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化学者のつぶやき

不斉アリル位アルキル化反応を利用した有機合成

trostphoto.jpg

 先日、スタンフォード大学のトロスト教授(Barry M. Trost)の講演を聞いてきました。有機合成化学の分野で研究をなされている人では知らない人がいないくらい著名な研究者です。主に有機金属を用いた合成反応の開発、中でも辻-Trost反応、Trost不斉アリル位アルキル化反応(AAA Reaction)は人名反応にもなっており、現在までに820報以上の論文を報告しています。

内容はやはりAAA Reactionに関する話でした。全部でおよそ60ページほどのスライドを用意しておりましたが、1ページ1ページがほとんどJ. A,. Chem. Socなどのジャーナルのコミュニケーションとして投稿してある内容。また、65歳を過ぎてもなお、はきはきとした勢いのある講演。おそれいりました。

その中でも、最近達成されたのがタミフルの不斉全合成。もちろんAAA Reactionを利用しています。

CStamiflu3.gif

 いまや知らない人がいないロシュのインフルエンザの治療薬Tamiflu。ロシュはTamifluを11段階で天然からとれるシキミ酸から全合成をおこなっていますが、非常に効率的なルートであるもののいまだ改良点を残しています。そのため多くの有機合成化学者によって合成研究がなされている化合物です。今までCorey、柴崎、福山、Kannら4グループから新しい合成法が報告されています。そのなかでも最も効率のよい方法と考えられているハーバード大Coreyのタミフルの合成は10段階でした。

 今回のTrost教授の合成はCoreyが6段階かけて合成した中間体をなんと3段階(2段階?忘れました。)で合成し、さらにその後の反応の収率を改良の後、合計8段階(正確には忘れました。すみません)でタミフルの全合成を達成されていました。しばらくすれば、この論文が報告されることでしょう。その時にまた詳しく述べたいと思います。

 関連リンク

Trost Group スタンフォード大・Trost研究室のホームページ

Barry Trost – Wikipedia

アフラトキシン全合成 – Wikipedia

辻-Trost反応 (ODOOS)

Atom Economy – Wikipedia

Trost asymmetric allylic alkylation – Wikipedia

Trost Ligand – Wikipedia

トムソン:2007年ノーベル賞候補者を発表

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cosine

cosine

博士(薬学)。Chem-Station副代表。現在国立大学教員として勤務中。専門は有機合成化学、主に触媒開発研究。 関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。 素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

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