[スポンサーリンク]

化学者のつぶやき

テストには書けない? カルボキシル化反応の話

[スポンサーリンク]

少し前ですが、スペインICIQのRuben Martinグループから面白い反応が報告されていました。論文はこちら

分子変換自体はある意味なんということのない、CO2を使った臭化アルキルのカルボキシル化反応です。

以下のようにテストに出たら貴方はどうしますか?

 

alkylBr_1.png

Grignard試薬にすればえーやん、て感じでしょうか。

 

でも彼らの回答は、ニッケル触媒だったんです。

しかも、アルデヒドより先にCO2と反応したり、β水素脱離が遅かったり、ちょっと常識破りなんです。

ja-2014-064586_0010.gif

Martinらの回答。(論文より引用)

 

おっとβ水素があるよ。テストならこの時点でバツなのでは。

遷移金属触媒を使っている人なら、アルキルパラジウムとかニッケルとかはすぐβ水素脱離するイメージがあるんじゃないでしょうか。

 

alkylBr_3.png

 

最近はNi触媒を使ったアルキル‐アルキルカップリングもよく見るので、まぁスピード勝負なのかなと思わないこともないですが、
それでも私にはなかなか高い壁のように感じます。 

 

しかしMartinらは、おそらく経由するだろうアルキルニッケル種からのβ水素脱離を、かなり抑えることに成功しています。詳しくは論文を見ていただきたいのですが、配位子の効果が劇的。

  

ほうほう、じゃあアルキルニッケルが超反応性高くてβ水素脱離の前にすぐCO2と反応するんかいな、と思いきや、基質のテーブルにはエステルがずらり。

ケトン、果てはアルデヒド部分があっても耐えてる。

……いやいやちょっと待って。なんでそんな化学選択性がでるんすか。

alkylBr_6.pngCO2は不活性分子として載ってるくらいなのに。。。
少なくともアルデヒドよりは反応性低いと信じてたんですが。。。

触媒系は最近はやりの一電子還元(Niの一価を経由するタイプ)を基に設計されていて、その辺りにタネがあるのかもしれません。
実はNiの一価からβ水素脱離する系って見たことないし。

あるいはCO2とNiは酸化的付加することが知られているので、それが絡んでいて、そもそも私が想像しているような求核反応じゃないのかも。

いや、単純に配位子のチカラ?

alkylBr_7.png

すーぱーはいいし、ネオクプロイン属?

うーん。

CO2って実際のところ、どのくらいの反応性なんでしょうね。
熱力学的には安定なんですが、立体障害が少ないことを考えると、意外と速度論的には……?

そんな風にも思えてしまいます。そもそも有機溶媒中のCO2濃度っていかほどなのかしら。

昔かさ高いケトンを優先的に還元する銅触媒(というか配位子;こちら)がちょっと話題になりましたが、あんな風に、反応性の順序をひっくり返す仕掛けというのはいつも非常に興味がそそられます。 

大きなことを言えば、こうやって反応機構とか、電子の動きに想いを馳せるのが有機化学者的ロマン……だったりするんですかね。

ロマンといえば余談ですが、ペルセウス座流星群は好天にめぐまれず私のところからはあんまりでした。
皆さんは見えましたか?

 

関連書籍

arrow

投稿者の記事一覧

大学で有機金属触媒について研究している学生→発光材料や分子性電子素子を研究している大学教員になりました。 好きなものはバスケとお酒、よくしゃべりよく聞きよく笑うこと。 日々の研究生活で見、聞き、感じ、考えたことを発信していきます。

関連記事

  1. 有機合成化学協会誌2020年1月号:ドルテグラビルナトリウム・次…
  2. 鉄錯体による触媒的窒素固定のおはなし-2
  3. アルメニア初の化学系国際学会に行ってきた!③
  4. ケムステイブニングミキサー2015を終えて
  5. #環境 #SDGs マイクロ波によるサステナブルなものづくり (…
  6. 「幻のイオン」、テトラフェニルアンモニウムの合成を達成!
  7. アルデヒドからアルキンをつくる新手法
  8. 誰でも使えるイオンクロマトグラフ 「Eco IC」新発売:メトロ…

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. ケイ素 Silicon 電子機器発達の立役者。半導体や光ファイバーに利用
  2. 波動-粒子二重性 Wave-Particle Duality: で、粒子性とか波動性ってなに?
  3. アミン存在下にエステル交換を進行させる触媒
  4. ニューマン・クワート転位 Newman-Kwart Rearrangement
  5. 住友化・大日本住友薬、ファイザーと高血圧症薬で和解
  6. 音声入力でケムステ記事を書いてみた
  7. 2017年(第33回)日本国際賞受賞者 講演会
  8. 【8/25 20:00- 開催!】オンラインイベント「研究者と描くAI社会の未来設計」
  9. アメリカ大学院留学:研究者キャリアとライフイベント
  10. 今こそ天然物化学☆ 天然物化学談話会2021オンライン特別企画

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2014年8月
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031

注目情報

最新記事

一致団結ケトンでアレン合成!1,3-エンインのヒドロアルキル化

ケトンと1,3-エンインのヒドロアルキル化反応が開発された。独自の配位子とパラジウム/ホウ素/アミン…

ベテラン研究者 vs マテリアルズ・インフォマティクス!?~ 研究者としてMIとの正しい向き合い方

開催日 2024/04/24 : 申込みはこちら■開催概要近年、少子高齢化、働き手の不足…

第11回 慶應有機化学若手シンポジウム

シンポジウム概要主催:慶應有機化学若手シンポジウム実行委員会共催:慶應義塾大…

薬学部ってどんなところ?

自己紹介Chemstationの新入りスタッフのねこたまと申します。現在は学部の4年生(薬学部)…

光と水で還元的環化反応をリノベーション

第609回のスポットライトリサーチは、北海道大学 大学院薬学研究院(精密合成化学研究室)の中村顕斗 …

ブーゲ-ランベルト-ベールの法則(Bouguer-Lambert-Beer’s law)

概要分子が溶けた溶液に光を通したとき,そこから出てくる光の強さは,入る前の強さと比べて小さくなる…

活性酸素種はどれでしょう? 〜三重項酸素と一重項酸素、そのほか〜

第109回薬剤師国家試験 (2024年実施) にて、以下のような問題が出題されま…

産総研がすごい!〜修士卒研究職の新育成制度を開始〜

2023年より全研究領域で修士卒研究職の採用を開始した産業技術総合研究所(以下 産総研)ですが、20…

有機合成化学協会誌2024年4月号:ミロガバリン・クロロププケアナニン・メロテルペノイド・サリチル酸誘導体・光励起ホウ素アート錯体

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2024年4月号がオンライン公開されています。…

日本薬学会第144年会 (横浜) に参加してきました

3月28日から31日にかけて開催された,日本薬学会第144年会 (横浜) に参加してきました.筆者自…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP