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井野川 人姿 Hitoshi INOKAWA

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井野川 人姿(いのかわひとし)は、日本の化学者。崇城大学工学部ナノサイエンス学科准教授。第59回ケムステVシンポ講師。

経歴

  • 2011年3月 岡山大学大学院環境学研究科資源循環学専攻博士課程 修了 博士(学術)
  • 2011年4~11月 岡山県産業労働部産業振興課 研究員
  • 2011年12月~2014年8月 広島大学サステナブル・ディベロップメント実践研究センター 研究員
  • 2014年9月~2017年3月 King Abdulaziz University(サウジアラビア王国)SABIC Chair of Catalysis 研究員
  • 2017年4月~2022年3月 崇城大学工学部ナノサイエンス学科准教授 助教
  • 2022年4月~ 現職

受賞歴

  • 2023年崇城大学ベストティーチング賞
  • 2022年日本セラミックス協会 第76回(2021年度)進歩賞
  • 2021年崇城大学 ベストリサーチアワード
  • 2019年崇城大学SRAP最優秀プレゼンテーション賞(学長賞)
  • 2017年無機マテリアル学会最優秀講演奨励賞
  • 2014年14th International Symposium on Metal-Hydrogen Systems, Highly Commended Poster
  • 2014年日本セラミックス協会 基礎科学部会World Young Fellow Meeting 2014, Good Presentation Award

 

研究業績

  1. ゼオライトを鋳型とする高熱安定性ニッケルナノ粒子の合成とアンモニア分解特性

有機金属錯体を前駆体とする金属ナノ粒子触媒の合成に取り組んでいる。例えば、Y型ゼオライトの細孔内に気相でニッケロセンを導入し、水素気流中での加熱還元により、直径が5 nm以下の微小な金属ニッケルナノ粒子をゼオライトに担持する手法を考案した(図1)。一般的な含侵法でアルミナやゼオライトに担持されたニッケルは、500 °Cに加熱することで50 nm程度にまで粗大化するのに対し、本手法で得られたニッケルナノ粒子は5 nm以下の小さな粒径と高い分散性を維持し、アンモニアの分解反応において高い活性を示した(図2)。

図1 高熱安定性金属ニッケルナノ粒子を担持したY型ゼオライトのTEM像およびニッケルナノ粒子(矢印にて示される黒い粒)が存在する箇所のEDSスペクトル

図2 アンモニア分解反応(500 °C)前後での触媒の微構造比較(NANO:本手法で考案した高熱安定性ニッケルナノ粒子担持Y型ゼオライト、IMPzeolite:含侵法にてニッケルを担持したY型ゼオライト、IMPAl2O3:含侵法にてニッケルを担持したアルミナ)

該当文献

Inokawa, H., et al. (2013). “Synthesis of nickel nanoparticles with excellent thermal stability in micropores of zeolite.” International Journal of Hydrogen Energy 38(31): 13579-13586.

Inokawa, H., et al. (2015). “Catalysis of nickel nanoparticles with high thermal stability for ammonia decomposition.” Applied Catalysis A: General 491: 184-188.

 

2. 層状複水酸化物とシングルナノサイズの金属ナノ粒子からなる多孔質複合体の開発

水素貯蔵物質の1つである水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)は、適切な触媒さえあれば、加水分解反応により室温で水素を取り出すことができるため、将来の水素キャリアとして有望視されている。水溶液中ではBH4イオンとして存在することから、陰イオンとの親和性が高い触媒をデザインするため、層状複水酸化物を触媒担体として、金属コバルトナノ粒子を加水分解反応の活性点として、それぞれ用いることを考えた。層状複水酸化物は、2価と3価の陽イオンが混ざった状態で形成された水酸化物層と、層間の陰イオン層で構成される。3価の陽イオンによって水酸化物層が正に帯電しているため、陰イオンを静電的に引き寄せる性質があり、層間の陰イオンは他の陰イオン種と交換可能である。

コバルトを担持する際に、硝酸コバルトや塩化コバルトの水溶液を用いると、水溶液が酸性であるために層状複水酸化物が溶解し、担持処理ができない。一方で、層状複水酸化物の安定性を高めるために、コバルトを含む水溶液を塩基性にすると、担持する前に水酸化コバルトとして沈殿する。そこで、塩基性水溶液中でコバルト種を安定的に溶解させるため、クエン酸コバルト錯体(1価の陰イオン)を形成させ、イオン交換によってクエン酸コバルト錯体を層状複水酸化物の層間に導入する方法を考えた(図3)。イオン交換で層間にクエン酸コバルトを導入した後に、水素化ホウ素ナトリウム水溶液中で還元すると、マグネシウムとアルミニウムからなる層状複水酸化物の層間に直径数nmの金属コバルトナノ粒子が形成された、多孔質な複合体が得られた(図4)。また、イオン交換で挿入する際のクエン酸コバルトの濃度を変えると、還元後に得られる金属コバルトナノ粒子のサイズを制御することができることを見出した。コバルト以外にも、鉄やニッケル、銅でも金属ナノ粒子を形成することに成功している。

最近では、鉄とニッケルからなる導電性層状複水酸化物と白金ナノ粒子を複合した多孔質な電極材料の開発に取り組んでおり、相対湿度90%、室温にて10-4 S/cm程度の電子伝導性とイオン伝導性を併せ持つ材料の合成に成功している。

図3 層状複水酸化物の構造と金属コバルトナノ粒子との複合による多孔質化の模式図

図4 層状複水酸化物(LDH)上に形成された金属コバルトナノ粒子のTEM像と、複合化前後での窒素吸脱着等温線の比較

該当文献

Inokawa, H., et al. (2016). “Catalytic hydrolysis of sodium borohydride on Co catalysts.” International Journal of Energy Research 40(15): 2078-2090.

Inokawa, H., et al. (2021). “Formation of cobalt clusters in Layered Double Hydroxide.” Journal of the Ceramic Society of Japan 129(3): 175-180.

Mahpudz, A., et al. (2021). “Layered double hydroxide supported cobalt nanocluster: size control and the effect in catalytic hydrogen generation.” E3S Web Conf. 287: 02009.

Mahpudz, A., et al. (2021). “Cobalt nanoparticle supported on layered double hydroxide: Effect of nanoparticle size on catalytic hydrogen production by NaBH4 hydrolysis.” Environmental Pollution 290: 117990.

Inokawa, H., et al. (2023). Non-noble Metal Nanoparticles Formed in Interlayer of Layered Double Hydroxide for Hydrogen Production via Sodium Borohydride Hydrolysis Reaction. Proceedings of the 1st International Conference of New Energy, Singapore, Springer Nature Singapore.

 

spectol21

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ニューヨークでポスドクやってました。今は旧帝大JKJ。専門は超高速レーザー分光で、分子集合体の電子ダイナミクスや、有機固体と無機固体の境界、化学反応の実時間観測に特に興味を持っています。

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