[スポンサーリンク]

化学書籍レビュー

透明金属が拓く驚異の世界 不可能に挑むナノテクノロジーの錬金術

概要

タッチパネル等、身の回りに溢れている透明電極。「光(可視光)を通す」と「電気を流す」という全く異なるように聞こえる性質を同時に達成するのがなぜ難しいのか?高校化学・物理レベルから丁寧に解説。

対象

理系高校生以上

解説

著者は東京工業大学の細野秀雄教授と神谷利夫教授。細野教授は鉄ヒ素系の超電導材料やシャープの商標問題で最近話題になった透明電極”IGZO”等の研究で著名。

本書ではまず「電気が流れる」というのはどういうことかという説明から始まります。理系の方であれば電流は電子の移動に起因することは常識ですが、導体(金属)中でいったい何個の電子が移動しているかご存知でしょうか?またその数は半導体や絶縁体中で移動出来る電子の数と比べてどの程度違うのか?これら電子の数を簡単な計算で求め、電気が流れる性質を得るために最低限必要になる移動可能な電子の数を示します。

電気を流したいのだから移動できる電子があればあるほど良いように思えます。なぜこのような計算が必要なのかというと、導体や半導体における光(可視光)の吸収・反射はこの移動可能な電子の存在に大きく関係するからです。つまり透明電極材料を作るには電気が流れるのに最低限必要な数の電子を確保しつつ、電子による光の反射・吸収を抑える工夫が必要になります。

上記の説明を土台に、「IGZO」「透明アモルファス半導体」や「C12A7」について研究開発の流れに沿って解説されており、現場で研究が進んでいく時の興奮と熱気も伝わってきます。透明電極や半導体に興味がある方はもちろん、研究者になりたい高校生や学部生にもお勧めです。

 

関連書籍

 

The following two tabs change content below.

SHO

博士(工学)。無機ナノ粒子全般に関心があります。

関連記事

  1. 背信の科学者たち 論文捏造はなぜ繰り返されるのか?
  2. English for Presentations at Int…
  3. 化学オリンピック完全ガイド
  4. 生物活性分子のケミカルバイオロジー
  5. 有機分子触媒の化学 -モノづくりのパラダイムシフト
  6. 有機化学命名法
  7. トップ・ドラッグ―その合成ルートをさぐる
  8. 【書籍】化学探偵Mr.キュリー5

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. バートン・マクコンビー脱酸素化 Barton-McCombie Deoxygenation
  2. The Journal of Unpublished Chemistry
  3. オッペナウアー酸化 Oppenauer Oxidation
  4. 松村 保広 Yasuhiro Matsumura
  5. 粘土に挟まれた有機化合物は…?
  6. “click”の先に
  7. as well asの使い方
  8. 【速報】2010年ノーベル生理医学賞決定ーケンブリッジ大のエドワード氏
  9. 現代の錬金術?―ウンコからグラフェンをつくった話―
  10. マニュエル・アルカラゾ Manuel Alcarazo

関連商品

注目情報

注目情報

最新記事

ルミノール誘導体を用いるチロシン選択的タンパク質修飾法

2015年、東京工業大学・中村浩之らは、ルミノール誘導体と鉄-ポルフィリン複合体(ヘミン)を用い、チ…

酵素触媒によるアルケンのアンチマルコフニコフ酸化

酵素は、基質と複数点で相互作用することにより、化学反応を厳密にコントロールしています。通常のフラ…

イオンの出入りを制御するキャップ付き分子容器の開発

第124回のスポットライトリサーチは、金沢大学 理工研究域物質化学系錯体化学研究分野(錯体化学・超分…

リチウムイオン電池の課題のはなし-1

Tshozoです。以前リチウムイオン電池に関するトピックを2つほど紹介した(記事:リチウムイ…

アルコールをアルキル化剤に!ヘテロ芳香環のC-Hアルキル化

2015年、プリンストン大学・D. W. C. MacMillanらは、水素移動触媒(HAT)および…

三種類の分子が自発的に整列した構造をもつ超分子共重合ポリマーの開発

第123回のスポットライトリサーチは、テキサス大学オースティン校博士研究員(Jonathan L. …

Chem-Station Twitter

PAGE TOP