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239th ACS National Meeting に行ってきた

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ACS National Meetingとはアメリカ化学会(American Chemical Society, ACS)が主催する半年に一回の定例学会で、日本化学会年会のアメリカバージョンに相当するものです。当然ながらACSに加入していることが参加の必須要件になります。

今回は3月に行われました239th ACS National Meeting & Expositionの学会現場を紹介してみます。日本の皆さんにとってはそうそう気軽に参加出来ないMeetingでしょうから、是非この機会に雰囲気を感じとってもらえれば幸いに思います。

学会会場

 

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今回はサンフランシスコで開催されていました。サンフランシスコは、Golden Gate Bridgeがあったりケーブルカーが走っていることでも有名です。坂が多いながら、町並みは大変雰囲気が良いです。日本から距離的に近いためか、日本人化学者もたくさん見かけたように思います。

ACS Meetingはダウンタウン近くのMoscone Centerという展示場を借りきって行われました。
サンフランシスコの中心部ということもあって、ほとんどのホテルから近く、とても便利な立地です。ちょっと遠めのホテルからは参加者用シャトルバスも出ていました。お金次第なのでしょうが、こういうちゃんとした展示場が借りられるのならば、設備的な意味ではベターにも思えます。

Registration

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基本的には数ヶ月前にWebで参加・発表登録を予め行っておく必要があります。Webフォームからプログラムやネームタグを郵送してもらうかどうか、プログラムは電子版にするか否かなどが選べるようになっています。
参加登録と費用支払さえちゃんとしてあれば、現地でも冊子体プログラムとネームタグを受け取ることができます。それと一緒に、フリードリンク券や企業ブースのプレゼント抽選券などももらうことが出来ます。

インターネットスペース

 

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会場にはあちこちにインターネット接続スペース(ソファ付きで)が設けられており、参加者が誰でも無料でネットを使えるようになっています。あちこちでメールやTwitterを使ったコミュニケーションがなされていました。
ただラップトップユーザ必須の電源プラグが少なく、電池が持たない古いPCを使っていた身には使えるスペースが限られてしまい、そこがやや残念でした。Wi-Fiも飛んでいましたが、こちらも残念ながらあまり良好ではありませんでした。

Exposition

 

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企業ブースと各種展示です。東京化成、丸善などの日本企業からの展示もありました。

講演・ポスター会場およびSCI-MIX

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講演・ポスター会場ともども十分なスペースがあり、比較的ゆったりと発表を見聞きすることができました。
2日目の夜には、SCI-MIX(サイミックス)と呼ばれるポスター発表会があります。希望者には通常発表に加えて、SCI-MIXの場で二度目のポスター発表を行えるというものです。ここではビールが無料配布されるので、普通のポスター発表に比べてかなりくだけた感じです。とはいえ通常発表と同じ化学が展示されるので、勿論内容はちゃんとしています。

C&ENの表紙に自分を載っけようサービス

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有料でC&ENの表紙に自分を載せた写真を作ってくれるという、合成写真サービスまでありました(笑)。なんか観光地でありそうなサービスですね。日本化学会でもあれば面白いのに(笑)

Twitterでの学会実況

twitter_acs.gif#ACS_SFというタグで参加者たちによる実況つぶやきが行われていました。

他の講演とかぶっていて聞けなかった講演、全く注目してなかったインパクト抜群の発表などについてリアルタイムで流れてきており、情報収集にかなりの助けとなりました。残念ながら聞き逃してしまったのですが、ストリキニーネ6段階で全合成した」という、ちょっと信じがたい驚愕情報まで流れてきていました。

こういうのを見るにつけ、やはり現状、世界の最速情報源はTwitterなのだな、と感じざるを得ません。

まとめ

何もかもが巨大なアメリカではありますが、ACS Meeting自体は意外にもこぢんまりしていた、というのが率直な印象でした。

コンパクトに限られた会場スペースで行われているのも一つなんでしょうが、日本全土から集まってくる日本化学会/薬学会年会と異なり、アメリカ全土から集まっては来ないのかもしれません。西海岸は西、東海岸は東でそれぞれ独自の研究ネットワークを持っているそうなので、それぞれが必要に応じてやってる、そういう文化なのかも知れないですね。あと日本では度々聞かれる「ボスの権力を見せつけるため義務的に多数参加させる」という雰囲気もそこまで感じられず、実利的な印象です。
17000人ほどの参加者がいたようで、講演のレベルも総じて高く、アメリカの研究者層の厚さを感じさせるに十分な学会でした。

 

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cosine

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博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

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