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化学一般

【書評】きちんと単位を書きましょう 国際単位系 (SI) に基づいて

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きちんと単位を書きましょう: 国際単位系(SI)に基づいて

きちんと単位を書きましょう: 国際単位系(SI)に基づいて

中田 宗隆, 藤井 賢一
¥1,980(as of 07/27 11:19)
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卒論・修論・博論から英語原著論文に至るまで、研究室ごとに定められたさまざまなルールがあると思いますが、国際的に定義されたルールには研究室の独自ルールを超えて従う必要があります。単位に関するルールはその最たるものに該当します。

統一的にものを測る」ことは、研究のみならず社会生活を営んでいく上で最も重要な事項となります。お米を売り買いするとき、売り手が勝手な大きさの枡を使っていては、正確な取引はできません。単位はものをデジタル化する上で厳格に規定されなくてはならないものです。しかしながら、その規定された単位を使う側も正しく定義を把握していなければ、齟齬が生じ円滑なコミュニケーションが不可能となります。
本書はサイエンスにおける単位の扱いに特化した学術書であり、単位を正しく書くことの重要性と各種単位の意義について科学的視点からの詳細な解説を記述しています。

目次

主要目次:
数値の書き方/数学記号の書き方/“基本物理量”の単位と記号の書き方/SI基本単位に関連する“非SI単位”/固有名称で表される“SI組立単位”/SI組立単位に関連する“非SI単位”/国際単位系(SI)でない単位系/SI基本単位の定義のための“定義定数”/エネルギーの単位の換算/基礎物理定数/付録:単位と基礎物理定数をまとめた表

物理量の単位と記号を正しく書けますか?
「きち単」でわかる,身につく国際ルール.
レポート・論文作成に必携の1冊!!

※国際単位系(SI)の定義改定に対応.

各章の概説

第 3 章 “基本物理量”の単位と記号の書き方

単位を理解する上で最も重要なのは、七種類の基本物理量とそれに付随する SI 基本単位になります。本書から引用した SI 基本単位に関する記述を以下に示します。なぜこのような記号を使用するかに至った経緯など、興味深いトピックが本書記載されていますので、ぜひお手にとってご覧いただければと思います。

自然科学ではさまざまな物理量を扱う。ほとんどの物理量には単位があるが、すべての単位は <表> に示す七つの物理量の単位を使って表すことができる。そこで、<表> の七つの物理量を “基本物理量” といい、それぞれに対応する単位を “SI 基本単位” という。SI は国際単位系のことであり、International system of unit (フランス語では Système International d’unités) の略である。

<表> 七つの基本物理量と SI 基本単位
基本物理量  SI 基本単位
名称 記号 名称 記号
長さ l メートル m
質量 m キログラム kg
時間 t s
電流 I アンペア A
熱力学温度 T ケルビン K
物質量 n モル mol
光度 lv カンデラ cd

イタリックやボールド、大文字や小文字などの表記に関しても、単位を表す場合にはそれぞれ意味を持ちます。例えば、SI 基本単位の記号は、単位の名称を英語で表したときの頭文字をローマン体 (plain体=装飾なし) で書く、とされています。例えば、秒は英語で second なので、単位の記号は s となります。基本的に物理量の単位は小文字のローマン体で表しますが、人名に由来する 1 文字の単位は大文字のローマン体で書きます。例として、電流の単位のアンペア (A) はフランスの物理学者アンペール (A. -M. Ampère) の名前に由来します。

また基本的に物理量は数値と単位で表され、数値と単位の間には必ず半角スペースを入れる必要があります。例えば、“1 m” の表記は正しいですが、”1m” と書くことは誤りとなります。半角スペースに関しては研究室で口うるさく注意された経験のある方も多いかと思いますが、このような単位の表記にまつわるイロハについて本書は事細かに解説してくれています。

第 4 章 SI 基本単位に関連する “非 SI 単位”

人類の長い歴史の中で、さまざまな単位が独自に生み出されてきました。しかし、それらは個人や文化によって異なるために一定の値ではなく、また時代とともに変化します。あるときに値を統一して、時代を超えて用いたとしても、国ごとに定義が異なる場合があります。数多く存在する非 SI 単位は、SI 基本単位と厳密に関係づけられており、本章では非 SI 単位と SI 基本単位の関連・相互変換について詳しく述べられています。

例えば「長さ」の SI 基本単位はメートル (m) ですが、アメリカなどではヤード・ポンド法に基づいた非 SI 単位のインチ (in)・フィート (ft)・ヤード (yd)・マイル (mi) などが現代でもメインで使用されています。日本では、尺貫法に基づいた寸・尺・町・里などの長さの単位が使われていました。1ヤードは 0.9144 m、1寸は 1/33 m などの SI 基本単位に変換できます。非 SI 単位の使用は文化的な側面が強く、場合によっては便利に使用できるものであるため、非 SI 単位がおおよそどのような SI 基本単位で表せられるか、本章を読んで感覚を掴むと良いでしょう。

第 5 章  固有名称で表される “SI 組立単位”

SI 単位は、七つの SI 基本単位に加えて、それらを掛け合わせたり除したりした SI 組立単位も含まれます。例えば、体積は長さを 3 乗した m-3 で表すことができ、さらに質量 (kg) を体積 (m3) で除すると密度 (kg•m-3) となります。SI 組立単位はそれぞれ固有名称を持った「一貫性のある単位形*」であり、力やエネルギー、電気に関する単位など非常に幅広い物理量を表すことができます。

*各物理量の単位相互の換算関係に 1 以外の係数が入らない単位系を “一貫性のある単位系” と呼びます。

第 6 章  SI 組立単位に関連する “非 SI 単位”

本章では、第 4 章で解説しなかった非 SI 単位について述べられています。ケミストがよく出会う非 SI 単位系には圧力の単位があります。圧力の SI 組立単位はパスカル (Pa = N•m-2 = kg•m-1•s-2) ですが、化学の分野では標準大気圧を表す atm (1 atm = 1.01325 x 105 Pa) や水銀柱ミリメートル (mmHg, 1 atm = 760 mmHg)、ヤード・ポンド法に関連した psi (1 psi ≈ 0.068046 atm) なども汎用されています。

感想

論文を正確に執筆するための必携書として非常に有用であると感じました。国際的にどのような単位での記述が推奨されるか、本書を通読して把握しておくと執筆の際に混乱を生じなくて済むと思います。

また、数多くの SI 組立単位や非 SI 単位についての解説が掲載されており、自身の分野に関わらないところでも読み物としてのボリュームは特大です。単位換算に便利な付表もあり、この一冊で「単位マスター」になれると思いました。

コンパクトかつ安価な一冊なので、学生の皆様にぜひ一人一冊のご購入をオススメします!

こんな便利な栞もついてました!

きちんと単位を書きましょう: 国際単位系(SI)に基づいて

きちんと単位を書きましょう: 国際単位系(SI)に基づいて

中田 宗隆, 藤井 賢一
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DAICHAN

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創薬化学者と薬局薬剤師の二足の草鞋を履きこなす、四年制薬学科の生き残り。
薬を「創る」と「使う」の双方からサイエンスに向き合っています。
しかし趣味は魏志倭人伝の解釈と北方民族の古代史という、あからさまな文系人間。
どこへ向かうかはfurther research is needed.

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