[スポンサーリンク]

一般的な話題

外部の大学院に進学するメリット3選

[スポンサーリンク]

「学部から研究してきた方々に追いつけるように、研究を進めねば…」

大学院から有機低分子を取り扱い始めた私は、大学院時

代、”何かに追われるように”研究室に籠もって実験していました。
特に、学会発表の時です。継ぎ接ぎの知識をなんとか絞り出す必要がありました。大学院で外部に進学し新しい分野を研究することの難しさを身を持って体験しました。

時は経ち、新卒で化学メーカーに就職してから2年が経過したころでしょうか。ふと、こんなことを考えていました。

「あの時、進学先の大学院を変更してよかったな」と。

この記事では、入社してから2年が経過してから気付き始めた、外部の大学院に進学するメリットをお話しします。念のため記載しておくと、「進学先の大学院を変更したほうが良い話」ではございません。
あくまで企業研究者の身になったときに気がついた内容です。化学メーカーの現場を垣間見る気持ちで、お読みいただければ幸いです。

 

1.新しい分析装置・測定手法を学ぶ機会が得られる

企業での研究活動では、多くの分析装置を扱うことでしょう。
それもそのはずで、企業では「モノや製品に付加価値をつけるために、化合物のデータを取得する」のが前提としてあるからです。
研究自体は投資の位置付けなのですが、それでもやはり「事業化としての落とし所はあるか?」を模索します。落とし所がなければ、研究自体をストップする選択肢すら出てきます。

そこで、私たちの研究環境では「出身大学のバックグラウンドとは関係なく、複数の分析装置を使いデータを得る」ことが日常的でした。

「新たな分析手法を模索すればいいのでは?それも研究に繋がるし」ではなくて、「他の分析装置でスペクトルが観測できるのなら、ひとまずはOK」といった具合です。(無論、測定条件はきちんと模索します。)

進学先の大学院が変わると、学部4年生の時にお世話になった研究室も変わることになります。
研究室が変われば、取り扱う化合物群も変わることでしょう。

企業研究者になることを見据えているのであれば、「いくつかの分析装置・測定手法を広く浅く学んだ」経験は、きっとお役に立つことでしょう。

 

2.大学3年生で興味を持った分野に、専門を軌道修正し専攻することができる

冒頭にて「大学院から有機低分子を扱うようになった」と記載いたしました。

理由はいくつかあるのですが、一番大きな理由は「有機化学が面白いと気がついたのが学部3年だった、エスカレートして大学院に進学したら後悔するかも…」でした。

それぞれの大学の状況による落差が大きいことでしょうが、私の大学では「〇〇先生の講義:有機化学3にて単位を取得していること」が、有機化学の研究室に入るための条件でした。

学部3年で、「有機化学、面白いな…」と思っても、単位取得状況の観点からして厳しいのです。

一方、エスカレートして進学する選択肢を捨てて「外部の研究室を選ぶ」選択肢が目に入ると、「大学院から、自身の興味を持った分野を専攻」することができます。

「有機化学、面白いな…」といった興味本位では済まされない現実を迎える可能性はありますが、将来的な「あの時学んでおけばな…」は低減されることでしょう。
(どっかの誰かさんは、”何かに追われるように”実験室に籠もって実験していましたが…)

 

3.急きょ一人暮らしになったときの耐性がつく

すでにご存知の方がいると思いますが、化学メーカーの工場は、工業地帯に拠点を構えていることが多いです。

比較的耳にするところといえば、神奈川県の川崎あたり、三重県の四日市、大阪・兵庫・岡山までの広範囲エリア、でしょうか。

「配属ガチャ」といった表現もあるくらいですから、入社して最初の配属先が「現在の住まいから離れた遠方」であるならば、配属先の結果が好ましくないと捉える方もいるでしょう。

工場の区画内に、研究棟が併設されているメーカーさんもあります。
「化学工学を専攻した方が配属されるはず…」とは限らないのです。

上記1.2.と比較すると、人によってはメリットの効果が薄いかもしれません。
副次的なメリットとして、捉えていただけますと幸いです。

 

