[スポンサーリンク]

世界の化学者データベース

キャサリン・M・クラッデン Cathleen M. Crudden

[スポンサーリンク]

キャサリン・M・クラッデン (Cathleen M. Crudden、1967年11月23日–)はカナダの有機化学者である。クイーンズ大学教授 (写真:Queen’s大学化学科HPより)

経歴

1989 トロント大学 卒業 (M. Lautens 教授)
1990 トロント大学 修士号取得 (M. Lautens 教授)
1995 オタワ大学 博士号取得 (H. Alper教授)
1995-1996 イリノイ大学アーバナシャンペーン校 博士研究員 (Scott. E. Denmark教授)
1996-2000 ニューブルンスウィック大学 助教授
2000-2001 ニューブルンスウィック大学 准教授
2001-2002 ニューブルンスウィック大学 教授
2002-2007 クイーンズ大学 准教授 (Queen’s National Scholar)
2009- クイーンズ大学 教授
2013- 名古屋大学 トランスフォーマティブ生命分子研究所(ITbM) 客員教授、海外主任研究者

兼任

2011 カナダ化学会 副会長
2012 カナダ化学会 会長

受賞歴

2010 NSERC Accelerator Awarde
2010 Catalysis Society Lectureship Award
2011 Clara Benson Award
2012-2013 President, Canadian Society of Chemistry
2014 Fellow, Chemical Institute of Canada
2014-2018 Scientific Council Member, The Sainsbury Lab., UK
2015-2016 Killam Research Fellow
2017 R. U. Lemieux Award, Canadian Society for Chemistry
2017 SYNLETT Best Paper Award 2017
2018 Catalysis Award, Chemical Institution of Canada
2019 Arthur C. Cope Scholar Award

研究概要

有機ホウ素化合物を用いた不斉触媒反応の開発

効率的かつ環境への負荷が少ないホウ素化学に焦点を当てた反応開発を行っている。代表的な例として、キラルな二級ボロン酸エステルを用いた鈴木–宮浦クロスカップリング反応[1]が挙げられる。また、独自に開発したスルホン化合物を用いたC–Hアリール化反応をはじめとするクロスカップリングを駆使することで、医薬品や色素などにみられる有用な骨格であるトリアリールメタン[2]とテトラアリールメタン[3]の効率的合成法を報告している。

キラルメソポーラス材料の開発

軸不斉を有するモノマーをキラルドーパントとして用いることによりキラルメソポーラスシリカの開発に世界で初めて成功した[4]。官能基化されたキラルメソポーラスシリカは金属を担持することができる。この性質により反応後の金属スカベンジャーとしての利用や触媒の再利用が可能となるため工業化が期待される。

N-ヘテロ環状カルベン錯体による触媒反応の開発

種々のRh–NHC錯体を開発しそれらを用いたヒドロホルミル化やC–Hボリル化などを報告している[5]。また、Rh-NHC錯体に対し酸素を作用させ、酸化を起こすことなく酸素分子が配位した錯体の単離に成功している[6]

近年では、1,2,3-トリアゾリウム塩とボランから調製されるMesoionic boreniumをもちいた触媒反応の開発を行っている[7]。Mesoionic borenium触媒はFLP(frustrated Lewis pair)として働くことがわかっている。

NHC配位子を用いた自己組織化単分子層

金属–炭素結合形成による自己組織化を利用して金の単結晶表面をNHC配位子により官能基化することに成功している[8]。従来のチオール官能基化単分子層に比べ熱や酸・塩基・酸化剤により高い耐性を有する。

コメント&その他

  • 博士課程在学中に大阪大学・村井眞二研究室(当時)へ3ヶ月の留学経験がある。
  • 2006年にサバティカルで名古屋大学(ホスト: 伊丹健一郎教授・当時野依研准教授)に滞在した。
  • 2007年には、スペインのロビラ・イ・ビルジリ大学(ホスト: Elena Fernandez教授)に滞在した。
  • 名古屋大学トランスフォーマティブ生命分子研究所の海外主任研究者(共同主任研究者: 南保正和特任助教)を務めているため、年に数回日本を訪問している。
  • 日本語やカラオケなどの日本の文化を好んでいる。また、多くの日本人留学生やポスドクを受けている。
  • 世界の化学会随一の規模を誇るPacifichemにおいて組織委員(2010年)とカナダ代表(2015年)を務めた。

関連文献

  1. Imao, D.; Glasspoole, B. W.; Laberge, V. S.; Crudden, C. M. J. Am. Chem. Soc. 2009, 131, 5024. DOI: 10.1002/anie.200800153
  2. Nambo, M.; Crudden, C. M. Angew. Chem., Int. Ed. 2014, 53, 742. DOI: 10.1002/anie.201307019
  3. Nambo, M.; Yim, J. C. -H.; Fowler, K. G.; Crudden, C. M. Synlett. 2017, 28, 2936. DOI: 10.1055/s-0036-1588563
  4. MacQuarrie, S.; Thompson, M. P.; Blanc, A.; Mosey, N. J.; Lemieux, R. P.; Crudden, C. M. J. Am. Chem. Soc. 2008, 130, 14099. DOI: 10.1021/ja804866e
  5. [a] Chen, A. C.; Ren, L.; Decken, A.; Crudden, C. M. Organometallics. 2000, 19, 3459. DOI: 10.1021/om0003739 [b] Keske, E. C.; Moore, B. D.; Zenkina, O. V.; Wang, R.; Schatte, G.; Crudden, C. M. Chem. Comm. 2014, 50, 9883. DOI: 10.1039/c4cc02499k
  6. Zenkina, O. V.; Keske, E. C.; Wang, R.; Crudden, C. M. Chem., Int. Ed. 2011, 50, 8100. DOI: 10.1002/anie.201103316
  7. Eisenberger, P.; Bestvater, B. P.; Keske, E. C.; Crudden, C. M. Angew. Chem., Int. Ed. 2015, 54, 2467. DOI: 10.1002/anie.201409250
  8. Crudden, C. M.; Horton, J. H.; Ebralidze, I. I.; Zenkina, O. V.; McLean, A. B.; Drevniok, B.; She, Z.; Kraatz, H. -B.; Mosey, N. J.; Seki, T.; Keske, E. C.; Leake, J. D.; Rousina-Webb, A.; Wu, G. Nature. Chem. 2014, 6, 409. DOI: 10.1038/nchem.1891
Avatar photo

山口 研究室

投稿者の記事一覧

早稲田大学山口研究室の抄録会からピックアップした研究紹介記事。

関連記事

  1. ローランド・フィッシャー Roland A. Fischer
  2. マイケル・オキーフィ Michael O’Keeff…
  3. ジェレマイア・ジョンソン Jeremiah A. Johnson…
  4. ヴィクター・アンブロス Victor Ambros
  5. カール・ダイセロス Karl Deisseroth
  6. ノーベル化学賞・受賞者一覧
  7. アビシェック・チャッタージー Abhishek Chatterj…
  8. モーテン・メルダル Morten P. Meldal

注目情報

ピックアップ記事

  1. 天然バナジウム化合物アマバジンの奇妙な冒険
  2. 製薬系企業研究者との懇談会(オンライン)
  3. 日本化学会 第104春季年会 付設展示会ケムステキャンペーン Part1
  4. リベロマイシンA /Reveromycin A
  5. フェン・チャン Feng Zhang
  6. 化学者たちの感動の瞬間―興奮に満ちた51の発見物語
  7. 最終面接で内定をもらう人の共通点について考えてみた
  8. 免疫の生化学 (1) 2018年ノーベル医学賞解説
  9. PdCl2(dppf)
  10. ブラッドリー・ムーアBradley Moore

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2018年2月
 1234
567891011
12131415161718
19202122232425
262728  

注目情報

最新記事

求人は増えているのになぜ?「転職先が決まらない人」に共通する行動パターンとは?

転職市場が活発に動いている中でも、なかなか転職先が決まらない人がいるのはなぜでしょう…

三脚型トリプチセン超分子足場を用いて一重項分裂を促進する配置へとペンタセンクロモフォアを集合化させることに成功

第634回のスポットライトリサーチは、 東京科学大学 物質理工学院(福島研究室)博士課程後期3年の福…

2024年の化学企業グローバル・トップ50

グローバル・トップ50をケムステニュースで取り上げるのは定番になっておりましたが、今年は忙しくて発表…

早稲田大学各務記念材料技術研究所「材研オープンセミナー」

早稲田大学各務記念材料技術研究所(以下材研)では、12月13日(金)に材研オープンセミナーを実施しま…

カーボンナノベルトを結晶溶媒で一直線に整列! – 超分子2層カーボンナノチューブの新しいボトムアップ合成へ –

第633回のスポットライトリサーチは、名古屋大学理学研究科有機化学グループで行われた成果で、井本 大…

第67回「1分子レベルの酵素活性を網羅的に解析し,疾患と関わる異常を見つける」小松徹 准教授

第67回目の研究者インタビューです! 今回は第49回ケムステVシンポ「触媒との掛け算で拡張・多様化す…

四置換アルケンのエナンチオ選択的ヒドロホウ素化反応

四置換アルケンの位置選択的かつ立体選択的な触媒的ヒドロホウ素化が報告された。電子豊富なロジウム錯体と…

【12月開催】 【第二期 マツモトファインケミカル技術セミナー開催】 題目:有機金属化合物 オルガチックスのエステル化、エステル交換触媒としての利用

■セミナー概要当社ではチタン、ジルコニウム、アルミニウム、ケイ素等の有機金属化合物を“オルガチッ…

河村奈緒子 Naoko Komura

河村 奈緒子(こうむら なおこ, 19xx年xx月xx日-)は、日本の有機化学者である。専門は糖鎖合…

分極したBe–Be結合で広がるベリリウムの化学

Be–Be結合をもつ安定な錯体であるジベリロセンの配位子交換により、分極したBe–Be結合形成を初め…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP