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ぼくらを苦しめる「MUST (NOT)」の呪縛

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みなさんこんにちは。通りすがりのアラサー科学者です。

突然ですが、私、メンタルの調子を崩しました。

どうも最近やる気がでなくて、「頑張らなきゃ」と思っても頑張れず、仮に気合いで少しだけ頑張れたとしても、すぐまた失速します。その繰り返し。 紆余曲折あって、精神科医に診てもらうことになったのですが、「いわゆる『ガス欠うつ』というやつですね。」と言われてしまいました。 それまで長いことモヤモヤしていたので、「まじか!ショック!」というよりは、「ああ、そうなのか」という感じでした。

さて今日は、「化学って面白そう!」と思って化学界に入った(入ろうとしている)人に「どうやったら私のようになってしまうのを避けられるか」をお伝えできればと思います。

どうしてこうなった?

最初はみんな「化学ってなんだか楽しそうだな」と思って、化学に関連する学部・学科を選ぶのではないでしょうか。私はそうでした。そして、しばらく座学で勉強し、その後に研究室に入って本格的な研究を始めます。

ただ、研究は楽しいばかりではありません。

「実験の結果を出さなきゃ」「同期と比べて研究が進んでない…」「卒論書かなきゃ」「学会までにデータ出さなきゃ」「あの人は国際学会に行けてるのに、私は…」「論文通さなきゃ」「責任をもって後輩を指導しなきゃ」「もっと勉強しなきゃ」「研究室を休んで旅行に行くなんて、もってのほかだ」「英語できるようにならなきゃ」「周りは頑張ってるんだから、私も頑張らなきゃ」「先生がこう言うんだから、そうしなきゃ」

このような、たくさんの「しなきゃ (MUST)」や「しちゃだめだ(MUST NOT)」に遭遇します。ついつい「周囲との比較」もしてしまいます。

これらの考えをプラスに捉え、自分を鼓舞して、もっともっとと頑張る人は多くいます。特に、研究の世界に入ってくるような人は、小中高と真面目に努力をしてきた人が多く、こうやって頑張って成果を出すのが得意だと思います。うまくいっているうちは良いです。ですが、こういった「真面目な考え」が、少しずつ少しずつ「心の重荷」となっていき、果ては「ガス欠」や「燃え尽き」に繋がる危険性が高いのも事実です。

私も、自分で気づかぬうちに、この「周囲との比較」や「MUST (NOT) の思考」に縛られていたようです。そして、いつのまにか「ガス欠」になっていました。一旦「ガス欠」になってしまうと、もはや頑張ろうと思っても頑張れなくなるし、辛くて逃げたくなるし、回復には長い療養と地道なリハビリが必要となってしまいます。

もしかして自分も?

ちょっと想像してみてください。たとえば、自分のよく知らない異分野のミーティングや学会に参加したとします。ここで、

「よくわかんないけど、たーのしー!」「わからん!つまらん!」

などと思えれば健全です。でも、

「よくわかんない。まずい。もっと勉強しなきゃ。」

と感じてしまったら、黄色信号かもしれません。「周囲との比較」や「MUST (NOT) の思考」が身に染み付いてしまっています。自分に何かが足りないと感じることは自然なことですが、それがすぐに「頑張らなきゃ」に結びついてしまう「オートマティック頑張らなきゃ思考」に陥っていると言えます。

実はこの思考、自分だけではなく、周りの人も苦しめているかもしれません。「あいつはもっと頑張った方がいい」と、他人の意思や能力限界を無視して、頑張ることを強要してしまうことがあります。「自分は頑張ってるのに、あいつはぜんぜん頑張ってない!見てるとイライラする!」と思ったことはありませんか?もしあるなら、MUST (NOT) の呪縛に囚われているのかもしれません。

「オートマティック頑張らなきゃ思考」は、いま日本で社会問題になっている「新型うつ(←マスコミ用語)」とも深い関係があるのではと思っています。

また、「周囲との比較」の習慣は「日本の若者の自己肯定感の低さ[1]」とも関連がある気がしています。

じゃあどうする?

では、これらの呪縛から抜け出すには、いったいどうしたらよいのでしょう?

私が精神科医の先生から教わったのは、

  • 頑張るのをやめる
  • 「MUST ではなく be able to」と考える
  • 「○○してもいいし、××してもいい」と考える
  • 他人との比較をやめる
  • リラックスする
  • 手加減、さじ加減をうまくする
  • マイペースを貫く
  • 「やりたいから、やっている」と考える
  • 開き直る
  • 割り切る
  • 人に心を開く
  • ありのままで人に接する
  • 「これまで十分頑張ったんだから、別に辞めてもいい」と考える
  • かっこつけるのをやめる
  • 人の目を気にするのをやめる
  • 恥を隠すのをやめる
  • ダメな自分を許す(←激ムズ)

などの方針を、何度も何度も自分に言い聞かせることです。周囲からの期待とか、圧力とか、指示とか、頑張れとか、そういったものに反射的に答えず、自分の中で増幅させたりもせず、「あくまで主導権は自分にある」と考えることが大事なようです。

もし「最近ちょっとツライな」と感じていたら、上記のような意識を持つだけでも気が楽になるのではないでしょうか。

ただ、大遅刻が多くなってしまったとか、欠席が続いているとかのレベルまで行ってしまった場合は、もう意識改革だけでは不十分かもしれません。「こう考えるようにしたら、突然治った!」ということは基本的に無いそうです。この状態の人は、例えるなら「燃費の悪い自動車」です。日々の活動による「ガソリン消費」が激しくなってしまい、休息による「ガソリン補充」が追いつかず、結果として「ガス欠状態」になってしまっています。しばらく休めば、ある程度ガソリンが溜まるかもしれませんが、そのまま復帰しても、燃費は悪いままなので、すぐまた「ガス欠」になってしまいます。私はまさにこの状態でした。復帰のために自分を鼓舞し、ついつい「しばらく休んだので、もう大丈夫です!今日からバリバリ頑張ります!!」となりがちですが、焦りは禁物です。できれば精神科医や心療内科医の監督のもと、徐々に復帰していくのが良いです。車のギアを、1速、2速、3速と段階的に上げていくイメージです。

ちなみに、「新しい環境に飛び込んでから半年〜1年くらいたった頃が一番危険」という説があるそうです。最初は意気揚々としているし、「何もわからなくて当然」と思えるから、特に問題は無し。でも月日が経つにつれ、環境に慣れてはくるものの「思い描いていたほど自分が成長できてない。まずい。」と感じるようになってしまう。ただ、そこを乗り越えられれば、いい感じに吹っ切れられるし、また能力も実際に上がってくるので、次第に気が楽になるものだ、と聞きました。

最後に

「私、メンタルを病みました。」と大声で言うことには、正直かなり抵抗がありました。でも、似たような悩みを抱えているけれど、なかなか周囲に相談できていない同志が実は多いのではないかと思い、ケムステという公の場で筆をとらせていただきました。ソーシャルワークを研究するBrené Brown博士の「 “無防備さ”からこそ、イノベーション・創造性・変革は生まれる。」との言葉[2]を信じ、私が恥を捨てることで、誰かを取り巻く状況が少しだけでも良くなったらいいな、と思っています。

私は、研究の魅力とは「『自分(たち)だけが知っている、世界のヒミツ』を得られること、そしてそれを世界中の人と共有できること」だと思います。

そして化学は「新しい物質をこの世に生み出すことのできる最強のツール」だと信じています。

本来は、わくわく感や、唯一無二の喜びに満ちた活動のはずなのです。みなさんが、最初に「化学」に惹かれた頃の気持ちを思い出して、興味の赴くままに化学を楽しんでくれたらいいな、と願っています。

 

関連リンク

関連書籍

引用資料

  1. 内閣府 子ども・若者白書(平成26年版)–– 特集 今を生きる若者の意識 ~国際比較からみえてくるもの~
  2. Brené Brown, “Listening to Shame”, TED, 2012.

 

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アラサー科学者。「ちょっとだけ世界が楽しくなるもの」を生み出していきたいです。 nekomochi5656@yahoo.co.jp
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