[スポンサーリンク]

一般的な話題

2017年の注目分子はどれ?

[スポンサーリンク]

今年も残りあとわずかとなり、毎年おなじみのアメリカ化学会(ACS)によるMolecules of the yearが開催されました。今年もユニークな分子が選出されています。どの分子がMolecules of the year の称号を得るのでしょうか。

Molecules of the year

ACSのエディターStephen K. Ritterが選出した7つの分子の中から投票で”今年の分子”を決定します。

ACSの論文だけでなく、他のジャーナルの分子も選ばれています。どの分子もユニークな構造や物性があり、選ぶのが難しいですね…

A NEW ‘SULFLOWER’ BLOOMED

J. Am. Chem. Soc. 2017, DOI: 10.1021/jacs.6b12630.

sulflowerはC6S6から徐々に世代を重ねていき、今年は過硫酸化コロネンまで世代を伸ばしました!

イオウに富んでおりリチウム – 硫黄電池の有望なカソード材料と成り得るようです。

A NEW MOLECULAR STAR WAS BORN

Chem. Eur. J. 2017, DOI: 10.1002/chem.201702264

molecular starは折れ曲がった配位子と直線の配位子、Pdイオンの自己集合によって構築されています。

複雑な星型の分子を自己集合で簡単に作れるのはすごいですね。

CHEMISTS BUILT ON NORBORNANE’S STRUCTURAL COMPLEXITY

Angew. Chem. Int. Ed. 2017, DOI: 10.1002/anie.201709279

Chem. Commun. 2017, DOI: 10.1039/c7cc06273g

BRAIDING A MOLECULAR KNOT

Science 2017, DOI: 10.1126/science.aal1619

鉄イオンを巧みに利用した分子ノットの合成です。8つの交差点を持つ分子ノットの合成まで達成されましたね。ノットの合成は考え方も面白いですし一度見てみることをお勧めします。

CHEMISTS CONSTRUCTED A HETEROCYCLE MISSING LINK

Nat. Chem. 2017, DOI: 10.1038/nchem.2708

6員環の複素環の中でも研究されてこなかった環状B3NO2の合成に成功しています。またアミド化の触媒としても作用します。構造を生かした反応にも期待が膨らみます。

THE LARGEST, MOST COMPLEX POLYSACCHARIDE

Nat. Commun. 2017, DOI: 10.1038/ncomms14851

92個の単糖を持つ最大の多糖の全合成を報告しています。これだけの大きな多糖も合成できるのですね。

TRINITROGEN COMPOUNDS DISPLAY UNIQUE ELECTRONIC STRUCTURES

J. Am. Chem. Soc. 2017, DOI: 10.1021/jacs.6b12360

J. Am. Chem. Soc. 2017, DOI: 10.1021/jacs.7b08753

3つの窒素が結合すると、窒素がルイス酸として働くようです。また、NHCカルベンの安定化も可能となっています。

 

どの分子が選ばれるのか乞うご期待です。

参考文献

  1. J. Am. Chem. Soc. 2017, DOI: 10.1021/jacs.6b12630
  2. Chem.–Eur. J. 2017, DOI: 10.1002/chem.201702264
  3. Angew. Chem. Int. Ed. 2017, DOI: 10.1002/anie.201709279
  4. Chem. Commun. 2017, DOI: 10.1039/c7cc06273g
  5. Science 2017, DOI: 10.1126/science.aal1619
  6. Nat. Chem. 2017, DOI: 10.1038/nchem.2708
  7. Nat. Commun. 2017, DOI: 10.1038/ncomms14851
  8. J. Am. Chem. Soc. 2017, DOI: 10.1021/jacs.6b12360
  9. J. Am. Chem. Soc. 2017, DOI: 10.1021/jacs.7b08753

Kyoten

投稿者の記事一覧

高専卒業後、修士課程へ。高分子化学、超分子化学、有機光化学などの記事を書きます。やるときはやるし、やらないときはやらない。分かりやすく化学を伝えていきたいと思っています。

関連記事

  1. 2010年ノーベル化学賞予想ーケムステ版
  2. セミナー「マイクロ波化学プロセスでイノベーションを起こす」
  3. 空気と光からアンモニアを合成
  4. 第29回光学活性化合物シンポジウム
  5. 文献検索サイトをもっと便利に:X-MOLをレビュー
  6. とある化学者の海外研究生活:スイス留学編
  7. 定型抗精神病薬 「ピモジド」の化学修飾により新規難治性疼痛治療薬…
  8. 「リジェネロン国際学生科学技術フェア(ISEF)」をご存じですか…

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. 芳香族フッ素化合物の新規汎用合成法
  2. 直径100万分の5ミリ極小カプセル 東大教授ら開発
  3. 投票!2015年ノーベル化学賞は誰の手に??
  4. マンニッヒ反応 Mannich Reaction
  5. 一重項分裂 singlet fission
  6. 酵素触媒反応の生成速度を考えるー阻害剤入りー
  7. 構造化学の研究を先導する100万件のビッグデータ
  8. モーテン・メルダル Morten P. Meldal
  9. 製薬特許売買市場、ネットに創設へ…大商とUFJ信託
  10. 同位体効果の解釈にはご注意を!

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2017年12月
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031

注目情報

最新記事

プロトン共役電子移動を用いた半導体キャリア密度の精密制御

第582回のスポットライトリサーチは、物質・材料研究機構(NIMS) ナノアーキテクトニクス材料研究…

有機合成化学協会誌2023年11月号:英文特別号

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2023年11月号がオンライン公開されています。…

高懸濁試料のろ過に最適なGFXシリンジフィルターを試してみた

久々の、試してみたシリーズ。今回試したのはアドビオン・インターチム・サイエンティフィ…

細胞内で酵素のようにヒストンを修飾する化学触媒の開発

第581回のスポットライトリサーチは、東京大学大学院 薬学系研究科 有機合成化学教室(金井研究室)の…

カルロス・シャーガスのはなし ーシャーガス病の発見者ー

Tshozoです。今回の記事は8年前に書こうと思って知識も資料も足りずほったらかしておいたのです…

巨大な垂直磁気異方性を示すペロブスカイト酸水素化物の発見 ―水素層と酸素層の協奏効果―

第580回のスポットライトリサーチは京都大学大学院工学研究科物質エネルギー化学専攻 陰山研究室の難波…

2023年度第1回日本化学連合シンポジウム「ヒューメインな化学 ~感覚の世界に化学はどう挑むか~」

人間の幸福感は、五感に依るところが大きい。化学は文明的で健康的な社会を支える物質を継続的に産み出して…

超難溶性ポリマーを水溶化するナノカプセル

第579回のスポットライトリサーチは東京工業大学 化学生命科学研究所 吉沢・澤田研究室の青山 慎治(…

目指せ抗がん剤!光と転位でインドールの(逆)プレニル化

可視光レドックス触媒を用いた、インドール誘導体のジアステレオ選択的な脱芳香族的C3位プレニル化および…

マテリアルズ・インフォマティクスに欠かせないデータ整理の進め方とは?

開催日:2023/11/29 申し込みはこちら■開催概要近年、少子高齢化、働き手の不足の…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP