[スポンサーリンク]

化学者のつぶやき

夏休みの自由研究に最適!~家庭でできる化学実験7選~

[スポンサーリンク]

bergです。ケムステをご覧の皆様の中には、小学生・中学生のお子さんをお持ちの親御さんもいらっしゃることでしょうか?夏休み真っ只中ということで、自由研究の題材に頭を悩ませている方もいらっしゃるかもしれません。そこで今回は、ご家庭でも取り組みやすい化学実験のネタを、独断と偏見に基づいていくつかご紹介したいと思います。

 

① キャンドルづくり

化学っぽさ:★☆☆☆☆ 材料の入手:★★★★☆ 難易度:★★☆☆☆

ジェルワックスとよばれる無色透明のゲル状のパラフィンをロウ代わりに用いると、装飾も容易で完成品の見栄えが増します。画像は筆者がドライフラワーを入れて作ったものです。通販サイトなどでも専用のキットが安価にありますので、どなたでも簡単に楽しめます。

どちらかと言えば、実験というよりは工作に近いですが、とはいえ、ロウが融けるときに、氷とは異なって体積が膨張すること(器壁付近から凝固するときに、中央がくぼむのがわかりやすいかもしれません)や、火を灯したときに融けたロウが芯へ吸い寄せられる様子など、観察していくといくつもの重要な着眼点があると思います。ファラデー著のろうそくの科学などにつなげてもいいかもしれませんね。お子さんに理科に興味を持ってもらいたい、という方にはかなりおすすめです!

やけどや火事にはくれぐれもお気を付けください……!

画像:水分を含む素材を封入するときには温度を100℃未満に調整しないと気泡が発生します。絶妙な温度制御が腕の見せ所かもしれません(失敗作)

 

 

② あぶり出し

化学っぽさ:★★★☆☆ 材料の入手:★★★★★ 難易度:★☆☆☆☆

こちらは一応化学要素がありますね!紙に果汁などの酸性の溶液で絵や文字を書いておいて、ホットプレートなどで加熱するとその部分が選択的に焦げるというものです。保存性と入手性を考慮すると、薬局で販売されているミョウバンを飽和水溶液にして使うのがおすすめです。案外くっきりと浮かび上がるので、どなたでも手軽に実施できます。

こちらもやけどや火事にはくれぐれもお気を付けください……!

 

③ 結晶づくり

化学っぽさ:★★☆☆☆ 材料の入手:★★★★★ 難易度:★★☆☆☆

定番ですね。一般家庭で手に入る材料だと食塩やミョウバンに限定されてしまうのが玉に瑕ですが、こちらも手軽にできるのがメリットです。大きい綺麗な結晶を作るには時間がかかりますから、長い夏休みはうってつけです。一筋縄にいかないもどかしさもあると思いますが、それもまた実験の醍醐味かもしれませんね!

④ 草木染め

化学っぽさ:★★★★☆ 材料の入手:★★★☆☆ 難易度:★★☆☆☆

ようやく化学らしくなってきたでしょうか。タマネギなど一般家庭で入手できる野菜を用いてハンカチなどを染色でき、輪ゴムで絞ったり板締などの技法を凝らしたりすることで高度な幾何学模様をつくることもできます[1]。また、防染糊を生地の上に置いて乾かしてから染めることで、白抜きの絵柄を入れることも可能です[2]。植物色素と金属イオンの錯形成などにも絡む題材ですので、お子さんの化学への好奇心を駆り立てること請け合いですね!

草木染め

⑤ 石鹸づくり

化学っぽさ:★★★★★ 材料の入手:★☆☆☆☆ 難易度:★★★★☆

こちらも定番でしょうか。水酸化ナトリウムがやや入手しにくいのが難点です。こちらは劇物になりますので、薬局の処方箋受付に身分証と印鑑を持参する必要があります。また、当然眼や皮膚に触れると有害ですので、実験メガネや手袋などの準備も忘れないようにしましょう!製法は調べると様々でてきますので詳細は省きますが、揚げ物後の廃油などを転用することもでき、エコでもあります[3]。なお、こうして作った石鹸は市販品と比べると水道水、特に硬水中での泡立ちに劣ります。これは市販品に塩析を防ぐキレート剤が添加されているためですが、こうした気づきからより奥の深い化学の世界へ誘うこともでき、教育的にたいへん美味しい実験と言えます。

石鹸

⑥ 葉脈標本づくり

化学っぽさ:★★★★★ 材料の入手:★☆☆☆☆ 難易度:★★★★☆

こちらも水酸化ナトリウムやそれを含む製剤を使用します[4]。使用する葉はなるべく肉厚のもの、枯れていないものが好ましいでしょう。できあがった標本はさらに食用色素できれいに染めることもでき、ラミネートすればしおりに最適です[5]。長くとっておけるものですから、思い出の品になるかもしれませんね……!

葉脈標本

⑦ エッチング

化学っぽさ:★★★★★ 材料の入手:★★☆☆☆ 難易度:★★★★★

エッチングが回路基板のパターン形成に利用されていることは過去記事(→化学者のためのエレクトロニクス入門② ~電子回路の製造工程編~)でもご紹介しました。銅版画を作ったり[6]、金属製の切り絵やペンダントを作ったりと、いろいろな応用が利きそうですね!

エッチング液の組成としては塩化第二鉄の水溶液が一般的ですが、クエン酸-過酸化水素水、塩酸-過酸化水素水など、薬局で容易に入手できる組み合わせを用いた変法も広く知られています。

一般家庭で頭を悩ませがちなのが廃液処理ですが、石灰で中和するだけでpH、金属イオン濃度とも排水基準以下にできるという報告[7]もあります。ひとひねり効いた作品を完成させてみたいという方はぜひトライしてみてはいかがでしょうか?

 

今回ご紹介したのはあくまでほんの一例にすぎませんが、ほかにも工夫次第でお子さんの知的好奇心をくすぐる題材はたくさん見つかると思います。本記事がその一助となれば幸いです。

 

参考文献

[1] Papper zz 21草木染めの実際と教材化

https://paperzz.com/doc/5510703/21-%E8%8D%89%E6%9C%A8%E6%9F%93%E3%82%81%E3%81%AE%E5%AE%9F%E9%9A%9B%E3%81%A8%E6%95%99%E6%9D%90%E5%8C%96

[2] つぎいろ 布に絵を描く、模様を入れる

https://tsugiiro.com/drawing_designs_on_fabric/

[3] 富山県 廃油から石鹸をつくろう

https://www.pref.toyama.jp/documents/14110/94p96fb82b982c182af82f1.pdf

[4] 埼玉県 葉脈標本をつくろう

https://www.city.saitama.lg.jp/sciencenavi/taiken/002/p048688.html

[5] 北海道大学 葉脈標本を染めて「しおり」をつくろう

https://cs.kus.hokkyodai.ac.jp/tancyou/vol.53/someru.htm

[6] 武蔵野美術大学 アートとデザインの素材・道具・技法 アクアチント

https://zokeifile.musabi.ac.jp/%E3%82%A2%E3%82%AF%E3%82%A2%E3%83%81%E3%83%B3%E3%83%88/

[7] 小・中学校における実験廃液の簡易処理法

福島大学教育実践講究紀要第19号p.21-29

https://www.lib.fukushima-u.ac.jp/repo/repository/fukuro/R000003687/1-244.pdf

 

gaming voltammetry

berg

投稿者の記事一覧

化学メーカー勤務。学生時代は有機をかじってました⌬
電気化学、表面処理、エレクトロニクスなど、勉強しながら執筆していく予定です

関連記事

  1. ポンコツ博士の海外奮闘録② 〜博士,鉄パイプを切断す〜
  2. SigmaAldrichフッ素化合物30%OFFキャンペーン
  3. 世界最大級のマススペクトルデータベース「Wiley Regist…
  4. ドライアイスに御用心
  5. 光触媒を用いるスピロ環合成法が創薬の未来を明るく照らす
  6. Stephacidin Bの全合成と触媒的ヒドロアミノアルキル化…
  7. 共役はなぜ起こる?
  8. 生体分子を活用した新しい人工光合成材料の開発

注目情報

ピックアップ記事

  1. 「肥満症」薬を国内投入、エーザイや武田
  2. 2012年ノーベル化学賞は誰の手に?
  3. 実験ノートの字について
  4. Ph.D.化学者が今年のセンター試験(化学)を解いてみた
  5. 記事評価&コメントウィジェットを導入
  6. スナップタグ SNAP-tag
  7. リチウムイオンバッテリーの容量を最大70%まで向上させる技術が開発されている
  8. ディストニックラジカルによる多様なアンモニウム塩の合成法
  9. 印民間で初の17億ドル突破、リライアンスの前3月期純益
  10. 熊田誠氏死去(京大名誉教授)=有機ケイ素化学の権威

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2024年7月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293031  

注目情報

最新記事

7th Compound Challengeが開催されます!【エントリー〆切:2026年03月02日】 集え、”腕に覚えあり”の合成化学者!!

メルク株式会社より全世界の合成化学者と競い合うイベント、7th Compound Challenge…

乙卯研究所【急募】 有機合成化学分野(研究テーマは自由)の研究員募集

乙卯研究所とは乙卯研究所は、1915年の設立以来、広く薬学の研究を行うことを主要事業とし、その研…

大森 建 Ken OHMORI

大森 建(おおもり けん, 1969年 02月 12日–)は、日本の有機合成化学者。東京科学大学(I…

西川俊夫 Toshio NISHIKAWA

西川俊夫(にしかわ としお、1962年6月1日-)は、日本の有機化学者である。名古屋大学大学院生命農…

市川聡 Satoshi ICHIKAWA

市川 聡(Satoshi Ichikawa, 1971年9月28日-)は、日本の有機化学者・創薬化学…

非侵襲で使えるpH計で水溶液中のpHを測ってみた!

今回は、知っているようで知らない、なんとなく分かっているようで実は測定が難しい pH計(pHセンサー…

有馬温泉で鉄イオン水溶液について学んできた【化学者が行く温泉巡りの旅】

有馬温泉の金泉は、塩化物濃度と鉄濃度が日本の温泉の中で最も高い温泉で、黄褐色を呈する温泉です。この記…

HPLCをPATツールに変換!オンラインHPLCシステム:DirectInject-LC

これまでの自動サンプリング技術多くの製薬・化学メーカーはその生産性向上のため、有…

MEDCHEM NEWS 34-4 号「新しいモダリティとして注目を浴びる分解創薬」

日本薬学会 医薬化学部会の部会誌 MEDCHEM NEWS より、新たにオープン…

圧力に依存して還元反応が進行!~シクロファン構造を活用した新機能~

第686回のスポットライトリサーチは、北海道大学大学院理学研究院化学部門 有機化学第一研究室(鈴木孝…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP