有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2026年6月号がオンラインで公開されています(記事公開少し遅れまして7月になってしいまました)。
5件の総合論文に加え、「ケミカルズ覚え書き」、久保田先生(北大)の「MBLA2024受賞ツアー」、棚谷先生(お茶の水大)の「感動の瞬間」が掲載されています。
会員の方は、それぞれの画像をクリックすると、J-STAGEを通じてすべて閲覧できます。
巻頭言:「ダブルメジャー」のすゝめ [オープンアクセス]
今月号の巻頭言は、慶應義塾大学理工学部 戸嶋一敦 名誉教授による寄稿記事です。
有機合成がツールとして見られる向きもありますが、他分野の視点から覗くと新しい価値を見つけてあげることもできるかと思います。
抗体・薬物複合体の最近の進歩
眞鍋史乃*(星薬科大学薬学部・医薬品化学研究所, 東北大学薬学部・薬学研究科医薬品開発研究センター)
(2020年度有機合成化学協会企業冠賞 カネカ・生命科学賞)
本稿は、抗体–薬物複合体(ADC)研究の最新動向を、有機合成化学の視点から体系的に整理した高品質な総説である。高品質なADCの設計を分子構造とともに解説をしており、ケミストの視点で近年の研究がまとめられている。さらに、近年活発に開発が進むDual ADCやradioimmunotherapyの動向についても触れられており、分野の傾向をつかみたいADC入門者にお勧めの論文となっている。
機能性有機蛍光色素の合成とデバイスおよび分子イメージングへの応用
小西玄一*(東京科学大学物質理工学院応用化学系)
(2023年度有機合成化学協会企業冠賞 富士フイルム・機能性材料化学賞)
ソルバトクロミズム、凝集誘起発光、液晶、バイオイメージングは、機能性発光色素において重要な特性や応用です。筆者は有機合成を基盤として、これらの分野において数多くの先駆的研究を展開しています。比較的単純な分子構造を武器に学理が深く追究されており、読み応えのある内容です。さらに筆者の背景や思考にも触れられており、科学的側面以外の点でも興味を引く一編で、必読です。
機構から反応をリデザインする:速度論的反応機構解析による非線形化学反応の予測的開発
折戸裕哉*(第一三共株式会社プロセス技術研究所)
本論文では、モデリング・シミュレーションの考え方から化学反応の解析、反応開発、プロセス開発への応用までをわかりやすくまとめられています。理論と実験を融合した最新手法や実例を通じて、反応機構の理解から工業的な設計・安全性まで幅広く紹介されています。プロセス化学の面白さの一端を感じ取っていただける内容です。
水中で進行するベンジルアルコールを用いた触媒的脱水型ベンジル化反応
氷川英正*、東屋 功(東邦大学薬学部)
ベンジルアルコールを求電子剤とするアルキル化反応が、脱水型であるにもかかわらず水中でないと効率よく進行しない。そんな有機溶媒不要の環境調和型反応の鍵となるのはπ-ベンジルパラジウム種だが、果たしてそれは求核種なのか求電子種なのか?詳細な機構解明でその謎に迫りつつ多成分連結反応へと展開するという、懐の深い反応が述べられています。
植物由来モノマーの重合と分解性ポリマー合成への展開
佐藤浩太郎*、久保智弘(東京科学大学物質理工学院応用化学系)
多様な植物資源から得られる天然由来化合物の構造的特徴を巧みに利用し、精密重合技術によって高付加価値なバイオベースポリマーへと導く最新の設計指針をまとめた総合論文です。革新的な材料設計から海洋生分解性の制御に至るまで、最先端の知見が体系的に記載されています。高分子化学や材料化学に携わる研究者のみならず、有機合成化学的視点からも有用な内容となっています。
Review de Debut [オープンアクセス]
今月号のReview de Debutは1件です。
・分子ノット(結び目)の合成と力学特性(広島大学大学院先進理工系科学研究科)久野尚之
ケミカルズ覚え書き:トリ-sec-ブチルボロヒドリド類
岡野一哉 氏(アセンサス・スペシャリティーズ)による寄稿記事です。用途はもとより、安定性や取り扱い・後処理の方法まで記載されている一読の価値ある覚え書きです。
ラウンジ:Lectureship Award MBLA 2024 受賞講演ツアーを終えて
Merck-Banyu Lectureship Award (MBLA) 2024受賞者である北海道大学大学院工学研究院 久保田浩司 教授による講演ツアーの寄稿記事です。久保田先生の溢れるばかりのエネルギーが感じられる寄稿でした(ホテルでも日本とWeb会議をするなんて、エネルギーありすぎです。。)。
感動の瞬間:医薬化学から殺鼠剤へ ― 出会いが生んだ視点の転換 [オープンアクセス]
今月号の感動の瞬間は、お茶の水女子大学理学部化学科 棚谷 綾 教授による寄稿記事です。
思わぬ出会いから化合物の新しい側面が見えるという有機合成ならではの感動の瞬間です。
これまでの紹介記事は有機合成化学協会誌 紹介記事シリーズをご参照ください。










