少し余談ですが、上記3つのメリットは「就職活動時の判断軸」として置き換えても、有益かもしれません。

といいますのも、手前味噌なのですが

「なぜ進学先の大学院を、わざわざ外部にされたのですか?」
「理由は大きく3つありまして…」

のやり取りをどの会社でも面接で聞かれたからです。

ある会社の役員の1人からは、良い意味で「変更された理由」に関しての質問攻めをされました。それ相応の、判断軸であったことの裏返しです。

当時の自分はただ熱く語っただけでしたが、改めて言語化してみると「企業側としては、有益な経験をしてきた応募者だ」と見られていたのでしょう。

 

最後にまとめます。

企業側として見た時の、進学先の大学院を外部にするメリットは

1.新しい分析装置・測定手法を学ぶ機会が得られる
2.大学3年生で興味を持った分野に、専門を軌道修正し専攻することができる
3.急きょ一人暮らしになったときの耐性がつく

の3選です。

健闘を祈ります。

関連書籍

えにふじ

投稿者の記事一覧

現Webエンジニア/ 元ITベンチャー / 化学メーカーのDX推進など。大学院ではπ共役系分子を扱っていたり。化学メーカーまわりの話や、IT業界に接点がない方へのきっかけを作ることができればと考えております。よろしくお願いいたします。

関連記事

  1. カラムやって
  2. 第96回日本化学会付設展示会ケムステキャンペーン!Part II…
  3. 『Ph.D.』の起源をちょっと調べてみました① 概要編
  4. 「社会との関係を見直せ」とはどういうことか
  5. ケムステ国際版・中国語版始動!
  6. 再生医療ーChemical Times特集より
  7. Nature 創刊150周年記念シンポジウム:ポス…
  8. MEDCHEM NEWS 31-2号「2020年度医薬化学部会賞…

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. Dead Endを回避せよ!「全合成・極限からの一手」②(解答編)
  2. Carl Boschの人生 その1
  3. 製薬各社 2010年度 第2四半期決算を発表
  4. 研究者×Sigma-Aldrichコラボ試薬 のポータルサイト
  5. 超難関天然物 Palau’amine・ついに陥落
  6. C–NおよびC–O求電子剤間の還元的クロスカップリング
  7. ナノ粒子応用の要となる「オレイル型分散剤」の謎を解明-ナノ粒子の分散凝集理論の発展に貢献-
  8. オキソアンモニウム塩を用いたアルデヒドの酸化的なHFIPエステル化反応
  9. 青色LED励起を用いた赤色強発光体の開発 ~ナノカーボンの活用~
  10. 有機電解合成プラットフォーム「SynLectro」

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2023年5月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293031  

注目情報

注目情報

最新記事

アメリカ企業研究員の生活①:1日の仕事の流れ

私はアメリカの大学院(化学科・ケミカルバイオロジー専攻)を卒業し、2年半前からボストンにある中規模の…

ラジカルを活用した新しいケージド化法: アセチルコリン濃度の時空間制御に成功!!

第 524回のスポットライトリサーチは、京都大学大学院 薬学研究科 薬科学専攻 …

第38 回化学反応討論会でケムステをみたキャンペーン

今週の6月7日から9日に九州大学 西新プラザにて第38 回化学反応討論会に参加される皆様にお知らせで…

材料開発を効率化する、マテリアルズ・インフォマティクス人材活用のポイントと進め方

開催日:2023/06/07 申し込みはこちら■開催概要近年、少子高齢化…

材料開発の変革をリードするスタートアップのデータサイエンティストとは?

開催日:2023/06/08  申し込みはこちら■開催概要MI-6はこの度シリーズAラウ…

世界で初めて有機半導体の”伝導帯バンド構造”の測定に成功!

第523回のスポットライトリサーチは、千葉大学 吉田研究室で博士課程を修了された佐藤 晴輝(さとう …

第3回「Matlantis User Conference」

株式会社Preferred Computational Chemistryは、7月21日(金)に第3…

第38回ケムステVシンポ「多様なキャリアに目を向ける:化学分野のAltac」を開催します!

本格的な夏はまだまだ先ですが、毎日かなり暖かくなってきました。皆様お変わりございませんでしょうか。…

フラノクマリン -グレープフルーツジュースと薬の飲み合わせ-

2023年2月に実施された第108回薬剤師国家試験において、スウィーティーという単語…

構造の多様性で変幻自在な色調変化を示す分子を開発!

第522回のスポットライトリサーチは、北海道大学 有機化学第一研究室(鈴木孝紀 研究室)で博士課程を…

Chem-Station Twitter

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP