[スポンサーリンク]

海外化学者インタビュー

第15回 有機合成化学者からNature誌編集者へ − Andrew Mitchinson博士

[スポンサーリンク]

Mitchinson博士は、世界の化学者インタビュー「Reactions」(当翻訳記事の原文)が掲載されている「The Septical Chymist (the nature chemistry blog)」のレギュラー執筆者の一人です。編集者自ら質問に答えてみた第一号、それではインタビューをどうぞ。

 

Q. あなたが化学者になった理由は?

私が化学に本当にハマった原因は、子供の頃に買ってもらった(おもちゃの)化学実験セットだと思います。それで仕込んだ本当に一発目の実験で、あろうことかフラスコを吹き飛ばしてしまいました。今思えば、そんなことを格好いいと思っていたなんてちょっと恥ずかしいですけどね。(これから化学者になろうという皆さんへ:フラスコを吹き飛ばすことは格好良くもなければ賢いことでもありません)

 

Q. もし化学者でなかったら、何になりたいですか?またその理由は?

余暇には(ゴスペルの)クワイアに入って歌っているのですが、みなさんが想像するような堅苦しいものではないんですよ。流行りの歌を面白おかしくアレンジ(私がやります)して歌うんです。同様に「それらしい」真面目な歌も歌いますが。というわけで、お金の問題が一切無いのであれば、ミュージシャンとしてのキチンとした訓練を受けてその道でやっていきたいですね。

Harlem Gospel New York

 

Q.概して化学者はどのように世界に貢献する事ができますか?

便利な何かを創り出すこと。例えば何か良い薬を作って社会に貢献したい、という思いから製薬企業を選んだ化学者が大勢いることを私はよく知っています。自分が初のアルツハイマー治療薬を創りだした化学者になったとしたら?想像してみてください、とてつもなく素晴らしいことですよね。

 

Q.あなたがもし歴史上の人物と夕食を共にすることができたら誰と?またその理由は?

(ヒーラ細胞の)ヘンリエッタ・ラックス(Henrietta Lacks)はどうでしょうね。世界初の「不死の細胞」を提供し続けています。彼女自身がその細胞によって薬学および生物学の研究に一体どれだけの貢献を果たして来たかを知る術はありません。それを知ったらどう思うか、ぜひ聞いてみたい。

Henrietta Lacks

Henrietta Lacks

 

Q. あなたが最後に研究室で実験を行ったのはいつですか?また、その内容は?

一年半前くらいだと思いますが、何だったか思い出せません。私は企業の有機合成化学者で、私がいた研究所は会社の方針で閉鎖され、350人にも及ぶ不要人員を生み出したのです。ですから当時は他に心配な事が多く有り過ぎて、どんな実験をしていたか、まったく印象に残っていないのです。

 

Q.もしあなたが砂漠の島に取り残されたら、どんな本や音楽が必要ですか?1つだけ答えてください。

英国人ならではのチョイスをご紹介しましょう。まず、本は「Behind The Scenes At The Museum」(Kate Atkinson著)。この本は家族生活のほろ苦い一面を主に子供の視点から書いたものです。音楽CDは「Tropical Brainstorm」、実力はあるのに評価されなかったシンガーソングライターKirsty MacCollの最後のアルバムです。(でも私の持っているMassive Attackのアルバム、「Blue Lines」も持って行きたいですね。)

原文:Reactions – Andy Mitchinson

※このインタビューは2007年6月1日に公開されたものです

せきとも

投稿者の記事一覧

他人のお金で海外旅行もとい留学を重ね、現在カナダの某五大湖畔で院生。かつては専ら有機化学がテーマであったが、現在は有機無機ハイブリッドのシリカ材料を扱いつつ、高分子化学に

関連記事

  1. 第三回 ナノレベルのものづくり研究 – James …
  2. 第13回 化学を楽しみ、創薬に挑み続ける ―Derek Lowe…
  3. 第142回―「『理想の有機合成』を目指した反応開発と合成研究」山…
  4. 第五回 超分子デバイスの開発 – J. Fraser…
  5. 第139回―「超高速レーザを用いる光化学機構の解明」Greg S…
  6. 第26回 有機化学(どうぐばこ)から飛び出す超分子(アプリケーシ…
  7. 第23回「化学結合の自在切断 ・自在構築を夢見て」侯 召民 教授…
  8. 第60回―「エネルギー・環境化学に貢献する金属-有機構造体」Ma…

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. 陰山 洋 Hiroshi Kageyama
  2. 徹底的に電子不足化した有機π共役分子 ~高機能n型有機半導体材料の創製を目指して~
  3. 研究者・技術系ベンチャー向けアクセラレーションプログラム”BRAVE”参加者募集
  4. 第8回慶應有機化学若手シンポジウム
  5. ロバート・フィップス Robert J. Phipps
  6. 糖鎖合成化学は芸術か?
  7. 水入りフラーレンの合成
  8. 可視光照射でトリメチルロックを駆動する
  9. 医薬品有効成分の新しい結晶化経路を発見!
  10. 帝人、EV向けメンブレンのラインを拡充

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2011年2月
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
28  

注目情報

最新記事

フローマイクロリアクターを活用した多置換アルケンの効率的な合成

第610回のスポットライトリサーチは、京都大学大学院理学研究科(依光研究室)に在籍されていた江 迤源…

マリンス有機化学(上)-学び手の視点から-

概要親しみやすい会話形式を用いた現代的な教育スタイルで有機化学の重要概念を学べる標準教科書.…

【大正製薬】キャリア採用情報(正社員)

<求める人物像>・自ら考えて行動できる・高い専門性を身につけている・…

国内初のナノボディ®製剤オゾラリズマブ

ナノゾラ®皮下注30mgシリンジ(一般名:オゾラリズマブ(遺伝子組換え))は、A…

大正製薬ってどんな会社?

大正製薬は病気の予防から治療まで、皆さまの健康に寄り添う事業を展開しています。こ…

一致団結ケトンでアレン合成!1,3-エンインのヒドロアルキル化

ケトンと1,3-エンインのヒドロアルキル化反応が開発された。独自の配位子とパラジウム/ホウ素/アミン…

ベテラン研究者 vs マテリアルズ・インフォマティクス!?~ 研究者としてMIとの正しい向き合い方

開催日 2024/04/24 : 申込みはこちら■開催概要近年、少子高齢化、働き手の不足…

第11回 慶應有機化学若手シンポジウム

シンポジウム概要主催:慶應有機化学若手シンポジウム実行委員会共催:慶應義塾大…

薬学部ってどんなところ?

自己紹介Chemstationの新入りスタッフのねこたまと申します。現在は学部の4年生(薬学部)…

光と水で還元的環化反応をリノベーション

第609回のスポットライトリサーチは、北海道大学 大学院薬学研究院(精密合成化学研究室)の中村顕斗 …

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP