[スポンサーリンク]

化学者のつぶやき

近況報告Part III

[スポンサーリンク]

 

夏も終わり、食欲の秋がはじまりました。皆様いかがお過ごしでしょうか。ノーベル化学賞の発表も終わり、一番実験がはかどるときですね。さて、前回4月下旬に近況報告させていただきましたが(近況報告Part II)、またまたいろいろ溜まりましたので、「つぶやき」らしく、適当なタイミングでまとめてワタクシこと、ケムステ代表の近況報告をさせていただきたいと思います。

 

 

2つの若手の会に参加してきました。

kinkyohoukoku2.png

前回ちらっとお話ししましたが、この夏2つの夏の若手の会に参加させていただきました。1つは第47回天然物化学談話会@熊本・阿蘇。受賞講演のため熊本の阿蘇プラザホテルに泊まり込みで参加。もう一つは第44回構造有機化学若手の会@札幌・定山渓で講師として呼ばれましたので、北海道という涼しいところで初参加です。両方ともほとんど寝ずに参加した為、往路と初日はとっても眠く、恥ずかしながら夜の宴会は2時ぐらいには帰ってしまいました。若手の会といえば徹夜で飲み、朝お風呂に入り、講演はキーワードのみをしっかり覚える!というのがスタイルでしたが、なかなか年には勝てないようです。ただし2日目は最後まで参加させていただきました。特徴があるのが天然物の方は年齢層が高く世話人も教授でスタッフ(教授、准教授、助教)もかなり多く参加しているのに対し、構造有機はすべて学生が運営しており、運営研究室以外と講師以外はすべて学生というところです。両方ともとっても楽しませていただきました。ただし、さきほど天然物化学談話会があった阿蘇プラザホテルのHPをみたところ、以下のようなお知らせが。

 

kinkyohoukoku3.png

確かに、九州にものすごい豪雨が襲った前週のことでして、危なかったなーと思いましたが、これほどまでとは!なかなかよいホテルであったので大変であるとは思いますが、無事営業を再開されることを祈ります。

 

ドイツに短期滞在しました

kinkyouhoukoku3.png

8月6日から9月30日までおよそ2ヶ月、ドイツに客員教授として短期滞在していました。名古屋にいってからおよそ4年間脇目も振らず化学に集中して来たので、ある意味ご褒美であると思ってます(筆者ではなく奥さんに)。大学は共同研究の関係でミュンスター大学。主に9月は学会と講演旅行。8月は、客員教授のオフィスで仕事をしつつ、学生や教授陣とご飯をたべたり、ディスカッションしたりして過ごしています。基本的には5時に起き、朝40分ほどジョギング、シャワーを浴び、朝ご飯を食べ、オフィスで仕事をして明るいうちに帰り(今の季節はサマータイムが有るのか夜10時ぐらいまで明るい!)、家でご飯を食べて、一仕事してネルという悠々自適な生活をしました。それでも、静かなオフィスで一人で仕事ができるのでいつもの何倍も仕事が進みました。学生とわいわいしている方が楽しいけど、こういう時間もあったらいいなと思いました。

講演はミュンスター大学(ドイツ)とマックスプランク研究所(ドイツ)、ETH(スイス)、ストックホルム大学(スウェーデン)、リオン大学(フランス)、ICIQ(スペイン)で行いました。なかなか移動が大変でしたが、アメリカはまだしもヨーロッパでこんな機会はめったにないので楽しみました。詳しくは長くなるので述べませんが、どちらにしても報告書を書かねばならないので今後機会があれば詳細を報告させていただきたいと思います。

 

メガ総説と予想外のカップリング反応がパブリッシュ!

今年の夏、以前かなり気合いを入れて書いた総説と、予想外な新規カップリング反応の論文を出しました。総説はC-H官能基化反応を用いた生物活性物質の合成に関するもので、現在今後の盛り上がりを考えると夜明け前という感じですが、この時期を逃すと総説では書けなくなる気がしたのでトライしてみました。かなり以前から頼まれていたのですが、全くやっておらず2月にほぼ家に帰らずに仕上げました。結果Angewandte Chemieに前代未聞の50ページ超のメガレビューとなりました。ダウンロードに少し時間がかかりますがぜひお読みください。

mcontent-500x175.gif

C-H Bond Functionalization: Emerging Synthetic Tools for Natural Products and Pharmaceuticals

Yamaguchi, J.; Yamaguchi, A.D.; Itami, K. Angew. Chem. Int. Ed. 2012, 51, 8960–9009.  DOI: 10.1002/anie.201201666 

 

もうひとつは、Ni触媒を用いた芳香族エステル化合物とのC-Hカップリング反応。ハロゲン化アリールの代わりに頻繁にみられるエステルを直接的にアリール化できる手法です。これはじつは狙った訳ではなくて、副生成物を精査した結果得られたものです。その反応を用いて形式全合成ですが、抗菌剤musoride Aの迅速合成を行いました。このような収束的な合成を可能にする新しいタイプのクロスカップリング反応として利用していただけたらと思います。

 

ja-2012-06062c_0009.gif

Decarbonylative C–H Coupling of Azoles and Aryl Esters: Unprecedented Nickel Catalysis and Application to the Synthesis of Muscoride A

Amaike, K.; Muto, K.; Yamaguchi, J.; Itami, K J. Am. Chem. Soc. 2012, 134, 13573–13576. DOI: 10.1021/ja306062c

 

そのほかにも、以下の総説やいくつかの論文を出版しましたので興味が有る方はぜひ。

1.Synthesis of Bioactive Compounds through C-H Bond Functionalization
Junichiro Yamaguchi and Kenichiro Itami, Fine Chemicals 2012, 41, 38. Link
2. Pd-catalyzed direct C-H bond functionalization of spirocyclic sigma-1 ligands: generation of a pharmacophore model and analysis of reverse binding mode by docking into a 3D homology model of the sigma-1 receptor
Christina Meyer, Dirk Schepmann, Shuichi Yanagisawa, Junichiro Yamaguchi, Valentina Dal Col, Erik Laurini, Kenichiro Itami, Sabrina Pricl, and Bernhard Wünsch
J. Med. Chem. 2012, 55, 8047. DOI: 10.1021/jm300894h
3. Late-Stage C-H Bond Arylation of Spirocyclic s1 Ligands for Analysis of Complementary s1 Receptor Surface
Christina Meyer, Dirk Schepmann, Shuichi Yanagisawa, Junichiro Yamaguchi, Bernhard Wünsch, and Kenichiro Itami
Eur. J. Org. Chem. 2012, Early View. DOI: 10.1002/ejoc.201200837 

ついに始動!?ニューコンテンツとケムステ国際バージョン

この近況報告の前にどうにか仕上げたかったのですが、予想外にドイツ滞在がいろいろな意味で忙しく、まだ残念ながらまだ正式に公開するまでにはいったっておりません。ただ今年中にはタイトル通り新しいコンテンツとケムステの国際バージョンを軌道に乗せたいと考えています。

新しいコンテンツは、「化学地球儀」(仮名)。位置情報を使ったこれまでとは違った観点で化学に関する史跡、名所を紹介していこうというコンテンツです。もちろんトラディショナルに有名な化学史跡に加えて、新たな名所、勝手に名所としてしまうものもあるかもしれません。

 

chemearth.png

国際バージョンのケムステでは、論文、化学者、分子、インタビューの4つの基本コンテンツを用意する予定です。内容はアメリカを中心にした他のブログや化学サイトと異なり、日本の研究者、化学を英語で紹介していく内容になると思います。日本化学会のサイトですら日本の化学情報を国際発信できていない今日、誰かがやるしか有りません。なかなか時間はかかりますがどうにかして年内で形にしたいと思います。

 

それでは今後とも宜しくお願い致します!

 

webmaster

webmaster

投稿者の記事一覧

Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

関連記事

  1. タキサン類の全合成
  2. 炭素をつなげる王道反応:アルドール反応 (5/最終回)
  3. ウッドワード・ホフマン則を打ち破る『力学的活性化』
  4. 巧みに設計されたホウ素化合物と可視光からアルキルラジカルを発生さ…
  5. 少年よ、大志を抱け、名刺を作ろう!
  6. ゼロから学ぶ機械学習【化学徒の機械学習】
  7. 合成小分子と光の力で細胞内蛋白質の局在を自在に操る!
  8. 文具に凝るといふことを化学者もしてみむとてするなり : ① 「ほ…

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. 今週末は「科学の甲子園」観戦しよーぜ
  2. 在宅となった化学者がすべきこと
  3. リッチー・サーポン Richmond Sarpong
  4. オーヴァーマン転位 Overman Rearrangement
  5. 日本のお家芸、糖転移酵素を触媒とするための簡便糖ドナー合成法
  6. 電池長寿命化へ、充電するたびに自己修復する電極材
  7. 第153回―「ネットワーク無機材料の結晶学」Micheal O’Keeffe教授
  8. アクリルアミド /acrylamide
  9. 森林総合研究所、広葉樹害虫ヒメボクトウの性フェロモン化学構造を解明
  10. 鈴木 啓介 Keisuke Suzuki

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2012年10月
« 9月   11月 »
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293031  

注目情報

注目情報

最新記事

こんなのアリ!?ギ酸でヒドロカルボキシル化

可視光レドックス触媒によるギ酸を炭素源としたヒドロカルボキシル化が開発された。チオール触媒を介したラ…

ポンコツ博士研究員の海外奮闘録 ケムステ異色連載記

本稿は,世間一般にほとんど知られていない地方私立大学で学位を修了し,エリートでもなく何も成し遂げてい…

新型コロナの飲み薬モルヌピラビルの合成・生体触媒を用いた短工程化

新型コロナウイルス (SARS-CoV-2) 感染症に対する飲み薬として、Merck…

秋吉一成 Akiyoshi Kazunari

秋吉 一成(あきよしかずなり)は日本の有機化学者である。京都大学大学院 工学研究科 高分子化学専攻 …

NIMS WEEK2021-材料研究の最新成果発表週間- 事前登録スタート

時代を先取りした新材料を発信し続けるNIMS。その最新成果を一挙ご紹介する、年に一度の大イベント「N…

元素記号に例えるなら何タイプ? 高校生向け「起業家タイプ診断」

今回は化学の本質とは少し離れますが、元素をモチーフにしたあるコンテンツをご紹介します。実験の合間…

多価不飽和脂肪酸による光合成の不活性化メカニズムの解明:脂肪酸を活用した光合成活性の制御技術開発の可能性

第346回のスポットライトリサーチは、東京大学 大学院総合文化研究科(和田・神保研究…

10手で陥落!(+)-pepluanol Aの全合成

高度な縮環構造をもつ複雑天然物ペプラノールAの全合成が、わずか10工程で達成された。Diels–Al…

吉野彰氏が2021年10月度「私の履歴書」を連載。

今年の10月はノーベル化学賞が有機化学分野から出て、物理学賞を真鍋淑郎先生が受賞して、非常に盛り上が…

ガラス工房にお邪魔してみたー匠の技から試験管制作体験までー

実験器具を試して見たシリーズ第10弾! ついにシリーズ10回目を迎えました。今回は特別編です…

Chem-Station Twitter

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP