[スポンサーリンク]

ケムステニュース

相次ぐ”業務用洗剤”による事故

[スポンサーリンク]

 阪神電鉄の座席に座った乗客が尻にやけどを負った事件で、兵庫県警甲子園署は28日、業務用洗剤を誤ってこぼしたとして、過失傷害の疑いで大阪市の20代の男性会社員を書類送検した。 (引用:9月28日時事通信社)

東京のJR新宿駅で8月26日、アルミ缶から液体が飛び散り、20代の女性が軽いやけどを負った事故。缶の中身はアルカリ性の液体で、洗剤などの可能性が高いことがわかった。(引用:8月27日FNNニュース)

以前ケムステでも業務用洗剤による事故を紹介しましたが、ユーザーの認識不足によって事故は続いています。業務用洗剤といってもいろいろなタイプがあり単に市販よりも量が多い製品も業務用洗剤といえますが、問題なのはアルカリ性業務用洗剤で塩基の濃度が市販よりも高いタイプで、化学やけどの被害が出たり、アルミ缶と反応して水素が発生し膨張・爆発したりする事故が起きています。

そこで実際に、どれくらいの塩基が業務用洗剤には含まれているか調べてみました。

家庭用と業務用の比較

1のマジックリンはずっと中性だと思っていましたが、しっかり塩基性の成分が含まれています。年末年始の大掃除では2のレンジクリーナーを使っていますが、2%の水酸化ナトリウムが含まれていて手袋必須と書かれています。筆者の対策が甘かったのか、強い手荒れや目の違和感を感じたこともあります。3は、モノタロウで高い満足度を得ている業務用洗剤で、10倍から100倍希釈推奨の洗剤です。最大水酸化ナトリウムと水酸化カリウム合わせて10%含まれているため、非常に強力だと言えます。4は、さらに濃度が高い20%の水酸化ナトリウム含有しているため、劇物となり書類による手続きが必要です。どちらの業務用洗剤も洗剤としては高額ではないことから、主成分の塩基以外に特別な成分は含まれていないようです。また、先述の二つの事件ではどの程度の塩基濃度の製品だったのかはわかりませんが、被害の大きさから塩基が高濃度の洗剤であったことは確実だと思います。

キッチンの油汚れは動物性油脂であり強塩基による鹸化反応で分解することで除去され、台所がきれいになります。そのため、塩基濃度が高いほうが効率よく掃除できる=高濃度のアルカリ性の業務用洗剤が優れているということになります。その分危険性が高く、ブラシでこすると飛沫がたくさん出ますし、高所の洗浄ではもろに人にかかってしまうというある意味化学実験よりも危険な環境で化学物質を使ていると言えます。そのため、マスク、ゴーグル、手袋、作業着など十分な装備が必須であるから業務用なのであり、ちょっと家で使いたいから適当な容器で持ち運ぶことは、絶対にあってはならないことだと思います。

この洗剤の問題以外にも”業務用”=とりあえず良いものという風潮がありますが、なぜ業務用なのかを考えてから使うべきではないでしょうか。

関連書籍

[amazonjs asin=”4846118037″ locale=”JP” title=”化学毒物マヒ”] [amazonjs asin=”483151361X” locale=”JP” title=”探検! ものづくりと仕事人―シャンプー・洗顔フォーム・衣料用液体洗剤”]

洗剤に関連するケムステ記事

Avatar photo

Zeolinite

投稿者の記事一覧

ただの会社員です。某企業で化学製品の商品開発に携わっています。社内でのデータサイエンスの普及とDX促進が個人的な野望です。

関連記事

  1. 化学企業のグローバル・トップ50が発表【2022年版】
  2. 理研、119番以降の「新元素」実験開始へ 露と再び対決 ニホニウ…
  3. 変わりゆく化学企業の社名
  4. 5年で57億円かかるエルゼビアの論文閲覧システムの契約交渉で大学…
  5. 人工タンパク質、合成に成功 北陸先端大、エイズ薬剤開発に道
  6. イグノーベル賞2020が発表 ただし化学賞は無し!
  7. バイオディーゼル燃料による大気汚染「改善」への影響は……
  8. 【エーザイ】新規抗癌剤「エリブリン」をスイスで先行承認申請

注目情報

ピックアップ記事

  1. 黒板に描くと着色する「魔法の」チョークを自作してみました
  2. どっちをつかう?:cooperateとcollaborate
  3. 有機色素の自己集合を利用したナノ粒子の配列
  4. ピーター・ジーバーガー Peter H. Seeberger
  5. 果たして作ったモデルはどのくらいよいのだろうか【化学徒の機械学習】
  6. CTCLS、製薬業界向けに医薬品の探索研究に特化した電子実験ノートブックを販売
  7. GFPをも取り込む配位高分子
  8. カニッツァロ反応 Cannizzaro Reaction
  9. ブルック転位 Brook Rearrangement
  10. ジェニファー・ダウドナ Jennifer Doudna

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2018年10月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293031  

注目情報

最新記事

7th Compound Challengeが開催されます!【エントリー〆切:2026年03月02日】 集え、”腕に覚えあり”の合成化学者!!

メルク株式会社より全世界の合成化学者と競い合うイベント、7th Compound Challenge…

乙卯研究所【急募】 有機合成化学分野(研究テーマは自由)の研究員募集

乙卯研究所とは乙卯研究所は、1915年の設立以来、広く薬学の研究を行うことを主要事業とし、その研…

大森 建 Ken OHMORI

大森 建(おおもり けん, 1969年 02月 12日–)は、日本の有機合成化学者。東京科学大学(I…

西川俊夫 Toshio NISHIKAWA

西川俊夫(にしかわ としお、1962年6月1日-)は、日本の有機化学者である。名古屋大学大学院生命農…

市川聡 Satoshi ICHIKAWA

市川 聡(Satoshi Ichikawa, 1971年9月28日-)は、日本の有機化学者・創薬化学…

非侵襲で使えるpH計で水溶液中のpHを測ってみた!

今回は、知っているようで知らない、なんとなく分かっているようで実は測定が難しい pH計(pHセンサー…

有馬温泉で鉄イオン水溶液について学んできた【化学者が行く温泉巡りの旅】

有馬温泉の金泉は、塩化物濃度と鉄濃度が日本の温泉の中で最も高い温泉で、黄褐色を呈する温泉です。この記…

HPLCをPATツールに変換!オンラインHPLCシステム:DirectInject-LC

これまでの自動サンプリング技術多くの製薬・化学メーカーはその生産性向上のため、有…

MEDCHEM NEWS 34-4 号「新しいモダリティとして注目を浴びる分解創薬」

日本薬学会 医薬化学部会の部会誌 MEDCHEM NEWS より、新たにオープン…

圧力に依存して還元反応が進行!~シクロファン構造を活用した新機能~

第686回のスポットライトリサーチは、北海道大学大学院理学研究院化学部門 有機化学第一研究室(鈴木孝…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP