[スポンサーリンク]

化学書籍レビュー

顕微鏡の使い方ノート―はじめての観察からイメージングの応用まで (無敵のバイオテクニカルシリーズ)

[スポンサーリンク]

概要

定番の入門書が大改訂!多光子励起顕微鏡などの最新技術も追加され,より充実した1冊に!メーカーの技術者が伝授するコツが満載で,初めて顕微鏡を扱う方にも安心です.動画の視聴サービス付き! (羊土社ホームページより)

対象者

顕微鏡を実際に用いる研究者

目次

第1章 顕微鏡の歴史

第2章 各種の顕微鏡でできること

第3章 光学顕微鏡

第4章 蛍光顕微鏡

第5章 CCDカメラを利用した画像処理法

第6章 共焦点レーザースキャン顕微鏡

第7章 技術革新の著しい顕微鏡

内容と感想

本記事著者(Maitotoxin)は、細胞染色用蛍光色素開発を専門としており、研究の都合上、光学顕微鏡や蛍光顕微鏡を使用する機会は多いです。実際、蛍光顕微鏡、二光子励起顕微鏡、CLSM、STED、SIM、PALMなど様々な装置をいじってきました。その都度、それぞれの装置の基礎原理を調べてはいるのですが、顕微鏡の使い方は一子相伝なところ、人それぞれなところも多く、果たして自分のとっている写真がベストなのか? 扱いきれていないパラメーターはないのか?逆に触ってはいけないパラメーターをいじってしまっていないのか(例えばCLSMでピンホールを広げるのはセーフ?アウト?)常々、不安がつきまとっています。

もう少し、自分のイメージング技術に自信を持ちたい。その気持ちで、新しい書籍ではないですが顕微鏡の基礎原理から実際の測定手順について詳しく書いてありそうなこの教科書を手に取りました。

良かった所は、オールカラーかつ顕微鏡の写真がしっかり載っていることで、飽きずに読み進めることができます。また、文字だけの教科書に比べて、実際装置のどの部分を確認したらいいのかがはっきりとしておりわかりやすいです。

全体を通して、実際に測定をする際の一通りの手順がしっかりと書かれており、実際に顕微鏡を触ったことのある人ならば、なるほどこういうところに気をつければいいのだと色々な気づきがあります。ただ同時に、いくらカラー図説でわかりやすく書かれていても、使ったことのない顕微鏡については、あまりピンときません。顕微鏡を使う予定のある方が、取扱説明書的に見るのが、効率の良い読み方なのかと思いました。

少しだけ、残念だった点は、基礎があまりしっかりと説明されていないかなと感じました。第1章 顕微鏡の歴史・第2章 各種の顕微鏡でできること、はそこそこ丁寧なのですが、顕微鏡それぞれの項目については、何ができて何ができないのか。基礎原理、などは教科書として最低限で抑えられている印象です。加えてイメージング技術に関しても、色々説明してくださってはいますが、結局「やって慣れるしかない」という印象です。

Amazonのレビューに大変共感しました。顕微鏡を扱うものならば、読んで損はない。ただ、基礎からの学問としての学習用には向かない。そのような一冊です。

 

Avatar photo

Maitotoxin

投稿者の記事一覧

学生。高分子合成専門。低分子・高分子を問わず、分子レベルでの創作が好きです。構造が格好よければ全て良し。生物学的・材料学的応用に繋がれば尚良し。Maitotoxinの全合成を待ち望んでいます。

関連記事

  1. 【書籍】『これから論文を書く若者のために』
  2. 物質科学を学ぶ人の空間群練習帳
  3. Molecules That Changed the World…
  4. What’s Cooking in Chemistr…
  5. 改正 研究開発力強化法
  6. 【書籍】文系でも3時間でわかる 超有機化学入門: 研究者120年…
  7. 大学院講義 有機化学
  8. 創薬化学―有機合成からのアプローチ

注目情報

ピックアップ記事

  1. 天然の日焼け止め?
  2. ブンテ塩~無臭の含硫黄ビルディングブロック~
  3. フランスの著名ブロガー、クリーム泡立器の事故で死亡
  4. ニコラス-ターナー Nicholas Turner
  5. ポリ乳酸 Polylactic Acid
  6. ファラデーのつくった世界!:−ロウソクの科学が歴史を変えた
  7. 【書評】元素楽章ー擬人化でわかる元素の世界
  8. 空気と光からアンモニアを合成
  9. アフマトヴィッチ反応 Achmatowicz Reaction
  10. 有機合成化学協会誌2022年11月号:英文特別号

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2022年12月
 1234
567891011
12131415161718
19202122232425
262728293031  

注目情報

最新記事

アクリルアミド類のanti-Michael型付加反応の開発ーPd触媒による反応中間体の安定性が鍵―

第622回のスポットライトリサーチは、東京理科大学大学院理学研究科(松田研究室)修士2年の茂呂 諒太…

エントロピーを表す記号はなぜSなのか

Tshozoです。エントロピーの後日談が8年経っても一向に進んでないのは私が熱力学に向いてないことの…

AI解析プラットフォーム Multi-Sigmaとは?

Multi-Sigmaは少ないデータからAIによる予測、要因分析、最適化まで解析可能なプラットフォー…

【11/20~22】第41回メディシナルケミストリーシンポジウム@京都

概要メディシナルケミストリーシンポジウムは、日本の創薬力の向上或いは関連研究分野…

有機電解合成のはなし ~アンモニア常温常圧合成のキー技術~

(出典:燃料アンモニアサプライチェーンの構築 | NEDO グリーンイノベーション基金)Ts…

光触媒でエステルを多電子還元する

第621回のスポットライトリサーチは、分子科学研究所 生命・錯体分子科学研究領域(魚住グループ)にて…

ケムステSlackが開設5周年を迎えました!

日本初の化学専用オープンコミュニティとして発足した「ケムステSlack」が、めで…

人事・DX推進のご担当者の方へ〜研究開発でDXを進めるには

開催日:2024/07/24 申込みはこちら■開催概要新たな技術が生まれ続けるVUCAな…

酵素を照らす新たな光!アミノ酸の酸化的クロスカップリング

酵素と可視光レドックス触媒を協働させる、アミノ酸の酸化的クロスカップリング反応が開発された。多様な非…

二元貴金属酸化物触媒によるC–H活性化: 分子状酸素を酸化剤とするアレーンとカルボン酸の酸化的カップリング

第620回のスポットライトリサーチは、横浜国立大学大学院工学研究院(本倉研究室)の長谷川 慎吾 助教…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP