[スポンサーリンク]

化学書籍レビュー

革新的医薬品の科学 薬理・薬物動態・代謝・安全性から合成まで

概要

従来の治療体系を大きく変えるような画期的な17の医薬品について,構造活性相関,有機合成経路といった化学的な側面だけでなく,薬理,代謝,疾患領域や重要な特性,薬物動態など,関連する最先端の科学について解説.また,創薬合成ルートに対して,プロセス合成ルートの長所と短所も専門家が分析し,ここ最近の医薬品発見から世に出るまでのプロセスをわかりやすく紹介している.(引用:化学同人

対象

  • 有機化学者
  • 創薬科学者
  • 医薬品・ケミカルバイオロジー関係の研究者
  • 大学院生以上

内容

2年前に紹介した最新医薬品の合成法を紹介する「Innovative Drug Synthesis」の日本語版が2017年12月に登場。訳者は慶大名誉教授の只野金一先生だ。只野先生には事あるごとになにかとお世話になっており、英語版をもっていながら入手。表紙は日本語に変わっただけで全く一緒である。出版社はWileyから化学同人へと変更された。ページ数は原著の341ページから、日本語版になると296ページと減っている(理由は後ほど)。

日本語版(左)と英語版(右)

 

さて、前回の書評にも記載したが、編者および著者は書籍「Name Reaction」で有名なサンフランシスコ大学Jie Jack Li教授とファイザーのDoug Johnson博士。最新医薬品17個をとりあげ、各著者が(34名)、その発見の経緯からはじまり、リード化合物からのメディシナルケミストリー、薬理動態と薬効、安全性などを述べ、最終的にプロセス合成に至るまで詳細に記載されている。

本当に最新の医薬品の研究が記載されており、講義などに重宝した。しかし、初版であった為か、構造式や化合物番号などの間違いが多い、構造式の大きさが統一されていないなどいくつか問題はあった。

まずは、日本語版はそれらの問題はかなり解決されている。統一した表記法と同じフォーマットでの化学構造式が記載されており、もう一度書き起こした様子だ。そもそも原著は表だけで表裏2ページ使うなど無駄なページも多かった。それが解消された形だ。ページ数が減っているのはその無駄が省けたことが理由だ。実はそれだけでなく、略語や薬理関係の用語などが、欄外に注釈があり、原著に比べて丁寧になっている。

私は、合成部分は全く問題なく読めるが、薬理動態や安全性などの部分で語学的な問題も含め少し読みにくいところがあった。それに対して、上述したように注釈があるだけでなく、しっかり日本語でかかれているのでスムーズに読める。まだ読み切ったわけではないので、翻訳の程度はわかりかねるが、只野先生ならば大丈夫であると信じている。

もう一つ重要な点は価格だ。原著がハードカバーであり輸入書籍であるからか、Amazonで原著が10,196円であるのに対して、日本語版は8,640円(2017年12月3日現在)。日本語版はソフトカバーであるが、原著よりも安い。

以上、日本人ならば英語の描き方を学びたいという理由以外には、日本語版一択だろう。最新医薬品に興味がある大学院生以上にぜひ購入をオススメしたい。

関連書籍

The following two tabs change content below.
webmaster
Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

関連記事

  1. 藤沢晃治 「分かりやすい○○」の技術 シリーズ
  2. アルカロイドの科学 生物活性を生みだす物質の探索から創薬の実際ま…
  3. 液クロ虎の巻シリーズ
  4. 創薬化学
  5. レア RARE 希少金属の知っておきたい16話
  6. Dead Ends And Detours: Direct Wa…
  7. Semiconductor Photocatalysis: Pr…
  8. 有機合成のナビゲーター

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. ナノ粒子の機能と応用 ?コロイダルシリカを中心に?【終了】
  2. ランタノイド Lanthanoid
  3. 【悲報】HGS 分子構造模型 入手不能に
  4. 分子レベルでお互いを見分けるゲル
  5. クロロ(1,5-シクロオクタジエン)ロジウム(I) (ダイマー):Chloro(1,5-cyclooctadiene)rhodium(I) Dimer
  6. 【エーザイ】新規抗癌剤「エリブリン」をスイスで先行承認申請
  7. 第12回 金属錯体から始まる化学ー伊藤肇教授
  8. オルトチタン酸テトライソプロピル:Tetraisopropyl Orthotitanate
  9. 有機薄膜太陽電池の”最新”開発動向
  10. トリクロロアニソール (2,4,6-trichloroanisole)

関連商品

注目情報

注目情報

最新記事

有機合成化学協会誌2019年1月号:大環状芳香族分子・多環性芳香族ポリケチド天然物・りん光性デンドリマー・キャビタンド・金属カルベノイド・水素化ジイソブチルアルミニウム

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2019年1月号がオンライン公開されました。今…

リチウムイオンバッテリーの容量を最大70%まで向上させる技術が開発されている

スマートフォンや電気自動車の普及によって、エネルギー密度が高く充電効率も良いリチウムイオンバッテリー…

学部4年間の教育を振り返る

皆様、いかがお過ごしでしょうか。学部4年生の筆者は院試験も終わり、卒論作成が本格的に始まるまでの束の…

ダイセルが開発した新しいカラム: DCpak PTZ

ダイセルといえば「キラルカラムの雄」として知られており、光学活性化合物を分離するキラルカラム「CHI…

台湾当局、半導体技術の対中漏洩でBASFの技術者6人を逮捕

台湾の内政部(内政省)刑事局は7日、半導体製造に使う特殊な化学品の技術を中国企業に漏洩した営業秘密法…

「低分子医薬品とタンパク質の相互作用の研究」Harvard大学 Woo研より

海外留学記第29回目は、Harvard大学のChiristina Woo研に留学されている天児由佳さ…

Chem-Station Twitter

PAGE TOP