[スポンサーリンク]

化学書籍レビュー

Side Reactions in Organic Synthesis II

[スポンサーリンク]

[amazonjs asin=”3527337210″ locale=”JP” title=”Side Reactions in Organic Synthesis II: Aromatic Substitutions”]

 

内容

This new textbook is the successor to the volume “Side Reactions in Organic Synthesis – A Guide to Successful Synthesis Design” (2004), written by the same author. Whereas the predecessor mainly covered the limitations of aliphatic substitution reactions, this new volume focuses on the most important aromatic substitution reactions, both electrophilic and nucleophilic, such as amination reactions, halogenation reactions, Friedel-Crafts acylations, or transition metal-catalyzed arylation reactions. Each chapter not only describes the scope of a specific reaction type, but also reveals what cannot be achieved with this reaction, i.e. what type of side reactions are to be expected with certain starting materials or electrophiles/nucleophiles. With its unique approach, this is a must-have book for graduate students in organic chemistry and synthetic chemists both in academia and industry!

(引用:書籍紹介ページより)

 

対象

大学院生以上、研究者

 

解説

待望の(?) Side reactionシリーズ第二弾。 10年以上前に発売された、第一弾「Side Reactions in Organic Synthesis: A Guide to Successful Synthesis Design」は有機反応全般に関する副反応とその解決法を紹介していた。通常論文には書かれていない失敗反応が書かれており、痒いところに手が届くといったタイプの本で人気を博した。この書籍については日本語にも翻訳されていて値段が日本版のほうが圧倒的に安いので日本版をオススメしたい(日本語版は読みやすいとは言えないが、合成反応なので構造式で判断できるだろう)

[amazonjs asin=”4621080660″ locale=”JP” title=”有機合成の落とし穴 -失敗例から学ぶ成功への近道”]

さて、今回の第二弾では芳香環の置換反応に注目して書かれた本である。全295ページ。芳香環の性質上求電子置換反応がほとんどであるが、アルキル化、ハロゲン化、アルケニル化、アリール化、アシル化など求電子剤の種類によって分けられており、各々芳香環、各種ヘテロ芳香環を用いた場合の反応が紹介されている。基本的には分類の芳香環に関して、初めに考えられる大きな副反応とその理由、反応例を述べている。ある場合は解決できる条件が提示されているが特に述べられていないものもある。いい意味で反応の羅列の部分もあるが、同じ芳香環・求電子剤および反応形式で様々な基質を記載しているので、うまくいく反応と難しい反応がわかりやすい。Amazonで中身検索が30ページ弱ほどできるのでぜひ閲覧してみることをオススメする。

内容例(Amazonより)

内容例(Amazonより)

また、各反応式には記載を簡略化するためか、通常のジャーナル名、年、巻号、ページ数の記載でなく、独自の記載方法で元文献が記載されている。例えば、 「J. Org. Chem. 2008, 4956.」は 「080joc4956」と年号の下二桁、論文、ページ数となっている。少しなれるまで気になるところだが、PCでChemistry reference resolverなどを用いて検索する分には必要な情報は揃っているので問題ないだろう。

概して、芳香環を有する骨格を扱っている合成化学者やこれから触っていこうと考えている人には大変有用な本であるといえる。何度も記載するが問題点も書かれているので、それを解決するための合成反応を考える、つまり新規反応を考える一助にもなろう。また、反応を行う前に副反応やしっかり問題点を捉えておくことも重要だ。論文を読んで最新の反応を学ぶものもよいが、論文の性質上色々と脚色がされている、難しい物を見せていない可能性が多くあるため、本書は実用的な参考書という位置づけで1冊あってもよいだろう。

 

関連書籍

[amazonjs asin=”3527310215″ locale=”JP” title=”Side Reactions in Organic Synthesis: A Guide to Successful Synthesis Design”] [amazonjs asin=”3527329765″ locale=”JP” title=”More Dead Ends and Detours”]
Avatar photo

webmaster

投稿者の記事一覧

Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

関連記事

  1. 英文校正会社が教える 英語論文のミス100
  2. 大村 智 Satoshi Omura
  3. よくわかる最新元素の基本と仕組み―全113元素を完全網羅、徹底解…
  4. 創薬化学―有機合成からのアプローチ
  5. 【書籍】すぐにできる! 双方向オンライン授業 【試験・評価編】
  6. 【書籍】機器分析ハンドブック3 固体・表面分析編
  7. 化学で「透明人間」になれますか? 人類の夢をかなえる最新研究15…
  8. 最新 創薬化学 ~探索研究から開発まで~

注目情報

ピックアップ記事

  1. 第25回グリーン・サステイナブル ケミストリー賞 候補業績 募集のご案内
  2. 「原子」が見えた! なんと一眼レフで撮影に成功
  3. クレメンゼン還元 Clemmensen Reduction
  4. スピノシン Spinosyn
  5. リチャード・ヘック Richard F. Heck
  6. 「科学者の科学離れ」ってなんだろう?
  7. 多摩霊園
  8. 麺の科学 粉が生み出す豊かな食感・香り・うまみ
  9. デヴィッド・リー David A. Leigh
  10. 化学研究ライフハック: Evernoteで論文PDFを一元管理!

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2015年4月
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
27282930  

注目情報

最新記事

欧米化学メーカーのR&D戦略について調査結果を発表

この程、TPCマーケティングリサーチ株式会社(本社=大阪市西区、代表取締役社長=松本竜馬)は、欧米化…

有馬温泉でラドン泉の放射線量を計算してみた【化学者が行く温泉巡りの旅】

有馬温泉は、日本の温泉で最も高い塩分濃度を持ち黄褐色を呈する金泉と二酸化炭素と放射性のラドンを含んだ…

アミンホウ素を「くっつける」・「つかう」 ~ポリフルオロアレーンの光触媒的C–Fホウ素化反応と鈴木・宮浦カップリングの開発~

第684回のスポットライトリサーチは、名古屋工業大学大学院工学研究科(中村研究室)安川直樹 助教と修…

第56回ケムステVシンポ「デバイスとともに進化する未来の化学」を開催します!

第56回ケムステVシンポの会告を致します。3年前(32回)・2年前(41回)・昨年(49回)…

骨粗鬆症を通じてみる薬の工夫

お久しぶりです。以前記事を挙げてから1年以上たってしまい、時間の進む速さに驚いていま…

インドの農薬市場と各社の事業戦略について調査結果を発表

この程、TPCマーケティングリサーチ株式会社(本社=大阪市西区、代表取締役社長=松本竜馬)は、インド…

【味の素ファインテクノ】新卒採用情報(2027卒)

当社は入社時研修を経て、先輩指導のもと、実践(※)の場でご活躍いただきます。…

味の素グループの化学メーカー「味の素ファインテクノ社」を紹介します

食品会社として知られる味の素社ですが、味の素ファインテクノ社はその味の素グループ…

味の素ファインテクノ社の技術と社会貢献

味の素ファインテクノ社は、電子材料の分野において独創的な製品を開発し、お客様の中にイノベーションを起…

サステナブル社会の実現に貢献する新製品開発

味の素ファインテクノ社が開発し、これから事業に発展して、社会に大きく貢献する製品…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP