[スポンサーリンク]

海外化学者インタビュー

第175回―「酸素を活用できる新規酸化触媒系の開発」Mark Muldoon准教授

[スポンサーリンク]

第175回の海外化学者インタビューは、マーク・マルドーン准教授です。北アイルランド・クイーンズ大学ベルファスト校 化学・化学工学科に所属し、遷移金属触媒と持続可能な触媒プロセスの開発を中心に研究しています。それではインタビューをどうぞ。

Q. あなたが化学者になった理由は?

両親の話によると、私は幼い頃から、物がどのように動くのか、なぜある色をしているのかなど、いつもしつこく質問していたそうです。ですから、当然といえば当然なのですが、学校では理系科目を最も面白く感じていました。どの科目も好きでしたが、分子レベルで物事を理解しようとする化学が一番好きでした。また、化学は実世界に応用できる実用的な科目であり、私たちが先進国で頼りにしているほとんどすべてのものの中心的存在である点も気に入っています。

Q. もし化学者でなかったら、何になりたいですか?またその理由は?

理系科目以外では美術も好きだったので、建築家や芸術家を目指していたかもしれません(才能がないので間違いなく苦労するでしょうが)。クリエイティブなことに挑戦するのは楽しいですし、その点ではアートと化学は似ていると思えます。あるいは夢の世界なら、NBAでバスケットボールをするか、スコットランドの国際的サッカー選手になってみたいですね(後者はおそらく、大きな失望を味わう人生になるでしょうが!)。

Q. 現在取り組んでいることは何ですか?そしてそれをどう展開させたいですか?

私たちはいくつかの異なるプロジェクトに取り組んでいますが、グループ内の主要テーマは選択的酸化触媒です。酸化反応は、化学のさまざまな分野における重要な課題とされています。たとえば、アルコールの酸化のような単純な変換でさえ、製薬業界ではスケールアップを実施することが疎まれます。これは、小規模な実験室スケールで一般的に使用されている方法が、スケールアップしたときには受け入れられず、毒性のある試薬や副生成物を生じることが多いためです。現在、私たちはさまざまな酸化反応のための触媒を開発しようとしています。酸素を最終酸化剤とする触媒で、工業的に必要な品質(例えば、回転数が高く、生成物との分離が容易な触媒)を持つ触媒の開発を目指しています。このような触媒が、より大きなスケールで採用されることを期待しています(これは並大抵のことではないでしょう)。さらに長期的には、C-H結合の選択的な活性化やエネルギーに関する課題など、より困難な問題に取り組むことを目標としています。

Q.あなたがもし、歴史上の人物と夕食を共にすることができたら誰と?またその理由は?

リチャード・ファインマンは素晴らしいチョイスだと思います。素晴らしい会話と夜が、どのようにどこで終わるのかは、誰にもわかりません!

Q. あなたが最後に研究室で実験を行ったのはいつですか?また、その内容は?

先週です。実際にいくつかの実験を行いました。学期中はなかなか実験をする時間がとれませんが、夏場は大抵の場合、変則的な実験ができます。最近は、新しい銅触媒を用いた脱水素反応の予備実験を行っています。

Q.もしあなたが砂漠の島に取り残されたら、どんな本や音楽が必要ですか?1つだけ答えてください。

これは厄介な質問ですね。本については、カントの『純粋理性批判』のように、何年も読み続けられるような難しい本がいいかもしれませんね。一方、『おいしいココナッツレシピ100』なんかもいいかもしれません。音楽もまた1枚だけ選ぶのは難しいですが、『Echoes – The Best of Pink Floyd』を選ぶと、この島では完全に冷静になれると思います。

純粋理性批判

純粋理性批判

イマヌエル・カント
Amazon product information

Q.「Reactions」でインタビューしてほしい化学者と、その理由を教えてください。

MITのDaniel Nocera氏にします。疑いなく最重要分野のひとつ(水の太陽光分解)に取り組んでいます。持続可能なエネルギーに関する彼の研究および私たちが直面している課題について、示唆に富む話をしてくれるでしょう。

 

原文:Reactions – Mark Muldoon

※このインタビューは2011年9月30日に公開されました。

Avatar photo

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. 第108回―「Nature Chemistryの編集長として」S…
  2. 第63回―「生物のコミュニケーションを司る天然物化学」矢島 新 …
  3. 第七回 巧みに非共有結合相互作用をつかうー Vince Rote…
  4. 第174回―「特殊な性質を持つフルオロカーボンの化学」David…
  5. 第87回―「NMRで有機化合物の振る舞いを研究する」Daniel…
  6. 第126回―「分子アセンブリによって複雑化合物へとアプローチする…
  7. 第107回―「ソフトマター表面の物理化学」Jacob Klein…
  8. 第52回―「多孔性液体と固体の化学」Stuart James教授…

注目情報

ピックアップ記事

  1. 定型抗精神病薬 「ピモジド」の化学修飾により新規難治性疼痛治療薬として極めて有望な化合物の創製に成功
  2. 【6月開催】第九回 マツモトファインケミカル技術セミナー 有機金属化合物「オルガチックス」の密着性向上剤としての利用 -添加剤としての利用-
  3. エレクトロクロミズム Electrochromism
  4. ハロルド・クロトー Harold Walter Kroto
  5. C&EN コラム記事 ~Bench & Cubicle~
  6. トイレから学ぶ超撥水と超親水
  7. 還元的アルドール反応 Reductive Aldol Reaction
  8. クロロ(1,5-シクロオクタジエン)イリジウム(I) (ダイマー):Chloro(1,5-cyclooctadiene)iridium(I) Dimer
  9. 化学コミュニケーション賞2024、候補者募集中!
  10. 温和な室温条件で高反応性活性種・オルトキノジメタンを生成

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2022年10月
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31  

注目情報

最新記事

光でゆがむ分子 ― アルミニウム錯体の対称性の破れをコヒーレント振動分光で観測

第711回のスポットライトリサーチは、九州大学大学院理学研究院 化学部門(分光分析化学研究室)・江原…

有機合成のカラム精製に革新を 〜モノリスカラムで変わる「研究のスピード」〜

筆者の研究室では有機合成を行っています。合成も大変ですが、何より大変なのが精製操作。最近、とある…

酸素は系内に入り込み続ける【プロセス化学者のつぶやき】

前回まで1. 設定温度と系内の実温度のお話2. 温度値をどう判断するか3. 反応操作をし…

アンモニウム構造によりラジカル種の発生位置を完全に制御!

第710回のスポットライトリサーチは、関西学院大学理工学研究科 村上研究室の榊原 陽太(さかきばら …

化学つれづれ草【ある研究者の回想】

概要物理化学者で量子機能材料を専門とする著者によるエッセイ集.化学者としての研究,教育,人生…

第60回有機反応若手の会

開催概要有機反応若手の会は、有機化学分野で研究を行う全国の大学院生を中心とした若手研究者が集い、…

ノーベル賞受賞者と語り合う5日間!「第18回HOPEミーティング」参加者募集!

申し込みはこちら概要主催:独立行政法人 日本学術振興会(JSPS)開催地:神奈川…

光触媒による高効率なCO2還元の実現―まさかの光を弱く当てることが重要だった―

第709回のスポットライトリサーチは、東京科学大学 理学院(前田研究室)博士後期課程2年の仲田竜一 …

「π-πスタッキング」という言葉が生む誤解【芳香環の相互作用を見直す: 前編】

芳香環が平行に並んで近接しているとき、その構造を「π–π スタッキング」と表されることがよくあります…

一重項酸素によるC(sp2)−P結合切断を用いた長波長光によるリン化合物のアンケージング

第 708 回のスポットライトリサーチは、同志社女子大学 薬学部 医療薬学科 5…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP