[スポンサーリンク]

海外化学者インタビュー

第76回―「化学を広める雑誌編集者として」Neil Withers博士

[スポンサーリンク]

第76回の海外化学者インタビューは、ニール・ウィザース博士です。Nature Chemistry誌のAssociate Editor(訳注:現在はChemistry World誌に参画)として務めています。それではインタビューをどうぞ。

Q. あなたが化学者になった理由は?

生まれつきの好奇心、科学者である両親(果てしない質問に答えるに十分な忍耐力がありました)、学生時代を通しての良い恩師、そして最後にダラム大学化学科でのアドミッション・チューターという形での幸運が組み合わされてのことです。自分が申し込んでいた自然科学コースは定員オーバーで、Mike Cramptonは化学に申請を変更したいかを尋ねる手紙を書いてきました。そして12年後、私はNature Chemistryに所属しているわけです。

Q. もし化学者でなかったら、何になりたいですか?またその理由は?

Heston Blumenthalの 「分子ガストロノミー」 のために働けれるなら素晴らしいでしょう。テレビで見ると、確かにとても楽しそうです。しかし、実際には化学なのです!

Q. 概して化学者はどのように世界に貢献する事ができますか?

化学に取り組むことによってです。化学は世の中を驚くほど良くしましたが、人々はそれに気づいてないようです。ですから、もし一般の方々が、化学が何をしたかを理解できれば、取り組みにより化学が引き起こしたとされる問題のいくつかを取り除くことができるでしょう。例えば、損害可能性をもっと理解すれば、人々は汚染について熱心に耳を傾けるようになるかもしれません。

Q.あなたがもし歴史上の人物と夕食を共にすることができたら誰と?またその理由は?

ベーダライナス・ポーリングです。

化学とは何かを定義するのはいつも難しいのですが、私にとっては化学結合に行き着きます。ポーリングは今日の化学結合の見方を発明しました。化学部門でノーベル賞を受賞したほか、戦争と核兵器に反対するキャンペーンで平和賞も受賞しており、2つのノーベル賞を受賞した唯一の人物です。

ベーダは紀元7世紀(彼が実際に発明した時間法)におけるノーサンブリア王国の僧です。今日では「英国史の父」 として知られている人物ですが、知識と影響力はそれよりはるかに大きなものです。現代に生きる人間からすると、文明から遠く離れた場所にて彼が「自らの時代のあらゆる知識を自在に操っていた」 ということは、信じられないことです。

Q. あなたが最後に研究室で実験を行ったのはいつですか?また、その内容は?

そうですね、Nature Chemistryの仕事を始める前、研究室の外でチェルシーバンズを作ったことでしょうか。 「実験プロトコル」 に注意深く従い、 「試薬」 をできるだけ正確に量った結果、学部生の時に作ったものよりも見栄えが良い 「生成物」 を入手できました。写真はフェイスブックにありますので、見たい人はどうぞ。

まじめな話、博士課程で行った最後の実験は導電率の測定でした。貴重なサンプル(金属酸化物カルコゲナイドのペレット)にとても丁寧に銅線を半田付けしない限り、オーミック接触を望めるようなものではありませんでしたが。

Q.もしあなたが砂漠の島に取り残されたら、どんな本や音楽が必要ですか?1つだけ答えてください。

他の人がたいていズルしているように、私もそうしましょう!Patrick O’BrianのAubrey-Maturinシリーズ20冊か、P. G. WodehouseのJeevesとBlandingsのシリーズ全冊が欲しいです。厳しいようなら、Ray Mearsのサバイバルガイドをもっていきます!いずれにせよ、この男はレジェンドです…

CDについては、Johnny Cashの「At San Quentin」と、Stone Rosesの同名デビューアルバムのどちらかになるでしょうか。Stone Rosesが僅差で勝つと思います!

原文:Reactions – Neil Withers

※このインタビューは2008年8月8日に公開されました。

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. 第137回―「リンや硫黄を含む化合物の不斉合成法を開発する」St…
  2. 第163回―「微小液滴の化学から細胞系の仕組みを理解する」Wil…
  3. 第13回 次世代につながる新たな「知」を創造するー相田卓三教授
  4. 第35回 生物への応用を志向した新しいナノマテリアル合成― Ma…
  5. 第63回―「生物のコミュニケーションを司る天然物化学」矢島 新 …
  6. 第24回「アルキル-πエンジニアリングによる分子材料創成」中西尚…
  7. 第29回「安全・簡便・短工程を実現する」眞鍋敬教授
  8. 第45回―「ナノ材料の設計と合成、デバイスの医療応用」Youna…

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. 冬虫夏草由来の画期的新薬がこん平さんを救う?ーFTY720
  2. 高知大が新エコ材料開発へ 産官共同プロジェクト
  3. CO酸化触媒として機能する、“無保護”合金型ナノ粒子を担持した基板を、ワンプロセスで調製する手法を開発
  4. ヒューマンエラーを防ぐ知恵 増補版: ミスはなくなるか
  5. 結晶世界のウェイトリフティング
  6. 山口マクロラクトン化 Yamaguchi Macrolactonizaion
  7. 第160回―「触媒的ウィッティヒ反応の開発」Christopher O’Brien博士
  8. ついったー化学部
  9. 典型元素触媒による水素を還元剤とする第一級アミンの還元的アルキル化
  10. 第93回日本化学会付設展示会ケムステキャンペーン!Part II

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2020年3月
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
3031  

注目情報

最新記事

中国へ行ってきました 西安・上海・北京編①

2015年(もう8年前ですね)、中国に講演旅行に行った際に記事を書きました(実は途中で断念し最後まで…

アゾ重合開始剤の特徴と選び方

ラジカル重合はビニルモノマーなどの重合に用いられる方法で、開始反応、成長反応、停止反応を素反応とする…

先端事例から深掘りする、マテリアルズ・インフォマティクスと計算科学の融合

開催日:2023/12/20 申込みはこちら■開催概要近年、少子高齢化、働き手の不足の影…

最新の電子顕微鏡法によりポリエチレン分子鎖の向きを可視化することに成功

第583回のスポットライトリサーチは、東北大学大学院 工学研究科 応用化学専攻 陣内研究室の狩野見 …

\脱炭素・サーキュラーエコノミーの実現/  マイクロ波を用いたケミカルリサイクル・金属製錬プロセスのご紹介

※本セミナーは、技術者および事業担当者向けです。脱炭素化と省エネに貢献するモノづくり技術の一つと…

【書籍】女性が科学の扉を開くとき:偏見と差別に対峙した六〇年 NSF(米国国立科学財団)長官を務めた科学者が語る

概要米国の女性科学者たちは科学界のジェンダーギャップにどのように向き合い,変えてきたのか ……

【太陽ホールディングス】新卒採用情報(2025卒)

■■求める人物像■■「大きな志と好奇心を持ちまだ見ぬ価値造像のために前進できる人…

細胞代謝学術セミナー全3回 主催:同仁化学研究所

細胞代謝研究をテーマに第一線でご活躍されている先生方をお招きし、同仁化学研究所主催の学術セミナーを全…

マテリアルズ・インフォマティクスにおける回帰手法の基礎

開催日:2023/12/06 申込みはこちら■開催概要マテリアルズ・インフォマティクスを…

プロトン共役電子移動を用いた半導体キャリア密度の精密制御

第582回のスポットライトリサーチは、物質・材料研究機構(NIMS) ナノアーキテクトニクス材料研究…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP