaric acid
  3. 原子のシート間にはたらく相互作用の観測に成功
  4. カルボン酸β位のC–Hをベターに臭素化できる配位子さん!
  5. 有機強相関電子材料の可逆的な絶縁体-金属転移の誘起に成功
  6. オゾンホールのさらなる縮小を確認 – アメリカ海洋大気庁発表
  7. ブドウ糖で聴くウォークマン? バイオ電池をソニーが開発
  8. YMC「水素吸蔵合金キャニスター」:水素を安全・効率的に所有!
  9. 第63回―「生物のコミュニケーションを司る天然物化学」矢島 新 教授
  10. なぜあなたは論文が書けないのか

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2013年6月
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930

注目情報

最新記事

電子のスピンに基づく新しい「異性体」を提唱―スピン状態を色で見分けられる分子を創製―

第614回のスポットライトリサーチは、京都大学大学院工学研究科(松田研究室)の清水大貴 助教にお願い…

Wei-Yu Lin教授の講演を聴講してみた

bergです。この度は2024年5月13日(月)に東京大学 本郷キャンパス(薬学部)にて開催されたW…

【26卒】太陽HD研究開発 1day仕事体験

太陽HDでの研究開発職を体感してみませんか?私たちの研究活動についてより近くで体験していただく場…

カルベン転移反応 ~フラスコ内での反応を生体内へ~

有機化学を履修したことのある方は、ほとんど全員と言っても過言でもないほどカルベンについて教科書で習っ…

ナノ学会 第22回大会 付設展示会ケムステキャンペーン

ナノ学会の第22回大会が東北大学青葉山新キャンパスにて開催されます。協賛団体であるACS(ア…

【酵素模倣】酸素ガスを用いた MOF 内での高スピン鉄(IV)オキソの発生

Long らは酸素分子を酸化剤に用いて酵素を模倣した反応活性種を金属-有機構造体中に発生させ、C-H…

【書評】奇跡の薬 16 の物語 ペニシリンからリアップ、バイアグラ、新型コロナワクチンまで

ペニシリンはたまたま混入したアオカビから発見された──だけではない.薬の…

MEDCHEM NEWS 33-2 号「2022年度医薬化学部会賞」

日本薬学会 医薬化学部会の部会誌 MEDCHEM NEWS より、新たにオープン…

マテリアルズ・インフォマティクスにおける分子生成の基礎と応用

開催日:2024/05/22 申込みはこちら■開催概要「分子生成」という技術は様々な問題…

AlphaFold3の登場!!再びブレイクスルーとなりうるのか~実際にβ版を使用してみた~

2021年にタンパク質の立体構造予測ツールであるAlphaFold2 (AF2) が登場し、様々な分…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP