[スポンサーリンク]

ケムステニュース

熊田誠氏死去(京大名誉教授)=有機ケイ素化学の権威

[スポンサーリンク]

 

熊田 誠氏(くまだ・まこと=京大名誉教授・有機合成化学)6月28日午前8時9分、腎不全のため死去、87歳。福井県小浜市出身。葬儀・告別式は近親者で済ませた。喪主は二男千尋(ちひろ)氏。9月8日午後1時から京都市中京区河原町御池の京都ホテルオークラで偲(しの)ぶ会が開かれる予定。
有機ケイ素化学の権威として知られ、ニッケルを触媒に用い、有機金属化合物と有機ハロゲン化物の間に、炭素と炭素の結合を生成する交差カップリング反応を発見。医薬品の合成などで幅広く応用されている。94年、日本学士院賞・恩賜賞を受賞(引用:時事通信)。

 

熊田先生は、現在理化学研究所のフロンティア研究システム長である玉尾皓平京都大学名誉教授が助手であった際に、研究室を運営していました。そこで、有機ケイ素化学を研究し、その際、玉尾先生らと共に、初めての触媒的なクロスカップリング反応(熊田-玉尾-Corriuクロスカップリング)を開発した、この業界では非常に著名な人物です。

熊田-玉尾-Corriuクロスカップリングとはアリールハライド・アリールトリフラートとGrignard試薬間の、ニッケル触媒によるクロスカップリング反応です。その後、この反応を応用した、低反応性の有機亜鉛試薬を用いた根岸カップリングやNi、Pdの代わりにFe(III)を用いる(Kochi-Furstnerカップリング)などが生まれました。

 

また、その反応をヒントに、スズを用いた右田-小杉-Stilleクロスカップリングやホウ素を用いた鈴木-宮浦クロスカップリングが開発されました。現在、有機化学、特に有機金属化学分野でノーベル化学賞を出すならこの分野であるとまで言われています。

しかも、これらのカップリング反応、見てのとおりほとんど日本人が関わっており、まさに、熊田名誉教授はこの分野のパイオニア的な存在というわけです。

ご冥福をお祈りいたします。

 

関連リンク

穐田宗隆 写真館 熊田先生の写真があります。

Avatar photo

webmaster

投稿者の記事一覧

Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

関連記事

  1. 改正特許法が国会で成立
  2. 熱すると縮む物質を発見 京大化学研
  3. 冬のナノテク関連展示会&国際学会情報
  4. 分子標的薬、手探り続く
  5. 市販の新解熱鎮痛薬「ロキソニン」って?
  6. 産総研より刺激に応じて自在に剥がせるプライマーが開発される
  7. 光触媒で抗菌・消臭 医療用制服、商品化へ 豊田通商 万博採用を機…
  8. 野依さん講演を高速無線LAN中継、神鋼が実験

注目情報

ピックアップ記事

  1. 岩田忠久 Tadahisa Iwata
  2. アレノフィルを用いるアレーンオキシドとオキセピンの合成
  3. エネルギーの襷を繋ぐオキシムとアルケンの[2+2]光付加環化
  4. 「つける」と「はがす」の新技術|分子接合と表面制御 R4
  5. トーマス・ホイ Thomas R. Hoye
  6. ビニルモノマーの超精密合成法の開発:モノマー配列、分子量、立体構造の多重制御
  7. N末端選択的タンパク質修飾反応 N-Terminus Selective Protein Modification
  8. オゾンと光だけでアジピン酸をつくる
  9. 表裏二面性をもつ「ヤヌス型分子」の合成
  10. ものづくりのコツ|第10回「有機合成実験テクニック」(リケラボコラボレーション)

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2007年7月
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
3031  

注目情報

最新記事

アクリルアミド類のanti-Michael型付加反応の開発ーPd触媒による反応中間体の安定性が鍵―

第622回のスポットライトリサーチは、東京理科大学大学院理学研究科(松田研究室)修士2年の茂呂 諒太…

エントロピーを表す記号はなぜSなのか

Tshozoです。エントロピーの後日談が8年経っても一向に進んでないのは私が熱力学に向いてないことの…

AI解析プラットフォーム Multi-Sigmaとは?

Multi-Sigmaは少ないデータからAIによる予測、要因分析、最適化まで解析可能なプラットフォー…

【11/20~22】第41回メディシナルケミストリーシンポジウム@京都

概要メディシナルケミストリーシンポジウムは、日本の創薬力の向上或いは関連研究分野…

有機電解合成のはなし ~アンモニア常温常圧合成のキー技術~

(出典:燃料アンモニアサプライチェーンの構築 | NEDO グリーンイノベーション基金)Ts…

光触媒でエステルを多電子還元する

第621回のスポットライトリサーチは、分子科学研究所 生命・錯体分子科学研究領域(魚住グループ)にて…

ケムステSlackが開設5周年を迎えました!

日本初の化学専用オープンコミュニティとして発足した「ケムステSlack」が、めで…

人事・DX推進のご担当者の方へ〜研究開発でDXを進めるには

開催日:2024/07/24 申込みはこちら■開催概要新たな技術が生まれ続けるVUCAな…

酵素を照らす新たな光!アミノ酸の酸化的クロスカップリング

酵素と可視光レドックス触媒を協働させる、アミノ酸の酸化的クロスカップリング反応が開発された。多様な非…

二元貴金属酸化物触媒によるC–H活性化: 分子状酸素を酸化剤とするアレーンとカルボン酸の酸化的カップリング

第620回のスポットライトリサーチは、横浜国立大学大学院工学研究院(本倉研究室)の長谷川 慎吾 助教…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP