[スポンサーリンク]

一般的な話題

239th ACS National Meeting に行ってきた

[スポンサーリンク]

ACS National Meetingとはアメリカ化学会(American Chemical Society, ACS)が主催する半年に一回の定例学会で、日本化学会年会のアメリカバージョンに相当するものです。当然ながらACSに加入していることが参加の必須要件になります。

今回は3月に行われました239th ACS National Meeting & Expositionの学会現場を紹介してみます。日本の皆さんにとってはそうそう気軽に参加出来ないMeetingでしょうから、是非この機会に雰囲気を感じとってもらえれば幸いに思います。

学会会場

 

P1020915.JPGP1020914.JPGP1020904.JPGP1020917.JPG

今回はサンフランシスコで開催されていました。サンフランシスコは、Golden Gate Bridgeがあったりケーブルカーが走っていることでも有名です。坂が多いながら、町並みは大変雰囲気が良いです。日本から距離的に近いためか、日本人化学者もたくさん見かけたように思います。

ACS Meetingはダウンタウン近くのMoscone Centerという展示場を借りきって行われました。
サンフランシスコの中心部ということもあって、ほとんどのホテルから近く、とても便利な立地です。ちょっと遠めのホテルからは参加者用シャトルバスも出ていました。お金次第なのでしょうが、こういうちゃんとした展示場が借りられるのならば、設備的な意味ではベターにも思えます。

Registration

P1020877.JPGP1020875.JPG

基本的には数ヶ月前にWebで参加・発表登録を予め行っておく必要があります。Webフォームからプログラムやネームタグを郵送してもらうかどうか、プログラムは電子版にするか否かなどが選べるようになっています。
参加登録と費用支払さえちゃんとしてあれば、現地でも冊子体プログラムとネームタグを受け取ることができます。それと一緒に、フリードリンク券や企業ブースのプレゼント抽選券などももらうことが出来ます。

インターネットスペース

 

P1020940.JPGP1020913.JPG

会場にはあちこちにインターネット接続スペース(ソファ付きで)が設けられており、参加者が誰でも無料でネットを使えるようになっています。あちこちでメールやTwitterを使ったコミュニケーションがなされていました。
ただラップトップユーザ必須の電源プラグが少なく、電池が持たない古いPCを使っていた身には使えるスペースが限られてしまい、そこがやや残念でした。Wi-Fiも飛んでいましたが、こちらも残念ながらあまり良好ではありませんでした。

Exposition

 

P1020928.JPGP1020938.JPGP1020944.JPGP1020947.JPGP1020950.JPGP1020952.JPG

企業ブースと各種展示です。東京化成、丸善などの日本企業からの展示もありました。

講演・ポスター会場およびSCI-MIX

P1020929.JPGP1020937.JPGP1020906.JPG

講演・ポスター会場ともども十分なスペースがあり、比較的ゆったりと発表を見聞きすることができました。
2日目の夜には、SCI-MIX(サイミックス)と呼ばれるポスター発表会があります。希望者には通常発表に加えて、SCI-MIXの場で二度目のポスター発表を行えるというものです。ここではビールが無料配布されるので、普通のポスター発表に比べてかなりくだけた感じです。とはいえ通常発表と同じ化学が展示されるので、勿論内容はちゃんとしています。

C&ENの表紙に自分を載っけようサービス

P1020954.JPG

有料でC&ENの表紙に自分を載せた写真を作ってくれるという、合成写真サービスまでありました(笑)。なんか観光地でありそうなサービスですね。日本化学会でもあれば面白いのに(笑)

Twitterでの学会実況

twitter_acs.gif#ACS_SFというタグで参加者たちによる実況つぶやきが行われていました。

他の講演とかぶっていて聞けなかった講演、全く注目してなかったインパクト抜群の発表などについてリアルタイムで流れてきており、情報収集にかなりの助けとなりました。残念ながら聞き逃してしまったのですが、ストリキニーネ6段階で全合成した」という、ちょっと信じがたい驚愕情報まで流れてきていました。

こういうのを見るにつけ、やはり現状、世界の最速情報源はTwitterなのだな、と感じざるを得ません。

まとめ

何もかもが巨大なアメリカではありますが、ACS Meeting自体は意外にもこぢんまりしていた、というのが率直な印象でした。

コンパクトに限られた会場スペースで行われているのも一つなんでしょうが、日本全土から集まってくる日本化学会/薬学会年会と異なり、アメリカ全土から集まっては来ないのかもしれません。西海岸は西、東海岸は東でそれぞれ独自の研究ネットワークを持っているそうなので、それぞれが必要に応じてやってる、そういう文化なのかも知れないですね。あと日本では度々聞かれる「ボスの権力を見せつけるため義務的に多数参加させる」という雰囲気もそこまで感じられず、実利的な印象です。
17000人ほどの参加者がいたようで、講演のレベルも総じて高く、アメリカの研究者層の厚さを感じさせるに十分な学会でした。

 

Avatar photo

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. 【5月開催】 【第二期 マツモトファインケミカル技術セミナー開催…
  2. 有機合成化学協会誌2020年9月号:キラルナフタレン多量体・PN…
  3. 転位のアスレチック!(–)-Retigeranic acid A…
  4. 環状ペプチドの効率的な化学-酵素ハイブリッド合成法の開発
  5. ナノチューブを簡単にそろえるの巻
  6. 【第48回有機金属化学セミナー】講習会:ものづくりに使える触媒反…
  7. 細胞の中を旅する小分子|第二回
  8. 生体深部イメージングに有効な近赤外発光分子の開発

注目情報

ピックアップ記事

  1. PCC/PDC酸化 PCC/PDC Oxidation
  2. 2001年ノーベル化学賞『キラル触媒を用いる不斉水素化および酸化反応の開発』
  3. スタニルリチウム調製の新手法
  4. 核酸医薬の物語3「核酸アプタマーとデコイ核酸」
  5. 研究生活の心構えー修士課程、博士課程に進学したあなたへー
  6. L-RAD:未活用の研究アイデアの有効利用に
  7. シューミン・リー Shu-Ming Li
  8. 住友化学、液晶関連事業に100億円投資・台湾に新工場
  9. 有機合成化学協会誌2019年2月号:触媒的脱水素化・官能性第三級アルキル基導入・コンプラナジン・アライン化学・糖鎖クラスター・サリチルアルデヒド型イネいもち病菌毒素
  10. パール・クノール ピロール合成 Paal-Knorr Pyrrole Synthesis

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2010年3月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293031  

注目情報

最新記事

ペロブスカイト太陽電池開発におけるマテリアルズ・インフォマティクスの活用

開催日時 2024.09.11 15:00-16:00 申込みはこちら開催概要持続可能な…

第18回 Student Grant Award 募集のご案内

公益社団法人 新化学技術推進協会 グリーン・サステイナブルケミストリーネットワーク会議(略称:JAC…

杉安和憲 SUGIYASU Kazunori

杉安和憲(SUGIYASU Kazunori, 1977年10月4日〜)は、超分…

化学コミュニケーション賞2024、候補者募集中!

化学コミュニケーション賞は、日本化学連合が2011年に設立した賞です。「化学・化学技術」に対する社会…

相良剛光 SAGARA Yoshimitsu

相良剛光(Yoshimitsu Sagara, 1981年-)は、光機能性超分子…

光化学と私たちの生活そして未来技術へ

はじめに光化学は、エネルギー的に安定な基底状態から不安定な光励起状態への光吸収か…

「可視光アンテナ配位子」でサマリウム還元剤を触媒化

第626回のスポットライトリサーチは、千葉大学国際高等研究基幹・大学院薬学研究院(根本研究室)・栗原…

平井健二 HIRAI Kenji

平井 健二(ひらい けんじ)は、日本の化学者である。専門は、材料化学、光科学。2017年より…

Cu(I) の構造制御による π 逆供与の調節【低圧室温水素貯蔵への一歩】

2024年 Long らは、金属有機構造体中の配位不飽和な三配位銅(I)イオンの幾何構造を系統的に調…

可視光活性な分子内Frustrated Lewis Pairを鍵中間体とする多機能ボリルチオフェノール触媒の開発

第 625 回のスポットライトリサーチは、名古屋大学大学院 工学研究科 有機・高…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP