[スポンサーリンク]

海外化学者インタビュー

第145回―「ランタニド・アクチニド化合物の合成と分光学研究」Christopher Cahill教授

[スポンサーリンク]

第145回の化学者インタビューは、クリストファー・L・ケーヒル教授です。ワシントンDCにあるジョージ・ワシントン大学化学科に所属し、ウラン含有物質の研究を行っています。それではインタビューをどうぞ。

Q. あなたが化学者になった理由は?

これは残念な答えかもしれませんが、自分は化学者になりたいと思ったことはありません。むしろ、化学者の道に落ちこぼれたのです。音楽を専攻するべく大学に進学してすぐさま、高校レベルのバンドでの有能さは、真に才能があるということを意味しないことを理解しました。最初のアドバイスセッションのとき、あてがわれたアドバイザーがたまたま化学の教授でした。私の音楽が完全に駄目になってしまったときに科学のキャリアに乗れるよう、彼は一般化学の科目を取ることを勧めてくれました。 非常に鋭いですね!私は地理学の学位を取得し、自然界のシステム、特に鉱物に夢中になりました。

Q. もし化学者でなかったら、何になりたいですか?またその理由は?

これは難しいですね。ファンタジーな回答は、ロックバンドのドラマーです。もっともらしい回答は、経済学者です。世界規模の「原因と結果」のシナリオに興味があり、異国の地を旅するのが好きです。一方、もし自分に注意力と忍耐力(そして別の収入源)があるなら、実家のリンゴ園に戻りたいですね。

Q. 現在取り組んでいることは何ですか?そしてそれをどう展開させたいですか?

ウラン含有物質の合成・反応性・分光学に取り組んでいます。核燃料サイクルの環境影響に非常に興味を持っています。私たちは原子力発電のルネッサンスに向かっており、廃棄物の管理、原子炉設計、兵器可能な物質の不拡散など、いくつかの困難な問題に対処する必要があります。実験科学を超えて政策関係者と科学者を結びつけるために、私と何人かの同僚は、GWにてカリキュラム開発に力を注いでいます。私たちは、非科学者人材向けの実験コースと、科学者向けの政策コースを開発しています。原発問題に関するほとんどの意思決定の中心は、政策(多くの場合、科学ではない)です。私たちには、両陣営の準備が必要です。このような努力によって、教育された労働力と確固たる知識の蓄積がもたらされ、あらゆるレベルで偏りのない事実に基づく意思決定ができるようになることを願っています。

Q.あなたがもし 歴史上の人物と夕食を共にすることができたら誰と?またその理由は?

トーマス・ジェファーソンです。いつもこの人には魅了されてきました。

真に博学な人で、一緒に飲むワインが美味しくなるでしょう。国家の誕生と彼の農業への関心、アメリカでのブドウ畑の始まりについて、もっと知りたく思います。知的普及性における彼の目線は、時代を超越しています。しかし、ジェンダー/人種間不平等に関する彼の見解については、ダメ出しをしたいと思います(もちろん、食後にです)。

Q. あなたが最後に研究室で実験を行ったのはいつですか?また、その内容は?

今週のことです。四塩化ウラン化合物の単結晶構造決定です。最近の実験は、ほとんどが結晶学的なものです。久しぶりにビーカーを汚してしまいました。

Q.もしあなたが砂漠の島に取り残されたら、どんな本や音楽が必要ですか?1つだけ答えてください。

音楽アルバムに対する回答は、文句なしで、ザ・バンドの 『The Last Waltz』です。ステイプルズ・シンガーズをフィーチャーした『The Weight』バージョンは、これまでに演奏されたロック音楽の中で最も奥深い作品です。このDVDについては、実は、研究グループでのホームパーティーで必見のDVDとして使っています。

[amazonjs asin=”B00DSS7BHG” locale=”JP” title=”LAST WALTZ”]

本に関しては難しいですね。フォードーの『Desert Islands on $50 a Day』がだめならば、ジョン・アーヴィングの『Prayer for Owen Meany』を持っていきます。

[amazonjs asin=”B07DQDPHHV” locale=”JP” title=”A Prayer for Owen Meany”]

Q.「Reactions」でインタビューしてほしい化学者と、その理由を教えてください。

不可能な回答は大丈夫でしょうか?それなら、ジョゼフ・プリーストリーです!様々なテーマで専門家として精通しており、信仰と科学を和解させるために働いた(闘った?)人です。この答えは、トーマス・ジェファーソンと食事をしたいという個人的願望と無意識のうちに関連しているかもしれません。特に、なぜそんなに長くフロギストン説に固執していたのか、ユニテリアン主義を創設したことをどう感じているのか、フランス革命に関して評判がよくないことは本意だったのか、を知りたいと思います。

 

原文:Reactions – Christopher Cahill

※このインタビューは2010年8月27日に公開されました。

Avatar photo

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. 第66回―「超分子集合体と外界との相互作用を研究する」Franc…
  2. 第90回―「金属錯体の超分子化学と機能開拓」Paul Kruge…
  3. 第九回 均一系触媒で石油化学に変革を目指すー山下誠講師
  4. 第168回―「化学結晶学から化学結合を理解する」Guru Row…
  5. 第103回―「機能性分子をつくる有機金属合成化学」Nichola…
  6. 第61回―「デンドリマーの化学」Donald Tomalia教授…
  7. 第44回「100%の効率を目指せば、誤魔化しのないサイエンスが見…
  8. 第115回―「分子機械と天然物の化学合成」Ross Kelly教…

注目情報

ピックアップ記事

  1. ヒバリマイシノンの全合成
  2. 有機合成化学協会誌2020年2月号:ナノポーラス スケルトン型金属触媒・フッ化アルキル・2,3,6-三置換ピリジン誘導体・ペプチドライゲーション・平面シクロオクタテトラエン・円偏光発光
  3. AIを搭載した化学物質毒性評価サービス「Chemical Analyzer」の販売を開始
  4. 石油化学プラントの設備内部でドローンを飛行する実証事業を実施
  5. 新しい構造を持つゼオライトの合成に成功!
  6. フランツ=ウルリッヒ・ハートル Franz-Ulrich Hartl
  7. トリニトロトルエン / Trinitrotoluene (TNT)
  8. DNAに人工塩基対を組み入れる
  9. ヘロナミドA Heronamide A
  10. 福井県内において一酸化炭素中毒事故(軽症2名)が発生

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2021年4月
 1234
567891011
12131415161718
19202122232425
2627282930  

注目情報

最新記事

水-有機溶媒の二液相間電子伝達により進行する人工光合成反応

第662回のスポットライトリサーチは、京都大学 大学院工学研究科 物質エネルギー化学専攻 阿部竜研究…

ケムステイブニングミキサー 2025 報告

3月26日から29日の日本化学会第105春季年会に参加されたみなさま、おつかれさまでした!運営に…

【テーマ別ショートウェビナー】今こそ変革の時!マイクロ波が拓く脱炭素時代のプロセス革新

■ウェビナー概要プロセスの脱炭素化及び効率化のキーテクノロジーである”マイクロ波…

予期せぬパラジウム移動を経る環化反応でベンゾヘテロールを作る

1,2-Pd移動を含む予期せぬ連続反応として進行することがわかり、高収率で生成物が得られた。 合…

【27卒】太陽HD研究開発 1day仕事体験

太陽HDでの研究開発職を体感してみませんか?私たちの研究活動についてより近くで体験していただく場…

熱がダメなら光当てれば?Lugdunomycinの全合成

光化学を駆使した、天然物Lugdunomycinの全合成が報告された。紫外光照射による異性化でイソベ…

第59回有機反応若手の会

開催概要有機反応若手の会は、全国の有機化学を研究する大学院生を中心とした若手研究…

多環式分子を一挙に合成!新たなo-キノジメタン生成法の開発

第661回のスポットライトリサーチは、早稲田大学大学院先進理工学研究科(山口潤一郎研究室)博士課程1…

可視光でスイッチON!C(sp3)–Hにヨウ素をシャトル!

不活性なC(sp3)–H結合のヨウ素化反応が報告された。シャトル触媒と光励起Pdの概念を融合させ、ヨ…

化学研究者がAIを味方につける時代―専門性を武器にキャリアを広げる方法―

化学の専門性を活かしながら、これからの時代に求められるスキルを身につけたい——。…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP