[スポンサーリンク]

海外化学者インタビュー

第19回 有機エレクトロニクスを指向した合成 – Glen Miller

第19回はニューハンプシャー大学化学科、マテリアルサイエンスプログラムのGlen Miller教授です。Miller教授はフラーレンやカーボンナノチューブを扱った有機エレクトロニクスの研究など、有機化学とナノテクノロジーの複合領域で数々のプロジェクトに携わっています。それではインタビューをどうぞ。

Q. あなたが化学者になった理由は?

14,5歳のころ、自分はジャーナリストになるのだと考えていました。その時すでに、地元紙のスポーツリポーターとして働いた経験があったのですよ。大学へ進学したらジャーナリズムを専攻しようと、そういうプログラムのある学校を既に調べ始めたりしましてね。ところが高校の進路指導の先生が、化学を履修するように進めてきたのです。ただ、大学へ入るための内申書をよく見せるために、と。あとは歴史の授業も取るように言われました。高校の化学の先生(Mr. Donohue, East Syracuse-Minoa High School)は本当に最高の先生で、ほとんど一瞬の内に「化学こそが私に向いている」と気づいてしまいました。もう一つの大きなターニングポイントは、化学科の学生として大学に入った後にありました。Petr Zuman教授の下で研究を始めたこと、この時の経験が、私に全く新しい世界を見せてくれました。その世界が、何年も何年も経ったとしても、私を興奮させ続けてくれます。

 

Q. もし化学者でなかったら、何になりたいですか?またその理由は?

先程の私の答えからして、きっとジャーナリストと答えるのだろうとお考えでしょうが、実は考古学がセカンドチョイスです。私は数年来、歴史に大きな興味を持ってきました。古代の歴史を解き明かす鍵を追い求める、というアイデアにはグッと来るものがありますね。もちろん三ヶ月も灼熱の砂漠で穴を掘り続けていれば、私の気が変わるには充分かもしれません。

Index_01

 

Q.概して化学者はどのように世界に貢献する事ができますか?

私の思うところ、シンプルに言えばそれはただ「卓越すること」。化学者という人たちはそもそも大変賢い。我々は挑戦的な問題に立ち向かい、時に医学、材料、エネルギーなど、様々な分野に影響を与えています。人類が長年向き合ってきた数々の問題解決(病気、化石燃料の枯渇、温暖化などの気候変化、飢餓…)に、化学者が寄与しないだなんて考えられません。ですから、我々ができる一番のことは、我々が行っていることに関してより卓越することです。結局のところ、我々は物理学者に多くの何かを期待することは出来ないのですから。:) (←訳者注、欧文でのニコニコマーク)

 

Q.あなたがもし歴史上の人物と夕食を共にすることができたら誰と?またその理由は?

アメリカ合衆国第2代目の大統領、John Adamsです。David McCulloughの書いたJohn Adamsの伝記を読み、私はハッとさせられました。底なしに魅了されてしまいましたね。できれば大統領を辞任した後のJohn Adamsとじっくり語り合ってみたい。彼は素晴らしく先見の明がある人間で、かつ知性も一級品でした。彼は国の統治、人権、そして繁栄という事柄についての根本的な問題を提起し論じているのですが、これらの問題は現代でもそのまま通用するものです。そうそう、Abigail Adams(John Adamsの妻)も晩餐に来てくれたりしたら、もっと良いですね。

John Adams

John Adams

 

Q. あなたが最後に研究室で実験を行ったのはいつですか?また、その内容は?

たしか6ヶ月前のデモンストレーション実験で、機械的な力を加えることで基板から基板へとカーボンナノチューブを移すことを見せようとしたのが最後です。私の周りには数人の学生がいて、(1)研究室で私と会って感動している者、(2)そんなことができるわけ無いと考え笑っていた者、がいました。幸運にも、AFMによって綺麗にナノチューブが移動したことを見せられました。それでも殆どの場合、”自分が何をやっているのかが分かっている人たち”に実験を任せてしまうものですが。

 

Q.もしあなたが砂漠の島に取り残されたら、どんな本や音楽が必要ですか?1つだけ答えてください。

本はまず、最新版の「マーチ有機化学」を持って行くと思います。砂の上に構造式を描きながら、きっとこの本から何かインスピレーションを得ることが出来るでしょう。CDは”Faith Rewarded: The Historic Season of the 2004 Boston Red Sox”です。もし永遠に無人島から救出されなくても、こうして人類のスポーツ史上最も偉大なチームによる、最も偉大な復活劇を思い出し続けることができるのですよ。そして、私はもちろん他人の不幸を見て喜んだりはしないのですが、この歴史的な功績に限って言えば、「チーム名を言うのも憚るとあるチーム(※訳者注:NYヤンキースのコトかと)」の悲惨な崩壊も決して忘れません…決して。ニューハンプシャーはボストンからほんの一時間も北に行けば着くのです。

 
原文:Reactions – Glen Miller
※このインタビューは2007年6月29日に公開されたものです。

The following two tabs change content below.
せきとも

せきとも

他人のお金で海外旅行もとい留学を重ね、現在カナダの某五大湖畔で院生。かつては専ら有機化学がテーマであったが、現在は有機無機ハイブリッドのシリカ材料を扱いつつ、高分子化学に

関連記事

  1. 第10回 ナノ構造/超分子を操る Jonathan Steed教…
  2. 第29回「安全・簡便・短工程を実現する」眞鍋敬教授
  3. 第34回「ポルフィリンに似て非なるものを研究する」忍久保洋 教…
  4. 第34回 生物学と合成化学のハイブリッド高分子材料を開発する―J…
  5. 第20回 超分子から高分子へアプローチする ― Stuart R…
  6. 第21回「有機化学で生命現象を理解し、生体反応を制御する」深瀬 …
  7. 第22回 化学の複雑な世界の源を求めてーLee Cronin教授…
  8. 第15回 触媒の力で斬新な炭素骨格構築 中尾 佳亮講師

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. ケムステ版・ノーベル化学賞候補者リスト【2016年版】
  2. 2009年5月人気化学書籍ランキング
  3. スローン賞って知っていますか?
  4. Bergfriendhof (山の墓地)
  5. 金属スカベンジャーを試してみた
  6. TBSの「未来の起源」が熱い!
  7. 大学院生のつぶやき:研究助成の採択率を考える
  8. リンダウ会議に行ってきた②
  9. 世界の「イケメン人工分子」① ~ 分子ボロミアンリング ~
  10. 神秘的な海の魅力的アルカロイド

関連商品

注目情報

注目情報

最新記事

太陽ホールディングスインターシップ

経営理念に共感し、自ら考え行動できる自律した人材と働きたい私たちは、楽しい社会を実現するという経…

抽出精製型AJIPHASE法の開発

2017年、味の素社の高橋大輔らは、ペプチド液相合成法であるAJIPHASE法にさらなる改良を加え、…

【太陽HD】”世界一の技術”アルカリ現像型ソルダーレジストの開発

ソルダーレジストは、プリント配線板や半導体パッケージ用基板の表層部分に使用されはんだ付け作業時、不要…

太陽ホールディングスってどんな会社?

私たち太陽ホールディングスグループは、パソコンやスマートフォンなどのIT機器やデジタル家電、車載用電…

「自然冷媒」に爆発・炎上の恐れ

「環境省・経済産業省の指示により、エアコンに使用されているフロン類の入れ替えが必要だ」と偽り、地球環…

効率的に新薬を生み出すLate-Stage誘導体化反応の開発

今回紹介する論文は、Late-Stage-Functionalizationの手法を開発し、新規薬剤…

Chem-Station Twitter

PAGE TOP