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人が集まるポスター発表を考える

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研究の秋です。3月の卒業・学会シーズンに向けて研究を頑張っている読者も多いことでしょう。かなり気が早いのですが、今回は学会発表について書いてみたいと思います。

 

私は博士後期課程の学生ですが、今までに十数回学会発表を行っています。

初めの頃は発表することだけでいっぱいいっぱいでしたが、何回か出ているうちに気になり始めたことがありました。「自分の研究はおもしろいはずなのにポスター発表が目立たない」という不満です。

口頭発表では会場で自分のみが発表するため、確実に話を聞いてもらうことができます。しかし、大会場で大勢が発表するポスター発表では、なかなか人が集まりません。

 

どんなに優れた研究でも、人に見てもらわなければ評価されません。

ましてや、せっかくのハレの舞台、他の人に埋もれてしまってはもったいない!というわけで、「人が集まるポスター発表」が今回のテーマです。

目を引く予稿を! ~タイトルと図で差別化を図る~

学会において予稿集というのは最も重要なアイテムです。出席者全員に配られ、全員が目を通す資料はこれしかありません。そんな予稿集が「目立つポスター発表」への最初のキーアイテムとなります。

 

予稿集を受け取った参加者は、目次にある発表タイトルと著者に目を通すことでしょう。まずはそこで「気になる存在」にならなければいけません。うまくアブストのページを開かせることに成功したあと、重要になるのは図表です。印象に残る図表を載せて見た人のハートを射貫き、最後まで読んでもらいましょう。

 

参考になる例としては、京都大学生存圏研究所の矢野教授のグループが発表した「透明なカニ」が挙げられます。

カニ殻から透明材料 — 京都大学 [1]

ミニマムなタイトルを見てページを開くと、そこに掲載された写真に興味をかき立てられるはずです。予稿集で見つければ話を聞きに行くこと間違いなしです。

他の人とはひと味違う図 [2] 載せればずっと印象に残りますが、やり過ぎると引かれます。

transparent_crab.jpg

 

(もしあれば)ショートプレゼンテーションで印象付ける ~考えるな、目立て!~

ポスター発表前にショートプレゼンテーションがある学会もあります。その場合、この発表が予稿集よりも強力なアピール方法になります。

 

ショートプレゼンテーションにおいて何よりも大切なことは、ポスターに足を運びたくなるようにすることです。成果を伝えることも大切ですが、いくらデータを詰め込んでも、ポスターに来てもらえなければ何の意味もありません。他の発表に負けないストロングポイントを前面に押し出し、出席者の印象に残しましょう。

 

もう少しまともなイメージとしては、Apple社の製品発表が挙げられます。スライド1枚1枚はとてもシンプルですが、どのスライドを取り出しても印象に残ります。これがどれだけ効果的かは売れ行きを見れば明らかでしょう。

 

会場では遠くからでも発表をアピール ~目に止まる仕掛けを作る!~

発 表会場では、それぞれのポスターが並んで貼り出されます。文字通り横並びの状況で、いかに人を集めるか工夫しなくてはなりません。その中で重要になるの は、遠くからでも目立つポスターと人の足を止める仕組みです。前者は多くの人が取り組んでいることですから、後者こそがキーになります。

 

私が過去に取り組んだ例としては、ポケットプロジェクターで映像を流すという方法があります。ポスターの前に変わった装置が存在するだけでも、関心から寄ってくる人が増えます。科学者には好奇心が強い人が多いので確実に効果があります。

知り合いには張りぼての立体ポスターを作った者もいます。(怒られない範囲で)奇想天外なことを考えれば、普段とは違った学会の楽しみ方ができるかもしれません。

 

近付いてきた人には積極的に話しかけ、自分のポスターへ引っ張っていきましょう。ラーメン店と同じで、誰もいない場所よりも人だかりがあるポスターに、より多くの人が集まります。

starbucks.jpg

 

目の前の人を夢中にさせる発表 ~発表者は紙面ではなく自分!~

学会発表は、相手に内容を読み取ってもらうのではなく、自分から伝える機会です。

ポスターの内容だけを相手に読み聞かせる発表者をよく見かけますが、それだけならポスターの縮小印刷コピーを配れば十分です。ポスター発表は紙面についてではなく、プラスアルファを披露する場所だと私は考えています。

 

私がポスター発表する際に必ず用意するのが、自分の研究サンプルです。

私は軟らかく肌触りがいい材料(マシュマロゲルと呼んでいます)を合成しており、これを渡せばたいていの人が興味をもってくれます。触った人が口コミ宣伝することで、さらに人を呼び込むことができます。

百聞は一見にしかず、材料化学が専門ならば実物を見せることが一番の発表になるでしょう。(共同研究者の許可は取りましょう。)

 

ポスター発表において受ける質問は、ポスターに書かれていない内容が数多くあります。全ての質問に対して口頭で答えるのは一苦労です。

そうした議論に便利なのがホワイトボード。私はポスター(光沢紙)表面に透明シートを貼ることで、ポスターそのものをホワイトボード代わりにしています。即座に追加情報を書込み、議論を深めることができます。ノート型ホワイトボードを持参してみるのもいいでしょう。

一方的な説明に終始せず、現在進行系かつ双方向の議論を目指しましょう。

 

重要なので繰り返し書きますが、ポスター発表の主役は、ポスター紙面ではなく自分です!見にきた人には積極的に話しかけ、議論しましょう。

 

電子デバイスを生かした発表 ~21世紀のポスター発表~

電子機器が発達した21世紀において、紙面だけによる発表は少し古くさいのではないでしょうか?

 

最近は、論文の補助資料で動画をよく見かけます。紙では表現できない成果は、先に挙げたポケットプロジェクターやiPadなどを用いて積極的に行いましょう。最先端をいく研究者は新しい物好きが多いので、そういった道具を使っているだけで質問にきてもらえる効果もあります。

 

ただし、操作に慣れていないと時間がかかって逆効果です。使い方と説明のタイミングは事前にしっかりと練習しましょう。

ipad-iphone.jpg

 

学会後にすべきこと ~フォロワーを作る!~

学会が終わったあとも研究が進みます。せっかく興味をもっていただいた研究ですから、この先もずっとフォローしてもらいましょう。ポスター発表会場で有用な方法は、補助資料の配布と名刺交換です。形に残る物を配布することで、後々まで興味をもってもらうことができます。

 

インターネットも積極的に利用しましょう。研究室のホームページを充実させる他、ReaD & Researchmapという研究者コミュニティサイトを活用するのも手です。

大学院生はみんなResearchmapに登録しよう – 発声練習

私は独自ドメインを自腹で取得し、研究に関するサイトを運営しています。学会発表後にはアクセス数が急増し、研究に関する新しい問い合わせもあります。FacebookなどのSNSで情報発信するのも効果的だと思います。

 

学会発表でリピーターを見つけると、とてもうれしい気分になります。自分の研究のファンを作り、「いいね!」と言ってもらいましょう。

 

最後に ~次世代の研究者はアピールが大切?~

世界で論文数が急増している時代、埋もれてしまわないためには研究アピールがより重要になってくるでしょう。

日本では、科学技術力低下を危惧するニュースをよく目にする反面、優れた研究であっても社会にほとんど認知されていないと感じます。社会の関心を集めて日本の科学界に新しい研究者を呼び込むことが、これからの日本にとってとても必要なことだと思います。

 

話が大きく広がってしまいました。まずはしっかりと研究して、学会発表を楽しみましょう!

 

参考文献

  1.  “The transparent crab: preparation and nanostructural implications for bioinspired optically transparent nanocomposites”, Md. Iftekhar Shams et al. Soft Matter, 8, 1369 (2011). DOI: 10.1039/C1SM06785K
  2. ” Microtubule nanospool formation by active self-assembly is not initiated by thermal activation” Isaac Luria et al. Soft Matter, 7, 3108 (2011). DOI: 10.1039/C0SM00802H

GEN

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大学JK->国研研究者。材料作ったり卓上CNCミリングマシンで器具作ったり装置カスタマイズしたり共働ロボットで遊んだりしています。ピース写真付インタビューが化学の高校教科書に掲載されました。

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