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村橋 俊一 Shun-Ichi Murahashi

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村橋俊一(むらはししゅんいち、1937年5月12日)は、日本の有機化学者である。大阪大学名誉教授、日本化学会会長(2005年)(写真出典: 日本化学会化学だいすきクラブ

経歴

1961 大阪大学工学部応用化学科  卒業
1963 大阪大学大学院工学研究科  修士課程修了
1967 大阪大学工学博士  学位授与(守谷一郎 教授)
1968-1970 コロンビア大学  博士研究員(Ronald Breslow  教授)
1963 大阪大学  助手  基礎工学部
1972 大阪大学  助教授  基礎工学部
1979 大阪大学  教授  基礎工学部
1997 大阪大学大学院  教授  基礎工学研究科化学専攻
2001 大阪大学 定年退官
2001 大阪大学 名誉教授
2001 岡山理科大学  客員教授

兼任
1992 レンヌ大学  客員教授
1995-2000 九州大学 有機化学基礎研究センター 教授
1997 フランス P.M. Curie 大学  客員教授
1998-1999 大阪大学  評議員
2000-2005 日本学術会議  会員
2005-2011 日本学術会議連携会員

 

受賞歴

1970 日本化学会進歩賞
1991 日本学術振興会  NSERC Lectureship
1995 日本化学会賞
1995 Rennes 大学名誉博士号
1996 Merck-Schuhardt Lectureship
2002 フンボルト賞
2003 Minakata-Avogadro 講演賞
2005 有機合成化学特別賞
2010 日本学士院賞
2013 瑞宝中受賞

 

研究概要

1.カルベンの閃光分解の最初の検出[1]

有機化学において非常に短寿命な中間体であるカルベンを、閃光光分解法(flash photolysis)を用いて初めて検出。カルベン反応機構の理解に大きな一歩をもたらした画期的研究。

2.有機リチウムを用いるクロスカップリング反応の開発[2]

従来困難とされていた有機リチウム化合物を用いたクロスカップリング反応を開発。高い反応性を持つ有機リチウム種を遷移金属触媒下で制御するという新しいパラダイムを提示し、合成化学の幅を大きく広げた。

3.遷移金属触媒によるC(sp³)–H結合の活性化の発見[3]

不活性と考えられていたC(sp³)–H結合を、遷移金属触媒により選択的に活性化する手法を確立。C–H結合変換による分子多様化の可能性を示し、以後のC–H活性化研究の先駆けとなった。

4.ルテニウム触媒による酸化反応の開発[4,5]

環境調和型酸化剤を用いたルテニウム触媒による酸化反応を多数開発。特にアルコールからカルボニル化合物への高選択的酸化や、炭素–炭素二重結合の酸化的官能基化などにおいて重要な成果を挙げている。

5.ニトロンの触媒的合成とその反応の開発[6]

ニトロンを触媒的に合成する方法論を確立するとともに、それらを用いた1,3-双極子付加反応などの応用を展開。ニトロン化学の合成的有用性を飛躍的に高めた。

6.有機触媒フラビンの酸化反応の開発[7]

ビタミンB₂誘導体であるフラビンを有機触媒として活用し、環境調和的かつ高選択的な酸化反応を実現。生体模倣型の触媒反応のデザインに新たな方向性を提示した。

7.Cross Dehydrogenative Coupling (CDC)の開発[8]

水素を除去することによって直接C–C結合を形成する「脱水素型クロスカップリング反応(CDC)」を提案し、実現。酸化的条件下での炭素–炭素結合形成法として高い注目を集め、多くのフォロワー研究を生んだ。

 

名言集

 

関連動画

 

関連文献

  1. Moritani, I.; Murahashi, S.-I.; Ashitaka, H.; Kimura, K.; Tsubomura, H. J. Am. Chem. Soc. 1968, 90, 5918–5919. DOI:10.1021/ja01023a058

  2. Yamamura, M.; Moritani, I.; Murahashi, S.-I. J. Organomet. Chem. 1975, 91, C39–C42. DOI:10.1016/S0022-328X(00)89636-9

  3. Murahashi, S.-I.; Hirano, T.; Yano, T. J. Am. Chem. Soc. 1978, 100, 348–350. DOI:10.1021/ja00469a093

  4. Murahashi, S.-I. Angew. Chem., Int. Ed. 1995, 34, 2443–2465. DOI:10.1002/anie.199524431

  5. Murahashi, S.-I.; Zhang, D. Chem. Soc. Rev. 2008, 37, 1490–1501. DOI:10.1039/B706709G

  6. Murahashi, S.-I.; Imada, Y. Chem. Rev. 2019, 119, 4684–4716. DOI:10.1021/acs.chemrev.8b00476

  7. Iida, H.; Imada, Y.; Murahashi, S.-I. Org. Biomol. Chem. 2015, 13, 7599–7613. DOI:10.1039/C5OB00854A

  8. Murahashi, S.-I.; Komiya, N.; Terai, H.; Nakae, T. J. Am. Chem. Soc. 2003, 125, 15312–15313. DOI:10.1021/ja0390303

 

関連書籍

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博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

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Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

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