[スポンサーリンク]

海外化学者インタビュー

第95回―「生物学・材料化学の問題を解決する化学ツールの開発」Ivan Dmochowski教授

[スポンサーリンク]

第95回の海外化学者インタビューは、イヴァン・ドモコウスキー教授です。ペンシルバニア大学化学科に所属し、生物学や材料科学の長年の問題に対処するための化学ツールの開発に取り組んでいます。それではインタビューをどうぞ。

Q. あなたが化学者になった理由は?

物心ついたときから数学が好きで、物理世界を理解するために数学を応用することが好きでした。私はマサチューセッツ州ウッズホールの近くで育ちました。そのため、質の高い地元の科学フェアが開催され、そこでは「本物の科学者」が審査員を務めていました。独立した科学プロジェクトを企画し実行した経験は、科学研究への意欲をかきたててくれました。化学に興味を持ったのは高校時代からで、2人のとても良い化学の先生がいました。しかし、化学者についてあまり知らなかったので、化学の仕事に就こうと思ったことはありませんでした。

ハーバード大学の学部生だった私は、消去法で化学を専攻していました。3年生の時、ジョージ・ホワイトサイズ教授の研究室で働き、彼の研究室で行われている興味深いプロジェクトの幅広さと、彼が関わっている活動の幅の広さに驚かされました。これは私にとって大学の化学研究に初めて触れた機会であり、夢中になりました。化学という科学的な学問分野を使って、現実世界の難しい問題や面白い問題を解決できることにとても魅力を感じました。また、「残りの人生を学校で過ごす」ということや、広く旅をする機会があり、世界中に友人を作り、科学的な共同研究を追求できるということも魅力的でした。また、大学生であっても、自分の好きな問題を追求できること、上司のような監督がほとんどいないことも魅力的に感じました。大学時代に化学研究をしていたことがとても楽しくて、このまま続けようと思いました。化学の大学院を志望しましたが、Caltechのハリー・グレイ教授という素晴らしい指導者に出会い、化学の道を志すようになりました。

Q. もし化学者でなかったら、何になりたいですか?またその理由は?

いろいろな職業に挑戦してみたいと思っていますが、最初に好きになったのは野球でした。メジャーリーグのピッチャーになれたら楽しいと思います。子供の頃はリトルリーグをやっていましたが、ピッチャーをしている時は特に試合の日を楽しみにしていました。ピッチャーは試合の結果をコントロールできますし、マウンドにいると時間の流れが遅くなります。一球一球を大切にしなければならないという気持ちと、勝負に勝つための精神的な課題が大好きです。オフシーズンには、野球選手は地域社会で多くの良いことをする機会にも恵まれています。

Q. 概して化学者はどのように世界に貢献する事ができますか?

いい質問です。化学の仕事をしていて最も好きな一つは、様々な世界への扉を開けることです。実際、多くの仕事を行う上で、化学は素晴らしい訓練になります。一般の人々は、科学が富と健康を生み出す企業体であることを忘れていると思います。化学者は新薬の開発によって何百万人もの人々の生活を向上させてきましたし、多くの繁栄企業を生み出してきました。また化学者は、授業中の学生や一般市民の教育者としても優れています。研究室運営マネジメント面での貢献もあってか、多くの大学の学長は化学者です。化学者は、世界をより清潔かつ健康的で、より持続可能な場所にする新薬・新素材・新プロセスを設計し、その過程で何百万人もの人々を雇用することで、多くの良いことができます。しかし、世界はまた、政治の場で活躍し、政府の最高レベルの役職に就くために、化学の代表者を切実に必要としています。エネルギーとヘルスケアの分野で地球は大きな課題に直面しており、化学者は、個人としても集団としてもこれらの課題に率先して取り組まなければなりません。

Q.あなたがもし歴史上の人物と夕食を共にすることができたら誰と?またその理由は?

歴史、特に科学史を勉強するのが好きです。アルベルト・アインシュタインと食事をして、彼がどのように世界を観察し、どのように問題を解決したかを知ることができれば素晴らしいと思います。また、彼にはユーモアのセンスがあったようですから、夕食会はとても楽しいものになると思います。

Q. あなたが最後に研究室で実験を行ったのはいつですか?また、その内容は?

時々、研究室の共焦点顕微鏡を使った実験を行っています。例えば最近は、麻酔薬の作用を調べるために蛍光プローブを開発する実験をしています。研究はとても楽しいのですが、時間がないときにはもどかしい思いをします。最近は、大学院生やポスドクが研究室で実験をしているのを見るのが楽しいですね。うまくいったときには、いいデータがたくさん出てきますからね。

Q.もしあなたが砂漠の島に取り残されたら、どんな本や音楽が必要ですか?1つだけ答えてください。

生き残るために新しい言語や珍しい技術を学ぶ必要がないと仮定して、おそらくシェイクスピアの全作品のコピーを持っていくでしょう。CDを持っていくことはないでしょう。一人でいるときは、たいてい平穏と静寂を楽しんでいます。もし実際に取り残されたなら、きっかけは何であれ滞在を続けようとするでしょう。

 

原文:Reactions – Ivan Dmochowski

※このインタビューは2008年12月19日に公開されました。

 

Avatar photo

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. 第八回 自己集合ペプチドシステム開発 -Shuguang Zha…
  2. 第56回「複合ナノ材料の新機能を時間分解分光で拓く」小林洋一 准…
  3. 第120回―「医薬につながる複雑な天然物を全合成する」Richm…
  4. 第155回―「化学結合と反応性を理論化学で理解する」Sason …
  5. 第115回―「分子機械と天然物の化学合成」Ross Kelly教…
  6. 第113回―「量子コンピューティング・人工知能・実験自動化で材料…
  7. 第40回「分子エレクトロニクスの新たなプラットフォームを目指して…
  8. 第171回―「超分子・機能性ナノ粒子で実現するセラノスティクス」…

注目情報

ピックアップ記事

  1. Thomas R. Ward トーマス・ワード
  2. 海外のインターンに参加してみよう
  3. アート オブ プロセスケミストリー : メルク社プロセス研究所での実例
  4. チャンパック・チャッタージー Champak Chatterjee
  5. 化学・バイオつくば財団賞:2研究が受賞 /茨城
  6. 2002年ノーベル化学賞『生体高分子の画期的分析手法の開発』
  7. ポリメラーゼ連鎖反応 polymerase chain reaction(PCR)
  8. イー・タン Yi Tang
  9. 新発想の分子モーター ―分子機械の新たなパラダイム―
  10. マスクをいくつか試してみた

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2020年6月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930  

注目情報

最新記事

ブテンを原料に天然物のコードを紡ぐ ―新触媒が拓く医薬リード分子の迅速プログラム合成―

第 687回のスポットライトリサーチは、東京大学大学院 有機合成化学教室 (金井…

7th Compound Challengeが開催されます!【エントリー〆切:2026年03月02日】 集え、”腕に覚えあり”の合成化学者!!

メルク株式会社より全世界の合成化学者と競い合うイベント、7th Compound Challenge…

乙卯研究所【急募】 有機合成化学分野(研究テーマは自由)の研究員募集

乙卯研究所とは乙卯研究所は、1915年の設立以来、広く薬学の研究を行うことを主要事業とし、その研…

大森 建 Ken OHMORI

大森 建(おおもり けん, 1969年 02月 12日–)は、日本の有機合成化学者。東京科学大学(I…

西川俊夫 Toshio NISHIKAWA

西川俊夫(にしかわ としお、1962年6月1日-)は、日本の有機化学者である。名古屋大学大学院生命農…

市川聡 Satoshi ICHIKAWA

市川 聡(Satoshi Ichikawa, 1971年9月28日-)は、日本の有機化学者・創薬化学…

非侵襲で使えるpH計で水溶液中のpHを測ってみた!

今回は、知っているようで知らない、なんとなく分かっているようで実は測定が難しい pH計(pHセンサー…

有馬温泉で鉄イオン水溶液について学んできた【化学者が行く温泉巡りの旅】

有馬温泉の金泉は、塩化物濃度と鉄濃度が日本の温泉の中で最も高い温泉で、黄褐色を呈する温泉です。この記…

HPLCをPATツールに変換!オンラインHPLCシステム:DirectInject-LC

これまでの自動サンプリング技術多くの製薬・化学メーカーはその生産性向上のため、有…

MEDCHEM NEWS 34-4 号「新しいモダリティとして注目を浴びる分解創薬」

日本薬学会 医薬化学部会の部会誌 MEDCHEM NEWS より、新たにオープン…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP