[スポンサーリンク]

海外化学者インタビュー

第103回―「機能性分子をつくる有機金属合成化学」Nicholas Long教授

[スポンサーリンク]

第103回の海外化学者インタビューは、ニック・ロング教授です。インペリアル・カレッジ・ロンドンの化学科に所属し、応用合成化学、特にリガンドデザイン/触媒、バイオメディカル(PET、MRI、光学)イメージングプローブの合成に取り組んでいます。それではインタビューをどうぞ。

Q. あなたが化学者になった理由は?

おそらくいくつかの理由があるでしょう。(i) 色について学びたいから―色がどのようにして生まれ、どのようにして利用できるかを理解したいです。 (ii) 化合物を作りたいから―特に、臭いがしたり、爆発したり、性質が変わったりしたものを作りたいです。そして (iii) 本当に感動的な学校の先生、ケン・ジョーンズ先生がいたからです。

Q. もし化学者でなかったら、何になりたいですか?またその理由は?

建築家です。(無機)化合物の形やトポロジーが大好きで、よく箱や3Dの形を落書きしている自分に気づくことがあります。数字や角度、想像力を加えて、素晴らしい構造物をデザインするのが楽しいです。

Q. 概して化学者はどのように世界に貢献する事ができますか?

第一に教育によってです。 次世代の科学者を育成し、刺激を与えるだけでなく、化学が多くの側面を持つ中心的で不可欠な科学であることを一般の人々に教えることで、化学の重要性を理解してもらうことができます。

第二に、このような才能ある化学者を活用して、世界が直面している主要な問題や課題― 気候変動、持続可能なエネルギー・資源、医学・生物学的診断と治療―に取り組むことによってです。

Q.あなたがもし歴史上の人物と夕食を共にすることができたら誰と?またその理由は?

ライナス・ポーリングです。(単独の)ノーベル賞(化学賞と平和賞)を2つ受賞した人は、面白い意見を持っているに違いなく、夕食の会話も退屈ではないでしょう。

Q. あなたが最後に研究室で実験を行ったのはいつですか?また、その内容は?

本格的な合成化学にハマったのはもう随分昔のことです。最近は、主に学生が様々な結晶化技術を用いて化合物を精製するのを手伝うことに限られています。 一晩かけて再結晶した後、シュレンク管の底に美しい結晶のセットを見るのはスリルを感じます。

Q.もしあなたが砂漠の島に取り残されたら、どんな本や音楽が必要ですか?1つだけ答えてください。

本はHenri Charriereの『Papillon』にするでしょう。フランスの囚人と逃亡者の冒険についての偉大な、主として真実の自伝的な物語であり、2回読んだ数少ない本の1つです。

[amazonjs asin=”4309464955″ locale=”JP” title=”パピヨン 上 (河出文庫)”]

CD1枚はトリッキーで、気分次第です。クラシックならRachmaninov、ジャズならChet Baker、ロック/ブルースならVan Morrisonのコンピレーションは、いくつかの素晴らしい曲と少しのシンガロングと共に、無人島生活の浮き沈みをマシにしてくれるでしょう。

原文:Reactions –  Nicholas Long

※このインタビューは2009年2月13日に公開されました。

Avatar photo

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. 第29回「安全・簡便・短工程を実現する」眞鍋敬教授
  2. 第42回「激動の時代を研究者として生きる」荘司長三教授
  3. 第16回 結晶から結晶への化学変換 – Miguel…
  4. 第75回―「分子素子を網状につなげる化学」Omar Yaghi教…
  5. 第158回―「導電性・光学特性を備える超分子らせん材料の創製」N…
  6. 第90回―「金属錯体の超分子化学と機能開拓」Paul Kruge…
  7. 第49回―「超分子の電気化学的挙動を研究する」Angel Kai…
  8. 第67回「1分子レベルの酵素活性を網羅的に解析し,疾患と関わる異…

注目情報

ピックアップ記事

  1. ケムステV年末ライブ2023開催報告! 〜今年の分子 and 人気記事 Top 10〜
  2. STAP細胞問題から見えた市民と科学者の乖離ー前編
  3. 研究テーマ変更奮闘記 – PhD留学(前編)
  4. 次世代の産学連携拠点「三井リンクラボ柏の葉」を訪問しました!
  5. 昆虫細胞はなぜ室温で接着するのだろう?
  6. 第7回ImPACT記者懇親会が開催
  7. 危険物取扱者:記事まとめ
  8. 小松 徹 Tohru Komatsu
  9. チン・リン Qing Lin
  10. (-)-Calycanthine, (+)-Chimonanthine,(+)-Folicanthineの全合成

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2020年7月
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031  

注目情報

最新記事

ナノグラフェンの高速水素化に成功!メカノケミカル法を用いた芳香環の水素化

第660回のスポットライトリサーチは、名古屋大学大学院理学研究科(有機化学研究室)博士後期課程3年の…

第32回光学活性化合物シンポジウム

第32回光学活性化合物シンポジウムのご案内光学活性化合物の合成および機能創出に関する研究で顕著な…

位置・立体選択的に糖を重水素化するフロー合成法を確立 ― Ru/C触媒カートリッジで150時間以上の連続運転を実証 ―

第 659回のスポットライトリサーチは、岐阜薬科大学大学院 アドバンストケミストリー…

【JAICI Science Dictionary Pro (JSD Pro)】CAS SciFinder®と一緒に活用したいサイエンス辞書サービス

ケムステ読者の皆様には、CAS が提供する科学情報検索ツール CAS SciFind…

有機合成化学協会誌2025年5月号:特集号 有機合成化学の力量を活かした構造有機化学のフロンティア

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2025年5月号がオンラインで公開されています!…

ジョセップ・コルネラ Josep Cornella

ジョセップ・コルネラ(Josep Cornella、1985年2月2日–)はスペイン出身の有機・無機…

電気化学と数理モデルを活用して、複雑な酵素反応の解析に成功

第658回のスポットライトリサーチは、京都大学大学院 農学研究科(生体機能化学研究室)修士2年の市川…

ティム ニューハウス Timothy R. Newhouse

ティモシー・ニューハウス(Timothy R. Newhouse、19xx年xx月x日–)はアメリカ…

熊谷 直哉 Naoya Kumagai

熊谷 直哉 (くまがいなおや、1978年1月11日–)は日本の有機化学者である。慶應義塾大学教授…

マシンラーニングを用いて光スイッチング分子をデザイン!

第657 回のスポットライトリサーチは、北海道大学 化学反応創成研究拠点 (IC…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP